今回ご紹介するのは「図書館革命」(著:有川浩)です。
-----内容-----
原発テロが発生した。
それを受け、著作の内容がテロに酷似しているとされた人気作家・当麻蔵人に、身柄確保をもくろむ良化隊の影が迫る。
当麻を護るため、様々な策が講じられるが状況は悪化。
郁(いく)たち図書隊は一発逆転の秘策を打つことに。
しかし、その最中に堂上は重傷を負ってしまう。
動揺する郁。
そんな彼女に、堂上は任務の遂行を託すのだった―
「お前はやれる」。
表現の自由、そして恋の結末は!?
感動の本編最終巻。
-----感想-----
※図書館戦争のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※図書館内乱のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※図書館危機のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
この作品は前作「図書館危機」からの続編となります。
前作のレビューで『「メディア良化委員会」対「図書館」の「表現の自由」をかけた対決がさらに激化』と書きましたが、今作「図書館革命」ではそれをさらに上回る大激戦が繰り広げられました
とにかく最初から最後までスリリングな展開でとても面白かったです
物語の冒頭で原発テロが起きるのですが、このテロの手法が人気作家・当麻蔵人の書いた「原発危機」という書籍の内容に酷似していたことから、メディア良化委員会の不穏な動きが始まります。
「原発危機」はテロリストの教科書になり得るほど危険な書籍であり、それを書ける人物に自由な著作を許すわけにはいかない、という考えのもと、当麻蔵人の身柄確保に向けて動き出したのです。
もし当麻蔵人が身柄を確保されたら、自由な著作を放棄するまで解放されないのは目に見えています。
そしてこの機に当麻蔵人を皮切りにして大規模な作家狩り、言論狩りが始まろうとしています。
当麻蔵人の身柄確保=表現の自由、言論の自由の終焉を意味するだけに、郁の所属する図書特殊部隊は当麻の身柄を秘密裏に保護し、全力を挙げて当麻の護衛に当たります。
しかし。。。
図書隊の中でも図書特殊部隊とごく一部の幹部しか知らないはずの当麻の居場所がばれ、ある日の夜、敵の影が忍び寄ります。
一体どこから情報が漏れたのか、この辺りの展開は読んでいてかなり面白かったです。
さらにその次に選んだ潜伏先も敵にばれ、またしても追っ手が迫ります。
一体誰が情報を敵に渡したのか?
最初の時とは全く違う状況での情報漏洩だっただけに、誰が裏切り者なのか、これがとても気になりました。
意外な人物の裏切りに驚かされましたね。
そして今作では、図書隊がメディアをフル活用して「メディア良化委員会とメディア良化法の是非」を国民に問題提起していくことになります。
今までのような「週刊新世相」に代表される週刊誌だけではなく、テレビやラジオ、新聞などの全マスコミで連合を作って。
そしてその中でも特に世間に広くインパクトを与えられるのはテレビです。
主要なキー局で連日メディア良化法とメディア良化委員会への批判が展開されていくことになります。
ニュースの中でキャスターが言っていた以下の言葉が印象的でした。
「しかし、表現の自由は憲法第21条で保障されている国民の権利ですよ。これを国が剥奪するということは可能なんでしょうか?」
さらに、ニュースの中で紹介された憲法第21条のフリップ。
これは架空の話ではなく、実際の日本国憲法に記されていることです。
日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務
第21条 1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保証する。
2.検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
メディア良化法はこの憲法を真っ向から否定した法律ではないのか?これをテレビのニュースで広く国民に訴えかけていくことになります。
