娑婆世界

我々は、事あるごとに言う。
「憎い、気に入らん、腹が立つ、仕返しや報復してやる」とか、「辛い、苦しい、悲しい、こんなの厭だ」などと言う。
そしてこうした事は「お前が悪い、人が悪い」と言う。

我々は、この世に生まれてきた。この世に生まれてきて、そして厭が上でも、生きていくことを強要され、強制されている。
この「厭が上でも生きていくことを強要され、強制され」て行く世界であるこの世を、仏教用語では「娑婆世界」と言う。
こういう「娑婆世界」に我々は生きていかなければならない訳だが、ではこの「娑婆世界」、甘ちょろい世界であるものだろうか。
先にも述べたように我々は事あるごとに、「憎いとか気に入らん」などとか「辛い、悲しい」などとよく言うが、ムそうやって愚痴を言えば「はいはい」と済むような甘い世界なのだろうか。

殊に我々は、「口でものを言って」済ましたがる。
「口」というものは、「誠に重宝なもので、どんなことでも言われる。「嘘八百」でも、並べられる。
その言ったことを、次には覆すこともできる。
こういう事を、一国の首相や大統領なんかも、よくやっている。
「娑婆世界」というものは、こういう事がいつまでも続けられるほど、甘い世界なのだろうか。

「娑婆世界」は、厳しい。
この厳しさは、底が知れない。
厳しさを知れば知るほど、味わい深く、深みが増し、「娑婆世界」の大きさ、素晴らしさを知らされる。
それは、我々が生かされているこの世の、大きさと深さと、素晴らしさとである。

巨大水車