読書日和

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「ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~」三上延

2015-01-01 15:07:19 | 小説


新年最初の小説レビューになります
今回ご紹介するのは「ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~」(著:三上延)です。

-----内容-----
太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。
ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。
今度は依頼者として。
違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。
署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。
本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。
四十七年前にあった太宰の稀覯本(きこうぼん)を巡る盗難事件。
それには二人の祖父母が関わっていた。
過去を再現するかのような奇妙な巡り合わせ。
深い謎の先に待つのは偶然か必然か?

-----感想-----
横須賀線北鎌倉駅の脇にあるビブリア古書堂を舞台にした古書ミステリーのシリーズ第6弾。
今作は以下のように構成されています。

プロローグ
第一章『走れメロス』
第二章『駈込み訴へ』
第三章『晩年』
エピローグ

プロローグで五浦大輔が病室で目を覚ますところから物語が始まります。
手術を受けた後でした。
前作で大輔は手術が必要なような大けがはしていなかったので、何かがあったのだということがすぐに分かりました。
そして篠川智恵子が大輔の病室に来ていました。
大輔が智恵子に自分と篠川栞子の身に何が起きたのかを話すという形で、本編へと入っていきます。

時系列は2011年の6月。
大輔は鎌倉の長谷にある寺の近くに来ていました。
紫陽花がたくさん咲いているようで、私はこれを読んで「長谷寺」が思い浮かびました。
※長谷寺の紫陽花についてはこちらをどうぞ。

大輔は田中敏雄に会いに来ていました。
田中敏雄は「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」で篠川栞子から太宰治「晩年」の貴重な初版本を手に入れようとし、ついには石段から突き落としてしまった人物です。

前作「ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~」で、ビブリア古書堂に手紙が投げ込まれました。
その手紙には「『晩年』をすり替えたお前の猿芝居を知っている。連絡しろ」と書かれていて、差出人は田中敏雄と書かれていました。
大輔は本当に田中が書いたのかを確かめに来ていました。
そして田中と話してみた結果、手紙を投げ込んだ人物は田中ではなさそうだということが分かります。
誰かが田中になりすまして手紙を寄こしたのか?そして一体どこで栞子の「晩年」の秘密を知ったのか?この疑問が出てきます。

田中は祖父が持っていた「晩年」の行方を探してほしいという依頼をしてきます。
大輔はもしかしたらあの手紙はこの依頼を受けさせるために投げ込まれたのではという可能性に思い至ります。
田中は何年か前から神奈川県内の古書マニアが集まるSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のコミュニティに参加していて、先月、コミュニティのメンバーから田中宛にメッセージが届きました。
田中の祖父、田中嘉雄が持っていた極めて希少価値の高い『晩年』の初版本が現在、神奈川県内の古書マニアのもとにあることを知らせてきます。
田中の依頼はこの『晩年』を誰が持っているのかを調べてほしいというものでした。
私はこの田中にメッセージを送ってきた人物が手紙を投げ込んだのか、もしくは智恵子の息のかかった人か、そのどちらかの気がするなと思いました。
読んでいたら大輔も田中が受け取ったメッセージとビブリア古書堂に投げ込まれた手紙は同一人物が出したのではと見ていました。
そして篠川智恵子が黒幕かも知れないことについても、大輔と私は同じことを考えていました。

また今作では篠川文香によって大輔が栞子と付き合い始めたことがどんどん広まっているのがウケました(笑)
今作では前作までに出てきた人が所々に出てくるのですが、そのことごとくが大輔と栞子のことを知っていました。
おしゃべりな文香があちこちにしゃべっていたのでした
ただこのあちこちにしゃべってしまっていた大輔と栞子のことが終盤で伏線になっていたのは流石だなと思いました。

田中の祖父、田中嘉雄が持っていた極めて希少価値の高い『晩年』の初版本について栞子も「すごく興味をそそられる」と言っていて、大輔はぎょっとしていました。
長谷の寺で田中が言っていた言葉と同じだったからです。
栞子が田中からこの依頼を受けた理由は持ち主に「田中に奪われるかも知れないから気を付けろ」と警告するためだけではなく、太宰の書き込みがあるのに署名本ではないという「晩年」の謎に惹かれているからだと、大輔は見ていました。

