「黒き荒野の果て」 S.A.コスビー ハーパーBOOKS
BLACKTOP WASTELAND 加賀山卓朗・訳
2012年、ヴァージニア州。
黒人のボーレガード(バグ)・モンタージュは自動車修理工場のオーナーで、いとこのケルヴィンと働いていた。
しかし、近くに大きな修理工場〈プレシジョン〉が出来て経営が苦しくなり、支払い期限が迫っているものもあった。
ボーレガードは父親譲りの走り屋で、強盗の逃走用の車を運転して稼いでいた時もあった。
今は妻キアと子どもの為堅気になっていたが、資金を得る為に、ストリート・レースに出掛ける時もあった。
ボーレガードはどんなに困っても、愛車のダスターを売る事はなかった。
それはボーレガードが10代の頃家族を置いて失踪した父親アンソニーの車で、ボーレガードはまだ父親を崇拝していた。
金策が窮地に陥った時、ロニー・セッションズが訪ねて来る。
それは昔の強盗の仲間で、ロニーの杜撰な計画のせいで危うい思いをしていた。
ロニーは宝石店強盗の話を持って来る。
1度は断ったが、背に腹は代えられずその話に乗るが、それが引金となり次々と災難が降りかかり、新たなボーレガードの戦いが始まる。
「頬に哀しみを刻め」と同じ空気感。
こちらの主人公、ボーレガードの方が、悩みは単純。
悩みは色々あるけれど、兎に角お金を稼ぐと言う事。
一つの目的に向かって突き進んで行き、そして思わぬ方向へ。
その意外さと展開の早さで、息もつかせぬ物語に。
車のアクションも盛りだくさんなので、余計そう感じられるのかも知れないが。
アクションだけでなく、頭の良いボーレガードが立てる策略も面白い。
まあ、ギャング同士をと言うのは直ぐ思い立ったが。
ボーレガードに感情移入出来たので、そのまますんなり行けば良かったのに。
最後まで祟るのはロニー。
ロニーの事をもっと早く見抜けなかったのは、失敗だった。
色々な人物が登場して、みんな生き生きと動いている。
最後の方で分かる、ボーレガードと父親アンソニーの関係。
ボーレガードが慕い崇拝しているアンソニーがなぜ失踪したのかが、分かる。
分かると、何故それほどまでにアンソニーを崇拝するのか、分からなくなる。
そして、息子のジャヴォンの取った行動で、考えが変わる。
同じ血を引く、似ている3世代の男たち。
やっと、ボーレガードは冷静にみられるようになったのか。
この先、ボーレガードは変われるのだろうか。
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