「ホッとする瞬間」というのがステキだと思う。
「女性のどんなところに、《いいな》となるか」
というのは男同士での酔談に、よく出るテーマである。
ベタに胸やお尻がいいという人もいれば、うなじや指にときめくという人もいる。
中には友人トヤマ君が言うような、
「ポッチャリ女子が好きだけど、それはただふっくらしているだけではなく、一度ダイエットをして、その後失敗してリバウンドをした肉のついたポッチャリがいい」
なんてマニアックな要望もあったりするが(それ、どう違うんだ?)、これが私の場合
「女の子が、安堵の表情を浮かべる瞬間」
2019年の東レ・パン・パシフィックオープンで、日本の大坂なおみ選手が見事初優勝を果たした。
大坂選手といえば、前年でUSオープンを制し、続いて年明けすぐのオーストラリアン・オープンも優勝するなど大活躍で、日本人選手として初の世界ナンバーワンにも輝いたが、その後スランプに見まわれる。
コーチとの契約解消や、ガラの悪いメディアへの対応、また女王となったことを意識しすぎるなどで本来の力を発揮できず、早期敗退をくり返しファンをヤキモキさせたが、ここへきて地元での栄冠を獲得し、続くチャイナ・オープンも制して一気の復活劇を遂げるのだった。
このとき印象的だったのが、東レの決勝戦でのこと。
マッチポイントを取って優勝を決めたなおみちゃん(本人公認の呼び名)は、感慨深げに天をあおいだのだ。
これまでのイメージだと、優勝を決めれば彼女は「やった! やった!」と無邪気に飛び跳ねていたようだが、ここではじっと、噛みしめるように味わっていた。
そこにマンガのごとく、フキダシをつけるなら、そこに書かれるセリフはこうだったろう。
「よかったぁ……」
全豪優勝から半年以上、なおみちゃんにとって、この時期は非常に苦しいものだった。
そのトンネルを抜けたとき、彼女は喜びよりも、むしろ安堵を感じたのではあるまいか。
そのことが、これでもかと表情に出ていたものだった。
勝ててよかった、ホッとした。
そして、様々な重圧から解放されるきっかけをひとつつかんだとき、ようやっと彼女のいつもの笑顔が花開いたのだ。
ふだんのイノセントな彼女もいいが、この「なにかを乗り越えた」ときのホッとした姿も、またすこぶる魅力的だった。
その後も大坂なおみ選手はテニスのプレーのみならず、様々なしがらみや軋轢にさらされ、今年のUSオープンでも初戦敗退を喫してしまうなど、苦戦を強いられることも多いよう。
「ふつうの女の子」であることが、彼女の大きな魅力であり売りだったが、ビッグマネーや、世界中の魑魅魍魎がからむスポーツ界で戦っていくにおいては、それが通じないケースも増えてきて、いろいろとかみ合っていない印象を受けることもある。
見ているこちらは、コートで戦う彼女を見守ることしかできないが、願わくば多くの笑顔に恵まれてほしいと、ファンとして心から思うのである。
■おまけ
英会話学習のYouTubeをやっているサマー・レイン先生が、大坂なおみ選手のツイートを例文に英語を教えている動画。とても興味深いです。