太宰治は帝国大学、今の東京大学仏文科に在籍していたものの、左翼運動や創作活動に没頭していて留年を繰り返していて、大学を卒業できる見込みもなかったというのは知りませんでした。
また「走れメロス」は太宰の実体験が発端になっているという説があるというのも初めて知りました。
そして知れば知るほど、太宰治はどうしようもない生活を送っていた人だということが分かります。

今作で重要な鍵になるのが、「四十七年前のできごと」。
そこに深く関わっているのは虚貝堂という古書店の先代の店主・杉尾、小谷次郎、田中の祖父の田中嘉雄、そして三人の師匠に当たる富沢博。
他には富沢博の娘の富沢紀子や、ビブリア古書堂の創始者であり栞子の祖父の篠川聖司、さらには五浦大輔の祖母で「ごうら食堂」を切り盛りしていた五浦絹子の名前まで出てきます。

杉尾や田中嘉雄は「ロマネスクの会」という会を作って、太宰治のことについて意見を交わしたり研究したりしていました。
ただ栞子と大輔が接触した小谷は杉尾と田中嘉雄、さらには太宰治に苦々しい感情を持っているようで、露骨に不快感を表していました。
明らかに四十七年前に何かがあったことが伺われました。
そして小谷は何かを隠していると栞子と大輔は感じます。
また、ある時を境に田中嘉雄がぱったりとみんなの前に姿を現さなくもなったようです。

「待つ身が辛いのか、待たせる身が辛いのか」
これは太宰治が作家中間の檀一雄に言った言葉です。
杉尾はこの言葉を引用して田中嘉雄について「待つ身が辛いのか、待たせる身が辛いのか、どっちだったんだろうな」と意味深なことを言っていたようです。

ビブリア古書堂に来る客の相談に乗るのは、もともとは栞子の祖父が始めたということも明らかになります。
現在のほうの虚貝堂の店主の杉尾が話してくれました。
栞子の祖父は引退する時、店は息子の登に継がせて、副業の「客の相談に乗る」ほうは嫁の智恵子に継がせたとのことです。

小谷の話では田中嘉雄が富沢博が一番大事にしていた稀覯本(物凄く希少価値の高い本)を盗んだのではないかとのことでした。
その稀覯本の名は「駈込み訴へ」。
栞子の持つ砂子屋(まなごや)書房版の「晩年」、同じく田中敏雄が行方を捜してほしいと依頼してきた砂子屋書房版の「晩年」と並んで最も古書価のついている太宰の著書とのことです。

富沢博は大事な古書を盗まれてから小谷、杉尾、田中嘉雄の三人を家に寄せ付けなくなっていました。
そして栞子と大輔が家を訪ねても姿を見せてくれませんでした。
ちなみに四十七年前、盗まれた「駈込み訴へ」を取り返して富沢博のもとに戻してくれたのは篠川聖司でした。
ただし誰が犯人だったのかは明らかにしていませんでした。
富沢博の娘の紀子は四十七年前に篠川聖司がどんな調査をしたのか知りたがっていて、栞子たちに依頼してきました。
調べていくと四十七年前の当時富沢邸の書庫に入っていたのは身内以外では小谷、杉尾、田中嘉雄の三人しかおらず、それで富沢博から疑われたということが分かります。

篠川聖司の言葉と栞子さんがよく口にする言葉が似ているのは印象的でした。
「古書は人の手を渡っていく。人と古書の繫がりを守るのがわたしの主義です」
栞子も「人の手から手へ渡った本そのものに物語がある」と言っていて、やはり血がつながっているのだと思いました。
ただ大輔は「その正義感の強い人物が、真相を宙ぶらりんのままに済ませてしまったことが、俺にはやっぱり気になる。人と古書の繫がりを守るなら、古書を介した人と人との繫がりも大事にしそうなものだが」と考えていて、たしかにそのとおりだと思いました。
なぜ誰が犯人なのかを明らかにしなかったのか、やはり四十七年前に「駈込み訴へ」が盗まれた一件には何かがあるのだと思いました。

