「十七世名人」をめぐる竜王と名人の対決 羽生善治vs谷川浩司 1997年 第55期名人戦 第6局 その2

2019年12月13日 | 将棋・名局

 前回(→こちら)の続き。

 羽生善治名人と、谷川浩司竜王の「竜名決戦」となった、第55期名人戦

 3勝2敗と「十七世名人」に王手をかけた谷川が、第6局も序盤でリードを奪われるも、そこからの持ち味を発揮し、押し返していく。

 

 

 ▲45角と、飛車金両取りに打たれたのを、巧みな手順で切り返した後手の谷川。

 飛車を急所の筋に活用され、放置すると△69銀でつぶされる。

 そこで先手は▲65歩と打つが、ここでまたも「前進流」の威力が発揮される。

 

 

 

 △54金とぶつけるのが、強気のタックル。

 飛車取りを放置して、ここで勝負をかけるのが谷川将棋だ。

 ▲64歩と取って、△45金と角を取っても▲同銀で取り返されて駒損のようだが、そこで△27角が、飛車銀両取りでうまい。

 

 

 

 ▲28飛に△45角成と取って、飛車銀交換ながらが手厚く、先手も振りほどくのは大変だ。

 羽生も▲24歩と味をつけてから、▲63歩成と攻め合うが、後手も△66歩とたたいて激しい寄せ合いに。

 ▲同金、△65歩、▲55金でこの場面。

 

 

  先手はとにかく、攻防ともにイバっている、後手のをなんとかしたい。

 そこで玉が薄くなるのもかまわず、金でアタックをかけていったが、この次の手がまたカッコいいのだ。

 

 

 

 

 △67銀が、痛烈な一撃。

 ▲同玉は△66銀とかぶせて、▲78玉、△55銀

 馬のラインがあるから、▲同歩とは取り返せず、負かされてしまう。

 渡辺明三冠王が、谷川将棋にあこがれてプロになったのは有名な話だが、こういった細い攻めのつなぎ方は、たしかにそれっぽい。

 羽生は▲89玉と逃げるが、谷川は一回△23馬と引いて受けに回る。

 次に△76歩からの、桂頭攻めが楽しみだ。

 ただ、このあたりの手順は私もテレビで観戦していて、どう見ても谷川ペースに見えたのに、形勢はまだ難しいというのは、おどろいたもの。

 これだけ見事な連続技を喰らっても、なかなか急所にパンチを入れさせない、羽生のしぶとさもさすがである。

 以下、先手もあれこれと手管をくり出して行くが、玉形の差で後手が勝ちやすいよう。

 最終盤に、ようやっと谷川の勝ちが見えてきたようだ。

 

 

 

 後手玉は一手スキになっており、かなりプレッシャーをかけられているが、ここからは谷川浩司の「光速の寄せ」タイムである。

 

 

 

 

 △81飛と打つのが、その第一弾。

 金銀のない後手は、どこから手をつけていいか迷いそうなところだが、この手の攻撃はお手のものである。

 追いつめられた羽生は、それでも▲84桂(!)と中合いして、△同飛に▲96玉ときわどくよろける。

 △63角の追撃には▲74飛(!)と合駒をして、これでなんと先手玉に詰みはない

 

 

 ここへきて、なお見せ場を作る羽生の手の見え方には、感嘆を超えてあきれるしかないが、この日の谷川浩司は、ちょっと強すぎたようだ。

 

 

 

 △74同飛、▲同歩に△45角と金を取るのが、あざやかな決め手。

 金を補充しながら、角を△23の地点に利かして一手スキをほどくという

詰めろのがれの詰めろ

 という手でピッタリ。

 谷川が勝つときはだいたい、こういうフィニッシュホールドが出るもの。

 いやもう、私に絵心があれば『谷川ですが?』ていう同人マンガを描くのになあ。

 

 

「光速の寄せ」のイメージ図。下の女子たちの気持ちはよくわかります。

 

 

 以下、▲同銀に△76飛で、羽生が投了

 見事「竜王名人」とともに「十七世名人」も獲得。

 待ち望まれた「谷川復活」を、ここに果たしたのであった。

 

 

 (「カミソリ」勝浦修の切れ味編に続く→こちら

 

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