映画『レディ・プレイヤー1』は、アーネスト・クラインの原作『ゲームウォーズ』の方もおもしろいぞ

2018年04月18日 | オタク・サブカル
 アーネスト・クライン『ゲームウォーズ』を読む。

 数年前に本屋に並んだとき読んでたんだけど、本国アメリカでもバカ売れし、現在スピルバーグが映画化した『レディ・プレイヤー1』も話題沸騰ということで、今回再読してみたが、やはりおもしろかった。


 西暦2041年。革新的なネットワーク〈オアシス〉が張りめぐらされた世界は、深刻なエネルギー危機に陥っていた。多くの人々はそうした現実から逃避するように、〈オアシス〉と呼ばれるコンピュータの仮想世界にのめりこんでいた。

 ある日、〈オアシス〉のコンピュータ画面に、突然「ジェームズ・ハリデー死去」のニューステロップが現れた。ジェームズ・ハリデーとは、〈オアシス〉を開発し、運営する世界的億万長者。ゲーム界のカリスマ的存在だ。

 テロップに続いて、ハリデーの遺書ともいえるビデオメッセージが現れ、〈オアシス〉内に隠したイースターエッグを一番先に見つけたものに、遺産のすべてをゆずることが宣言された―――。


 
 あらすじを見ると、「お、SFじゃん」と目を細める人もいれば、「ライトノベルみたい」と興味を惹かれる人いるかもしれないけど、その印象はズバリ正解。

 設定はバリバリにSFだけど、主人公が冴えないオタクなところとか、文体など物語の雰囲気は、かなりラノベやジュブナイルに近い。

 なんたって、

 「現実ではこんなダサダサだけど、仮想の世界だとボクは最強のカンフー使いなんだ!

 っていう発想は、それこそ『マトリックス』や『ファイトクラブ』(バーチャルではないけど)でわかるような、定型の「ボンクラ少年の理想の妄想」だ。最近なら異世界ものとかね。

 でも、この物語の魅力はそこだけじゃない。

 オタクの自己実現に加えて、そこから「ギークガール」とのロマンスはあるし、「イースターエッグ」をめぐるクエストあり、仲間との熱い友情あり、笑いあり涙ありバトルありアクションあり、最後には男としての成長もある。

 さらにはゲームやマンガなどサブカルチャーのトリビアなどなど、さまざまな燃える要素を詰めこんだ、サービス満点てんこ盛り娯楽小説であるのだ。

 そう、この『ゲームウォーズ』、かなりきらびやかなインターフェイスで彩られているけど、中身は実にストレートな正統派少年青春冒険小説。

 主人公は「冴えないオタク」だけど、物語のノリはむしろ『ONE PIECE』とか『少年探偵団』ものに近い感じ。映画でいえば『インセプション』のノリで『グーニーズ』をやるみたいというか。

 テンポがよく、数々の謎に頭を悩まし、小ネタに笑い、リアルの世界でそれぞれに悩める登場人物たちと一緒に、泣いて笑って転がって、どんどん物語にのめっていくその気持ちよさよ。

 その見せかけとは裏腹に、ストレートな小説としても十分に面白い『ゲームウォーズ』は意外に幅広い世代におススメだが、もうひとつの楽しみはやはり、全編にちりばめられたオタクネタであり、ここもまた読者の「語りたい欲」を刺激してくれるのだ。



 (続く→こちら



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