チェンジ、レオパルドン! で失笑を呼ぶ男、スパイダーマン!

2016年07月14日 | おもしろ映像

 前回(→こちら)の続き

 「今の若い者は本物を知らんのやな」。

 そんな嘆き節を発したのは、友人イマフネ君である。

 本物を知らない。

 なるほど、昨今の日本は不景気なせいか、商品でもエンターテイメントでも廉価版がはびこっている印象がある。

 レストランよりもチェーンのハンバーガーや牛丼、お菓子もパティシエの作るケーキよりもコンビニスイーツ。

 映画は名画座ではなくDVDで鑑賞し、エロもアダルトビデオではなく、ネットの無料動画ですませるというありさまだ。

 それが時代であり、まあ悪いとは言わないが、それだけというのも、なにやらさみしい気もする。

 いくらデフレの世の中とはいえ、ときには我々も「本物」を嗜好するのも悪くはあるまい。

 こういうことをいうと、年寄りのグチやら、果ては「老害」認定されるかもしれないが、そこをあえて踏みこむ友は、なかなかに豪気だ。

 そう、人間、批判されても、言うべきことはある。

 まったく、わが友ながら大した男だ。

 で、その大人物イマフネ君がいう、若者に味わってほしい本物とはなんなのか、グルメか、それとも文学音楽のことなのかと問うならば、

 「そらもう、スパイダーマンに決まってるやんけ」

 へ? スパイダーマン? あの今やってるハリウッド版のこと? 

 あれやったら、別にキミがいわんでも、みんな観てはるんちゃうと問うならば、


 「ドアホ! あんなスマートなんが、スパイダーマンなわけないやろ。オレが言うてる『本物』は東映版のヤツや。チェーンジ、レオパルドーン! の方に決まってるやないか!」

 おお、そうか。東映版のヤツか!

 などと言われても、昨今のヤングにはなんのこっちゃかもしれないが、実は我々のような昭和世代にとってスパイダーマンといえばハリウッドではなく東映製作

 アメイジングではなく、レオパルドンなのである。

 おもしろいものはネットではなく、『てれびくん』とか『テレビランド』で情報収集していた時代なのだ。

 かのマーベル・コミックのヒーローであるスパイダーマンは、一度日本で実写化されている。

 でもって、このスパイダーマンというのが、なんとも変というか、日本独特にアレンジされたシロモノ。

 どこがヘンといえば、まあ一言でいえば汗臭いというか、いかにも昭和特撮といった暑苦しさ。

 なんといっても有名なのが、キメポーズと決め台詞。

 やたらとくどい動きと、押しつけがましさ充分の声量で、



「愛のために血を流す男、スパイダーマン!」



 とか、カマしてくるのである。

 はっきりいってうっとうしい。ハリウッド版のような、恋人や家族とのしっとりとしたドラマなど、熱波で吹き飛ばす勢い。

 とにかく熱い。サウナで鍋焼きうどんを食わされている気分だ。

 さらにもうひとつ、この東映版の売りとしてはレオパルドンははずせまい。



 チェーンジ! レオパルドーン! 

 

 との絶叫とともに登場するこの日本オリジナルのメカは、とにかくもう

 「おもちゃ屋の陰謀

 という色が強すぎて、強烈なインパクトを残す。

 アメリカのスタッフが、


 「日本のスパイダーマンはいい作品だ。レオパルドンはアレとして……」

 とコメントしたのは有名な話だが、私もはじめて見たときはマーベルもスパイダーマンのことも、なにも知らなかったのにもかかわらず、

 「こんなんホンマのスパイダーマンやない!

 画面に向かって、つっこんでしまったものだ。

 海の向こうではどう、といった小賢しい知識ではなく、人としての「本能」が言わせた言葉であろう。

 ようは知らんけど、絶対、ホンマはこんなんとちゃう、と。

 この無垢で無知な子供にすら「なんか違う」感バリバリであったレオパルドン。

 なにがどうと説明するのは難しいが、「昭和の業」といったものを感じさせるメカである。

 「みんなが映画館で見るスパイダーマンはカリフォルニアロール。アボカドの寿司もいいけど、やっぱ日本人は本物の握りを食わなアカンのやな」。

 しみじみと、そう語るイマフネ君。

 全体的に論理が二重三重にねじれている気もするけど、言いたいことはわからなくもない。なんか、

 「香港では『出前一丁』が本物のラーメンあつかい」

 みたいなノリであるなあ。

 そんな東映版スパイダーマン。子供のころ観て以来再放送とか全然やってくれないんで、あらためて今回YouTubeで検索したら、やはりいました「本物志向」のファンの人々が。

 で、見直したら予想以上に暑苦しい内容で笑ってしまった。

 ベッキーさんや乙武さんも、このポーズとセリフを拝借して記者会見すれば、けっこう世間もゆるしてくれたような気もするがどうか。




 (『総天然色ウルトラQ』編に続く→こちら


 おまけ 東映版スパイダーマンの活躍は→こちら



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