これにより、今までメディア良化法に無関心だった層もこの法律の異常さに気付き始め、国民的な関心事項へと発展。
人気作家の当麻蔵人が「書籍の内容が原発テロに似ている」というだけの理由でメディア良化委員会によって表現の自由を剥奪されそうになっているのだから尚更です。
今作では「当麻蔵人の身柄を無事に護りきれるのか」、そして「国民的関心事項に発展したメディア良化法の是非」、この二つを軸に物語が進んでいきます。
どちらもとても面白くて、かなり興味深く読むことが出来ました。
当麻蔵人の護衛のほうはスリリングな展開にハラハラドキドキ、メディア良化法の是非のほうはついに憲法第21条「表現の自由」が前面に押し出されるようになって興味津々でした。
当麻蔵人側は「憲法第21条に保障されている表現の自由を良化委員会によって侵害されている」として、メディア良化委員会を相手取った行政訴訟を起こすのですが、この裁判の行方も気になるところでした。
当然テレビでもこの裁判の行方は大注目で、いかにも最終巻という感じのすごく面白い展開でした
ところで、憲法第21条「表現の自由」といえば、先月民主党が国会で強行採決した「ACTA」という国際条約がこの「表現の自由」の侵害に当たるのではという指摘があります。
※ACTAの強行採決の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
そして今作「図書館革命」でとても印象的だったのがこの言葉。
「良化委員会どもは人権擁護を唱えていながらこれ以上の人権蹂躙もほかにない」
人権擁護とは名ばかりで、表現の自由を奪うために当麻蔵人を拉致しようとしたり、その家族にも迷惑をかけたりと、やっていることはまさに人権蹂躙です。
私はこの言葉を見て現実世界での「人権侵害救済法案」が思い浮かびました。
※人権侵害救済法案の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
今作のテレビニュースで言っていた「自分達に都合の悪い言論を合法的に狩れる機関を持てることは、政府にとって非常に都合のいいことでしょうね」という言葉も、どことなくこの人権侵害救済法案を連想させるものがありました。
今作「図書館革命」は最終巻だけあって本当に最後の最後までハラハラドキドキする予断を許さない展開でした。
当麻蔵人の身柄を護りきることは出来るのか、裁判の行方はどうなるのか、そして表題にもなっている「革命」とは何が起きるのか。
「メディア良化委員会」対「図書隊」の「表現の自由」をかけた攻防の最終局面、本当に面白かったです
素晴らしいクライマックスだったと思います
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
※図書ランキングはこちらをどうぞ。
-----内容-----
原発テロが発生した。
それを受け、著作の内容がテロに酷似しているとされた人気作家・当麻蔵人に、身柄確保をもくろむ良化隊の影が迫る。
当麻を護るため、様々な策が講じられるが状況は悪化。
郁(いく)たち図書隊は一発逆転の秘策を打つことに。
しかし、その最中に堂上は重傷を負ってしまう。
動揺する郁。
そんな彼女に、堂上は任務の遂行を託すのだった―
「お前はやれる」。
表現の自由、そして恋の結末は!?
感動の本編最終巻。
-----感想-----
※図書館戦争のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※図書館内乱のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※図書館危機のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
この作品は前作「図書館危機」からの続編となります。
前作のレビューで『「メディア良化委員会」対「図書館」の「表現の自由」をかけた対決がさらに激化』と書きましたが、今作「図書館革命」ではそれをさらに上回る大激戦が繰り広げられました

