「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」 東野圭吾 光文社
短編6編。
「トラップハンド」
恵比寿にある隠れ家的なバー『トラップハンド』。
そこはマスター1人の店で、マスターはマジシャンの神尾武史。
カップルで来た女性、美菜はここでマスターに助けられる。
「リノベの女」
神尾の姪、真世は建築士で、今はリフォームを担当している。
依頼人の上松和美は自分の事を話したがらない、少し変わった人物だった。
打ち合わせに『トラップハンド』を使った時、神尾は上松の嘘を見抜く。
やがて、上村の兄が会いにやって来て、「お前は誰だ、和美ではない」と言い出す。
「マボロシの女」
柚希は付き合っていたジャズ奏者の智也を交通事故で喪う。
柚希と智也は『トラップハンド』の常連で事故を知り、病院に駆けつける時は神尾も同行する。
智也が妻帯者だったが、妻とは別居していた。
立ち直れない柚希に、友人の弥生はある計画を実行する。
「相続人を宿す女」
真世が担当していた70代夫婦のリフォームが、突然白紙に戻される。
夫婦は今まで一軒家に住んでいたが、5か月前に息子遥大を交通事故で亡くし、息子の住んでいたマンションをリフォームして住む予定だった。
しかし、8か月前に離婚した妻諸月沙智が妊娠していた事が分かり、その子の相続権を要求して来たと言う。
彼女には新しい恋人がいて、本当にその子が息子の子か、分からないと言う。
「続・リノベの女」
解決したはずの上村和美の件で新たな出来事が起こる。
その事で、神尾はマジシャンとして老人介護施設へ赴く。
「査定する女」
『トラップハンド』で神尾に助けられた美菜は、その後も出会った男性を連れて行き、神尾に査定して貰っていた。
やっと本物の男性と巡会えたと思った時、バーで事件が起きる。
「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」の続編。
ブラック・ショーマンこと神尾武史はどんな人物なのか、謎だらけだった。
事件の解決に向けては手を選ばない。
そんな人物の第2弾で期待したのだが、こんな展開になる話だとは思わなかった。
実家の秘密も何も出て来ないまま。
と言うか、短編では物足りない。ブラック・ショーマンでなくても良かったのではと思える。
物語は、それなりに面白かったけれど、あんなに人を試すような、騙すような事をするのはちょっと行き過ぎな気もする。
お芝居だらけ。
そしてそれが上手く行き過ぎ。
それで現実感が薄れ、あまり物語に入り込めなかった。
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