しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「オルファクトグラム」 井上夢人 

2007年06月21日 | 読書
Olfactogram
アマチュアバンドのギタリスト片桐稔は、姉の家で何者かに頭を殴られ意識不明となる。
1ヵ月後意識を回復した稔は、あの日姉の千佳子が連続猟奇殺人の犠牲となり殺されたことを知るが、犯人の姿は見ていなかった。
さらに殴打された後遺症なのか、周りをくらげの様なものが漂っているのが見え、そして匂いが分からないことを知る。
やがて稔は匂いを視覚で見ていることに気が付く。
その臭覚はイヌ並みのもので、姿を見る前から匂いで分かったり、微かな匂いを察知出来ることを知る。
退院して、稔はバンド仲間のミッキー(橘三喜雄)が行方不明になっていることを、ボーカルのマミ(友田雅美)とドラムのホーリュー(副島邦隆)から聞き、ミッキーのアパートを訪ねる。
そこでミッキーの匂いを感知した稔は匂いからミッキーの行方を捜せないかと考える。
また、義兄の秋元泰博を訪れ、姉を殺した犯人の匂いも見つける。



臭覚が視覚で見えるという話に友人の行方不明事件や連続殺人事件が絡んできて、とても面白いミステリーになっている。
毒々しい事件の中で、双子の兄・徹のエピソードがやわらかい優しさを与えてくれているのもいい。
まずは臭覚が視覚で見えるということをとても丁寧に詳しく書いてくれているので、読みながら想像がしやすくて楽しい。
始めにそういう状況になった時のミノルの視覚がすべて書かれているし、気が付いていくことも逐一、手に取るように丁寧に書いてくれているので、分かりやすい。
これを映像で見られたら、と思ったら何年か前にWOWOWで製作放映したそうだ。知らなかった、見たかった。
しかし、ミノルが自分の得た能力に夢中になるあまり、友人のミッキーや姉殺しの犯人捜しが二の次になっているような気もしたが、
考えると、そんなに世の中すんなりは行かないという事も納得してしまう。

人間の5感の中で、臭覚が1番研究が遅れているそうだ。
それはその感覚を伝えるのが難しいからだそうだ。
そして、臭覚は他の4感より軽く見られていると。確かにそうかも知れない、とそんなことも考えさせられた。
そして、幻覚・幻聴などがあるが幻臭というのもあるだろうか、というのが物語の中に出てくるのだが。
実は、幻臭というものを自分は経験している。まだ子どもの頃から、1~3年に1度くらい自分だけに感じる匂いがある。
始めは微かにたまにだが段々強く頻繁になる。それは3週間ほどでなくなるのだが、一番きつい時は食べてもその匂いに邪魔されて味がしない。
臭覚と味覚が繋がっていることをこの時に実感した。
そんな嫌な匂いではないのだが、常にその匂いがすると、やはり気持ちが悪くなって来る。
原因は分からないし、それで病院に行ったりはしないから、そんな例がどれほどあるのか分からない。
あまり他の人から聞いたことがないのだが、どうなのだろう。
そういえば、最近はないな。なんて書くとまた起こるかな。
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