とにかく最初から最後までスリリングな展開でとても面白かったです

物語の冒頭で原発テロが起きるのですが、このテロの手法が人気作家・当麻蔵人の書いた「原発危機」という書籍の内容に酷似していたことから、メディア良化委員会の不穏な動きが始まります。
「原発危機」はテロリストの教科書になり得るほど危険な書籍であり、それを書ける人物に自由な著作を許すわけにはいかない、という考えのもと、当麻蔵人の身柄確保に向けて動き出したのです。
もし当麻蔵人が身柄を確保されたら、自由な著作を放棄するまで解放されないのは目に見えています。
そしてこの機に当麻蔵人を皮切りにして大規模な作家狩り、言論狩りが始まろうとしています。
当麻蔵人の身柄確保=表現の自由、言論の自由の終焉を意味するだけに、郁の所属する図書特殊部隊は当麻の身柄を秘密裏に保護し、全力を挙げて当麻の護衛に当たります。
しかし。。。
図書隊の中でも図書特殊部隊とごく一部の幹部しか知らないはずの当麻の居場所がばれ、ある日の夜、敵の影が忍び寄ります。
一体どこから情報が漏れたのか、この辺りの展開は読んでいてかなり面白かったです。
さらにその次に選んだ潜伏先も敵にばれ、またしても追っ手が迫ります。
一体誰が情報を敵に渡したのか?
最初の時とは全く違う状況での情報漏洩だっただけに、誰が裏切り者なのか、これがとても気になりました。
意外な人物の裏切りに驚かされましたね。
そして今作では、図書隊がメディアをフル活用して「メディア良化委員会とメディア良化法の是非」を国民に問題提起していくことになります。
今までのような「週刊新世相」に代表される週刊誌だけではなく、テレビやラジオ、新聞などの全マスコミで連合を作って。
そしてその中でも特に世間に広くインパクトを与えられるのはテレビです。
主要なキー局で連日メディア良化法とメディア良化委員会への批判が展開されていくことになります。
ニュースの中でキャスターが言っていた以下の言葉が印象的でした。
「しかし、表現の自由は憲法第21条で保障されている国民の権利ですよ。これを国が剥奪するということは可能なんでしょうか?」
さらに、ニュースの中で紹介された憲法第21条のフリップ。
これは架空の話ではなく、実際の日本国憲法に記されていることです。
日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務
第21条 1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保証する。
2.検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
メディア良化法はこの憲法を真っ向から否定した法律ではないのか?これをテレビのニュースで広く国民に訴えかけていくことになります。
これにより、今までメディア良化法に無関心だった層もこの法律の異常さに気付き始め、国民的な関心事項へと発展。
人気作家の当麻蔵人が「書籍の内容が原発テロに似ている」というだけの理由でメディア良化委員会によって表現の自由を剥奪されそうになっているのだから尚更です。
今作では「当麻蔵人の身柄を無事に護りきれるのか」、そして「国民的関心事項に発展したメディア良化法の是非」、この二つを軸に物語が進んでいきます。
どちらもとても面白くて、かなり興味深く読むことが出来ました。
当麻蔵人の護衛のほうはスリリングな展開にハラハラドキドキ、メディア良化法の是非のほうはついに憲法第21条「表現の自由」が前面に押し出されるようになって興味津々でした。
当麻蔵人側は「憲法第21条に保障されている表現の自由を良化委員会によって侵害されている」として、メディア良化委員会を相手取った行政訴訟を起こすのですが、この裁判の行方も気になるところでした。
当然テレビでもこの裁判の行方は大注目で、いかにも最終巻という感じのすごく面白い展開でした

ところで、憲法第21条「表現の自由」といえば、先月民主党が国会で強行採決した「ACTA」という国際条約がこの「表現の自由」の侵害に当たるのではという指摘があります。
※ACTAの強行採決の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
そして今作「図書館革命」でとても印象的だったのがこの言葉。
「良化委員会どもは人権擁護を唱えていながらこれ以上の人権蹂躙もほかにない」
人権擁護とは名ばかりで、表現の自由を奪うために当麻蔵人を拉致しようとしたり、その家族にも迷惑をかけたりと、やっていることはまさに人権蹂躙です。
私はこの言葉を見て現実世界での「人権侵害救済法案」が思い浮かびました。
※人権侵害救済法案の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
今作のテレビニュースで言っていた「自分達に都合の悪い言論を合法的に狩れる機関を持てることは、政府にとって非常に都合のいいことでしょうね」という言葉も、どことなくこの人権侵害救済法案を連想させるものがありました。
今作「図書館革命」は最終巻だけあって本当に最後の最後までハラハラドキドキする予断を許さない展開でした。
当麻蔵人の身柄を護りきることは出来るのか、裁判の行方はどうなるのか、そして表題にもなっている「革命」とは何が起きるのか。
「メディア良化委員会」対「図書隊」の「表現の自由」をかけた攻防の最終局面、本当に面白かったです

素晴らしいクライマックスだったと思います

※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
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