読書日和

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「残り全部バケーション」伊坂幸太郎

2013-01-26 20:52:06 | 小説
今回ご紹介するのは「残り全部バケーション」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
「実はお父さん、浮気をしていました」
突然の告白から、家族三人は「岡田」と名乗る男と、ドライブに…。
人生、まだ、続いていくから。
裏稼業コンビ「溝口」と「岡田」をめぐる5章構成の傑作連作集。

-----感想-----
いい加減で大雑把な性格の「溝口」と、大人しく真面目な性格の「岡田」。
そんな二人の職業は「裏稼業」。
車でわざと後続車にぶつからせてお金を取る「当たり屋」や、他人を脅迫したりするなど、物騒なことばかりやっています
毒島(ぶつしま)さんという組織のトップから指令が来て、その「仕事」のために暗躍する感じですね。

で、物語は内容欄にある、父の浮気が原因で離婚することになった家族三人が、父のひょんな行動から「岡田」とドライブに行くところから始まっていきます。
実は岡田、その真面目な性格から「裏稼業」の仕事をやめようかなと考えています。
一方の「溝口」のほうは岡田とは正反対の性格で、行き当たりばったり、あまり物事を深く考えてはいなく、「裏稼業」のほうも独立開業してまで続けていく気満々です。
もっともこの独立が毒島(ぶつしま)さんの怒りを買い、まずいことになるのですが。。。
この物語は、「溝口」と「岡田」の二人の人物を巡って展開されていきます。

物語は全部で5章になっていて、それぞれに溝口や岡田が出てきたり、ほかの裏稼業の人が出てきたり、岡田の幼少期の話だったりしますが、必ず溝口か岡田どちらかが絡む話になっています。
そして徐々に、二人のことが分かっていきます。
意外と大雑把で何も考えていないような感じの溝口が岡田のことをことのほか気にかけていたのが印象的でした。
そして何も考えていないように見せかけて、実は色々考えているんだなとも思いました。
砕けた感じのぶっきらぼうな口調の先に、ずっとあることを思い描いていたのが終盤で明らかになります。

そしてこの作品でも伊坂さん得意の仕掛けが炸裂していました
ある章で何気なく出てきた「政治家の愛人の写真を撮る」という仕事が、実は後の章の物語と密接につながっていたり、この章に登場するこの人物は、実は現在のあの人なんじゃないか?など、伊坂さんらしい仕掛けがたくさんありました^^
極めつけは作品中に何度も登場した「食べ歩き日記」なるブログで、甘党な溝口はよくスマートフォンでこのブログを見ているのですが、このブログが終盤で大きな意味を持ちました。
サキさんという女性が運営しているケーキ等のスイーツ関連のブログなのですが、実はこのブログを運営しているのはその女性ではなく、まさかまさかの人物なのではという疑問が出てきたりもして。
最後にまさかのどんでん返しがあるのがやはりミステリーな小説を書く伊坂さんらしいなと思いました
このどんでん返し、結末がどうなるのかは別にして、「そうであってほしいな」と願っていたことでもあったので嬉しかったです
今回の作品の終わり方は続きがかなり気になる終わり方だったのですが、そこは読者それぞれの想像に任せるということなのだろうと思います。
私は希望的に捉えたいと思いました


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