写真の中ではこんなに仲の良さそうな親友同士が、今はすぐ近くに住んでいても顔すら合わせない。仲違いをしたわけでもないのに、なんとなく会わないまま何十年も経ってしまうことがあるのだ。
これは私もそんな友達がいるのでよく分かります。
なかなか会えないまま何年も経ってしまうことがあります。

久我山書房というかつての古書店も出てきます。
四十七年前の当時に店主をしていて現在は亡くなっている久我山尚大(しょうだい)。
その妻で現在は寝たきりの久我山真理、その娘の久我山鶴代、さらにその娘の久我山寛子。
ちなみに久我山寛子も栞子と大輔が付き合い始めたのを知っていていきなり直球で質問してきていました
四十七年前のことを巡って色々な登場人物が出てきて大きな物語が展開されていきました。

「一部の高価な……本当に貴重な古書には、異様なほどの執着を示していた」
これは怖いなと思いました。
やはりあまりに希少価値の高い古書は時として人を狂わせると思いました。

今作では神保町界隈でのことがでてきました。
※神保町の街の様子をご覧になる方はこちらをどうぞ。
お金に困った太宰治が「晩年」の自家用本を売りに来たというエピソードは驚きました。
今まで太宰治について詳しいことは知らなかったのですが、本作によってどうしようもないほどの人間的な駄目さと弱さがよく分かりました。

大輔の決意も印象的でした。
俺はこの人と一緒に、この人が大事にしている本も守ることに決めている。そのためにはどんな危険も冒すつもりだった。
これが冒頭で大輔が病室に居たのにつながっているのだろうと思いました。
そして終盤に出てくる、古書を手に入れることへの恐るべき執念。

「二冊とも手に入れる。それだけのことだ」
「……死んでいたら、どうしたというの」


これらはデスノートの夜神月(やがみらいと)みたいでかなり怖いなと思いました
極端に希少価値の高い古書に魅せられた人々の手段を選ばず古書を奪いに行く狂気は尋常ではなかったです。
今作の終盤は「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」で栞子が石段から突き落とされたのを彷彿とさせる物騒な展開になっていました。

あとがきには「次か、その次の巻で『ビブリア』のシリーズは終わりです」とありました。
いよいよ古書ミステリーに決着の時が近付いています。
次巻では真打ちとも言うべき篠川智恵子が派手に動くでしょうし、どんな物語になるのか楽しみにしていたいと思います


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謹賀新年

2015-01-01 11:50:52 | ウェブ日記
皆様、新年明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願い致します

朝起きた時は晴れていたので初日の出を見ることができました
この時間は曇ってきていて寒いです。

2015年は未(ひつじ)年
ひつじと聞くとおっとりとして穏やかなイメージがありますね。
ここ最近はうさぎ年(ぴょんと飛び跳ねる)、辰年(天高く昇る)、午(うま)年(勢いよく駆け抜ける)など勢いのある干支が目立っていたのですが、未年は十二支の中でもかなりのほほんとしたイメージがあります。
そんな穏やかな干支も良いものですね

今年は戦後70年の節目の年。
ひつじのような穏やかな一年になってほしいところですが、残念ながらそうはならず、中国と韓国の反日国家二ヶ国が全力で嫌がらせをしてくる一年になるでしょう。
この節目の年の総理大臣が日本の国家国益を真剣に考えてくれる安倍晋三首相で良かったと思います。
悪質な反日国家の横暴に屈せず、毅然とした日本であってほしいです。
終戦の日に合わせて発表されるであろう「安倍談話」に大いに期待しています。

というわけで、今日から2015年が始まっていきます。
継続のために「細く長く」を意識して、あまり無理せずに頑張っていきたいと思います