高野秀行『放っておいても明日は来る 就職しないで生きる9つの方法』 ミャンマー空手編

2017年02月24日 | 

 高野秀行『放っておいても明日は来る 就職しないで生きる9つの方法』を読む。
 
 「辺境ライター」と称する高野秀行氏が、会社員ではない、いわゆる「自由業」、その中でもかなり一般ルートからそれたフリーダムな人々に話を聞くというもの。

 この対談相手というのが、なかなか一筋縄ではいかない人々で、



 「タイで無国籍バンドを結成」
 
 「アジア旅行中、なぜかムエタイ選手になったOL」

 「島に移住して、廃材集めて自力で家を建てる人」

 「死者上等、デンジャラス辺境ツアーのコーディネーター」



 などなど箇条書きにするだけでも、自由というか、自由すぎる人ばかり。

 わけても剛毅なのが、Kさんという人。

 Kさんは、ミャンマー旅行代理店を立ち上げたものの、事務所もなく、従業員もいないという体たらく。

 さらにはコネもないという、社長とは名ばかりの開店休業状態

 アジアの片隅で、ひねもす時を過ごすだけというのでは、ただミャンマーに沈没してるだけのボンクラバックパッカーと、ほとんど変わらない。

 そうやって仕事もなくフラフラしていたところ、たまたま見つけたのが極真会館のミャンマー支部。

 ヒマだったKさんは、なにげなく入ってみることにした。

 実はKさん、極真の使い手で、黒帯の実力者だったのである。

 ヒマつぶし以上のふくむところはなかったKさんだったが、中からなぜか、20人以上の道場生がお出迎え。

 ずいぶんと仰々しいが、彼らは真剣な顔で、



 「お前は何者だ、名を名乗れ」



 そこから、なし崩し的に「お手合わせ願おう」と、1対20数人変則デスマッチに突入することに。

 冷やかしのはずが、とんだ大バトル

 なぜそうなるのかは意味不明だが、男と男は言葉よりもで語り合うということかもしれない。

 どうも、Kさんはその圧倒的「ただ者でない感」から、道場破りかなにかと間違えられたようなのだ。

 とんでもない誤解だが、あにはからんや、なんとこの突発的激突で、Kさんは圧倒的な数的不利をものともせず、ミャンマー支部の道場生全員吹っ飛ばしてしまうのだ!

 たったひとりで、20人以上の空手使いを撃破

 すごいぞKさん、強すぎる。マス大山みたいだ。リアル空手バカ一代

 そんなと戦わせたくなるようなストロングKさんだが、なぜか次の日も道場へ。

 空手対決によりなにかが覚醒したのか、それとも単にヒマだったからかはわからないが、そこには前日ボコボコにされた道場生たちのうち、まだ動けた3人が待ちかまえていた。



 「昨日は不覚を取った、もう一度勝負だ!」



 なんだか少年マンガみたいな展開だが、Kさんはここでも焦ることもなく、



 「受けて立とう!」



 自慢の空手技を駆使して、鎧袖一触

 リベンジを誓う3人を、またたくまにノックアウトしてしまうのだった。

 強い、強すぎるぞKさん。

 そらまあ、20人がかりで勝てないのを、3人では勝負にならへんですわな。

 流れ的に、話は「Kさんすげー」という、ちょっとした武勇伝で終わるのかと思いきや、ここからがまた豪快なのが、KさんはKOされて、畳の上にうずくまる3人の男たちに、



 「昨日あれだけやられたのに、また向かってくるとは、お前たちは根性がある」



 と言い放つや、とんでもない宣言をここに行うのである。

 
 (続く→こちら



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