昨日89歳男性の家族と胃瘻造設の相談をした。そもそもは誤嚥性肺炎で当地の基幹病院呼吸器科に入院した。抗菌薬投与で治癒して、経口摂取(全粥刻み食)もできるようになった。妻が小手術を受けることになり、夫婦二人暮らしで認知症で妻の介護がないと生活できないため、すぐに自宅に戻れない。その間当院で診てほしいという依頼で当院に転院になった。預るだけの社会的な入院のつもりだった。
勝手に動いてしまい、歩かせると転倒する。ベットか転落転倒する危険があり、ベットの時は体幹抑制をして(基幹病院でもしていた)、日中食事摂取の時は体幹抑制付きで車いすで過ごした。1週間くらいして昼食の時にひどくむせったが、その後は普通に食べ出してむせなかった。何ごともなく過ぎるか思われたが、その晩に呼吸困難となった。胸部X線で両側肺に広範な浸潤影があった。幸いに高流量酸素・抗菌薬投与で粘っているうちに3週間くらいかけて回復した。その間末梢からの点滴が困難になり、点滴の期間も長期になるので、中心静脈ラインを挿入して高カロリー輸液になっていた。
慎重にST介入で嚥下訓練を行ったが、何度やっても痰のからみとせき込みがひどく、経口摂取は断念せざるを得なかった。高カロリー輸液なので体力の低下もなく安定している。
娘さん(子供は姉妹で長女が来院した)に来てもらって、今後の方針を相談した。このまま高カロリー輸液を継続するか、胃瘻造設を行うかというものだ。姉妹と妻で話をして、胃瘻は希望しないことにしていたという。体幹抑制のままだが、周りをきょろきょろとみている。発語は一言くらいで、会話は成り立たないが、末梢用の点滴に戻すのもためらわれる。高カロリー輸液を継続して、感染症(肺炎や尿路感染)が起きたらそれなりに治療する方針となった。当院は一般病床(DPC)しかないので、療養型病床を持つ病院に転院の申し込みをして、空くまで当院でベット待ちとなる。
PEGを行うとすれば、ドルミカム静注で鎮静をしないと絶対に内視鏡挿入はできない。年令の割に体力はあるので、適応なしとはいえないが、現実的にはないのかもしれない。単に適応と禁忌の表をみて決めるわけにはいかない。
この前、精神遅滞で施設に入所している70歳くらいの男性が、嚥下障害で食事摂取できなくなって(脳神経の問題と判断)、消化器科に胃瘻造設目的の入院となった。内視鏡を挿入すると食道癌で狭窄していたという。施行前に胃の位置(腹腔内にどのくらい広がるか)を見るためにCTを施行していたが、食道癌に気づかなかったそうだ。後からその目で見れば病変として指摘できた。経鼻内視鏡に切り替えて、なんとか造設したという。施設では食道癌があるなら見られないと渋ったそうだが、癌が進行して入院を要するまでは施設でみてもらうことになった。