散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

西洋サンザシ

2006-12-26 09:55:28 | 植物、平行植物
散歩をしていたら、真っ赤な実をふんだんに垂らした西洋サンザシが美しかった。



この実は食べても大丈夫だが酸いばかりで甘みが少ない。
食べ物が不足していた時代にはこの実を乾かして粉にし、小麦の代わりにしてパンを焼き、種を集めてコーヒーの代用品に使ったという。
サンザシパンか。。。なんでも一度試してみたくなる私なので、そのうちに実を集めて見たい気持ちだけれど、パンが焼ける程の粉を作るのにどれだけの種を集めなければいけないのか?と想像したら、めげてしまった。

サンザシといえば、プルーストの”失われた時を求めて”のなかで西洋サンザシが深い意味を持って表れるのを思い出した。
気になって調べてみれば"スワン家の方へ・メゼグリーズの散歩道”の章である。
白い花の咲くサンザシの生垣のなかに薔薇色の花咲く木が一本混ざっていて、主人公はそれを一人だけ祭りの正装をした少女の様だと感心して近づいてゆくと、思いがけずその花の向こうに少女を見つける。
主人公はサンザシの花を愛しており、サンザシの向こうに見えるのは彼の初恋だ。

白いサンザシの花は地味であるが、5月ごろの庭の生垣や林の日溜まりにこんもりと泡のように咲いているのは、楚々として愛らしい。
薔薇色の花のサンザシは園芸種で八重花、色も派手になっている。

心臓疾患、血液障害に対しての働きがある。
木の幹は硬く道具の持ち手などに利用される事もある。
他の効用としては邪気払い、呪い除けというものがあるのが面白い。

5月1日に、サンザシの露で顔を洗うと美人になれるといういわれがあるそうだ。聖なる木でもあり、アイルランドではサンザシが三本以上輪になって生えている場所には妖精が集うという事になっている。

我が家のテラスにも西洋サンザシの小さな苗があって、毎年毎年、今年こそはと待ち焦がれているのにまだ一度も花をつけない。