こんなにおかしな、シャーロック・ホームズの世界 その4 実はバカミスかも編

2017年02月04日 | 
 シャーロック・ホームズの物語はである。
 
 前回(→こちら)は、オープニングで主人公がコカインでラリラリという、破天荒すぎる『四つの署名』を取り上げたが、ホームズものは彼の特異なキャラクターだけでなく、物語のほうも
 
 
 「んなアホな!」
 
 
 といいたくなるようなものが多い。
 
 以下、ホームズのみならずエドガーアランポーの『モルグ街の殺人』まで、ネタバレ御免で語っていくが、まずもっともつっこまれるのが、『まだらの紐』であろう。
 
 ホームズといえば短編に傑作が多いが、中でも名作と誉れ高いのがこの作品。
 
 ところがどっこい、これがなんともな小説なのである。
 
 黒幕であるロイロット博士が、ミルクで飼い慣らしたうえで、笛の音であやつって殺人を犯す。
 
 という、ホームズというより江戸川乱歩みたいなオチなのだが、初めて読んだ子供心にも「なんやそれ」と、つっこみそうになったものである。
 
 実行犯がかよ! 竜牙会の殺し屋にいた蛇皇院か。
 
 ミステリといえば、人の知性と知性がぶつかり合う、高度な論理遊戯の一種と認識していた私は、ここでスココーンとコケそうになったものだ。
 
 そういえば、「人類最初のミステリ」と呼ばれるポーの『モルグ街の殺人』も、おかしな話だ。
 
 アパート4階の密室で起こった猟奇殺人の犯人を追う、名探偵デュパン
 
 彼が暴いた真相というのが、
 
 
 「犯人は、オランウータンでしてん」
 
 
 これまた子供心に、心底シビれたものだ。
 
 犯人が動物! もう、カタルシスも、へったくれもない結末であった。
 
 アニマルがトリックに絡むと、どうもミステリはおかしなことになることが、多いのかもしれない。
 
 そういや、ホームズ長編の最高傑作は『バスカヴィル家の犬』だけど、これもまたな話だしなあ。
 
 略称は『バカ犬』だし……って、そう略すの小山正さんだけだってば!
 
 他にも、『唇のねじれた男』では乞食にまじって阿片を吸ってゴキゲンだし、『青い紅玉』では、
 
 
 「この人は、頭のサイズがでかいから頭がいい」
 
 
 なるファンタスティックな推理を披露するし。
 
 『恐喝王ミルヴァートン』では、ゆすりの証拠の隠し場所を聞き出すために、メイドを口説いて、その気もないのに結婚の約束までしている。
 
 いやいや、それって結婚詐欺なのでは……。
 
 しかも、犯罪の片棒をかつがそうとしているし、めっちゃタチ悪いやん。
 
 そもそも、ホームズは事件解決のためとはいえ、結構住居不法侵入してます。どっちが犯罪者だか、わかったもんではない。
 
 ホームズといえば世間的には
 
 
 「鋭利で論理的な推理機械」
 
 
 といったイメージかもしれないが、その実のところは意外と、
 
 
 「破天荒な行動力」
 
 
 が武器だったりする。ボクシングと日本の武道が得意とか、けっこう武闘派ですしね。
 
 
 (続く→こちら
 
 
 
 
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