しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「厳寒の町」 アーナルデュル・インドリダソン

2021年12月01日 | 読書
「厳寒の町」 アーナルデュル・インドリダソン  東京創元社  
  VETRARBORGIN        柳沢由実子・訳

男の子の年齢は十歳前後。
地面にうつ伏せになり、体の下の血だまりは凍りはじめていた。
アイスランド人の父とタイ人の母の間に生まれた男の子は、両親の離婚後母親と兄と一緒にレイキャヴィクのこの界隈に越してきた。
人種差別からくる殺人が疑われ、エーレンデュルら捜査陣は、男の子が住んでいたアパートや通っていた学校を中心に捜査を始める。
    <単行本カバー見返し側より>






捜査はなかなかスムーズに進まない。
殺された少年エリアスの同級生に話を聞くのも、保護者の同意が必要。
エリアスの母親がタイからの移民で、デリケートな問題がある。
事件後しばらく行方不明だった、エリアスの兄のニランからも話が聞けない。
そしてニランを母親のスニーは隠してしまう。
学校の教師の中でも、アイスランド以外の国の子どもたちをどう考えるかでそれぞれ意見がある。
事件は今までのエーレンデュルの物語の中では、割と単純だった。
事件そのものよりも、それに係る思考。
その波紋の広がりが、社会問題とも相まって色々と書かれるので、展開はゆっくりとなる。
アイスランドでも移民の問題は大きいのだ。
そして、事件の他にもエーレンデュルや、同僚のシグルデュル=オーリやエリンボルクの話題も多くなる。
エリアスが通っていた学校は、かつてシグルデュル=オーリも通ったことがあり、教師が覚えているほどの事件があったこと。
それぞれ、楽しい話ではなく、それが冬のアイスランドの気候によってより寒々しさを増す。
最後にわかる、エリアスが命を失った理由が、最も寒々しい。
しかし、それは今の社会で増えている。
なぜこんな事になっているのだろう。どうしたらいいのだろう。

アイスランドの寒さはどのくらいなのだろう。
最後に「北極の氷がそのまま風になって力を増し、北方から海に吹きつけ、雪に覆われた荒野をいっそう猛々しい姿に仕立て上げる」
「氷の風は家々の間を、人のいない街路を、凄まじい音を立てて吹き抜ける」とある。
どんなに寒いかと思って調べたら、気温的には札幌とあまり変わらないとか。
札幌は北海道では暖かい方。
しかし、アイスランドは風が強いらしい。
風は体感温度を下げるから、寒く感じるのだが。
もっともっと寒いと思って読んでいたので、イメージがちょっと変わった。
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