一昨日、内科クリニックから21歳女性が急性胃腸炎として当院消化器科に紹介になった。なんでも体育学部の学生で、教育実習に来ていたそうだ。発熱があり、嘔気・嘔吐があった。
外来や内視鏡検査で忙しい先生なので、さっと診察をすませて、胸部X線・腹部X線・腹部エコー・点滴・血液検査のオーダーを出した。結果待ちにして、やりかけの検査に戻った。結果が出てみると、胸部X線で左下肺野に立派な肺炎があった。白血球数19000、CRP27と上昇していた。胸部CTで確認するとair bronchogramを伴う浸潤影で容積の減少から一部無気肺になっているようだ。若い方の肺炎なので、マイコプラズマ肺炎かどうかだが、細菌性肺炎だろうと判断された。普段から肺炎も診ている先生なので、自分が主治医で入院させた。受診した時に咳・痰の訴えはなかったそうだ。
次の日(昨日)、その話を聞いて、こちらで(内科で)診ますかといったが、βラクタムの投与で解熱しているので、そのまま診ますという返事だった。今日の血液検査でも入院時より改善していた。なんでも昨夜痰を出そうとしたが、大きい音を出すと同室者に迷惑と思って、小さく咳払いをしているうちに具合が悪くなってしまったという(過呼吸気味になったしい)。今時健気なお嬢さんだ。
下痢・腹痛がないのに、安易に胃腸炎といってはいけないと研修医向けの本には書いてある。嘔気・嘔吐は発熱や全体的な体調不良から来るので、嘔吐したから胃腸が原因とはならない。でもありがちで、つい言うかもしれない。後から結果がわかって「それは胃腸炎じゃない」と言うのも気が引ける。
カンピロバクター腸炎のように、胃腸炎症状よりも発熱が先行して、受診時には発熱の原因が胃腸とはわからないこともある。翌日になって下痢・血便が出て、胃腸の問題と判明する。先々週29歳女性が、今週38歳男性がカンピロバクター腸炎で入院したが、この方たちは発熱と下痢はほぼ同時発症だったのでわかりやすかった。
22日にコメントをいただいたが、当院内科は正確には「なんでも内科」であって、ホントの「総合内科」ではない。各専門科がそろっていて、さらに総合内科があるというのではなく、専門科がそろってないので仕方なく雑多な疾患を担当している。一時「なんでも内科診療日誌」にしたが、それも変かと思って「総合内科診療日誌」に戻した。若い先生方には、院内で教育できないので、各分野の学会・研修会に行くように勧めている。大学病院からの応援医師に相談することも多い。診断の幅は広くしているが、治療できる疾患の幅は狭いので、どの疾患をどの病院(先生)に紹介すべきかを常に考えている。最近若い先生は内分泌の専門医に直接相談できるようになったそうだ(Cushingの若い男性で)。優秀ですね。