しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ゲド戦記 最後の書 帰還」 アーシュラ・K・ル=グウィン  

2006年04月13日 | 読書
テナーがアチュアンからゲドと共に脱出して25年。テナーはゴハとしてゴントで暮らしていた。
その間に結婚し息子と娘は独立したが、3年前に夫を亡くす。
ひとり「かしの木農園」で暮らしていたが、焚き火に投げ込まれ酷い火傷を負った子ども・テルーを引き取り育てる。
そのテナーに、オジオンが身体を弱らせ、呼んでいると言う伝言が届き、テルーと2人、オジオンの下に向かう。
オジオンはテナーの到着を待って息を引き取る。
そして、竜・カレシンが傷ついたゲドを乗せてやって来る。
ゲドは死者と生者とのあいた扉を塞ぐ為に力を使い果たし、魔法が使えなくなっていた。
テナーはゲドを見守るしかなかった。


これは、テナーとゲドのその後の物語。そして、テルーが新しい存在になる予感の物語。
テナーのその後は気になっていた。きっと魔法使いの道にはいったと思っていたので、普通の女としての道を選んでいたのは、驚きだった。しかし、自分では普通になったつもりでも、周りはそうは見てくれない。
ゴントでは、カルガドのテナーはよそ者で、魔法使いの知り合いは同じく、何か術を使いそうだから。
テナーの孤独は、火傷を負い、普通の子を見てもらえなくなったテルーに、自分と同じ境遇を見て居たのだろう。
そして、魔法を失ったゲドにも。
自分に正直に正しく生きようとするテナーの考えがこの物語を作っていく。
男と女、得る事と失う事。過去の生き方はいつまでも影響してしまうものなのだろうか。
生きている以上は、年を取り、ヒーローのままでは終わらない現実もある。
しかし、なにがあっても、世の中は進んでいく。そして新たな物語が生まれていく。
静かな展開の、ファンタジー色は薄い気がするが、ゲド戦記にこの「帰還」が加わり、重みが加わった気がする。
あ、竜は登場するので、そのあたりはファンタジー?
竜と人間は昔はひとつの種族だったと言う話は面白い。
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