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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

98歳の心不全

2023年03月03日 | Weblog

 1月末に98歳女性が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で当院感染病棟に入院していた。

 地域の基幹病院循環器内科に通院していた。心不全で入退院を繰り返していたそうだ。胸部CTでコロナとしても肺炎ははっきりしなかったが、胸水貯留を軽度に認めた。

 コロナそれ自体としてはあまり問題なさそうだったが、心不全も悪化が危惧された。入院時から血圧が70~90mmHgと低めで推移した。循環器内科からは、Ca拮抗薬(ベニジピンとベラパミル)、ARB(カンデサルタン)、利尿薬(アゾセミド60mg)が処方されていた。

 ベニジピンを休止したが、血圧は低く、カンデサルタンも休止した(後で減量で再開)。ベラパミルも減量したが(3錠から2錠/日へ)、洞調律から心房細動になって戻した。

 心房細動が続き、抗凝固薬(慢性腎臓病もありワーファリン)を開始して、1.5mg/日でいい感じのPT-INRになった。ベラパミルが処方されてので、発作性心房細動があったようだが、抗凝固薬は処方されていなかった。

 なんとか隔離期間を過ぎて、自宅退院になった。処方を調整したことを診療情報提供書に記載して、次回受診時に持参してもらうことにした。

 

 その後、救急隊(隣の隣の町)からこの患者さんの搬入依頼が来た。急に呼吸困難を訴えて、要請があったという。コロナは治癒しており、循環器内科に通院しているので、そちらに依頼して下さいと伝えた。

 すると、もう基幹病院には連絡していて、受け入れできなかったという。コロナになったばかりということが引っかかったのか、入院ベットがないということかわからない。

 まず心不全の悪化だが、98歳だと遠方の循環器専門病院へ当たって下さいとも言い難い。当院に来てもらうことにした。

 画像では肺水腫・うっ血、胸水貯留があって、心不全の悪化で間違いなかった。ただ心電図は心房細動に加えて、それまでなかった完全左脚ブロックになっていた。ST-T変化が判読し難い。

 BNP5799.8は予想を大きく上回ったが、想定はできた。トロポニンIが22722.0と著明に上昇していた。CK(-MB)・AST・LDHの心原性酵素も上昇している。急性心筋梗塞を発症した可能性がある。

 家族と相談したが、当院でできる範囲でということで、そのまま診ることにした(病状悪化時はDNAR)。フロセミド静注とフロセミド点滴静注を行った。血圧は80~90mmHg台を保ったので(その後90~100mmHg)、ドブタミンは投与しないで経過をみた。

 初日に十分な尿量が出たが、2日目3日は思ったほどでなくて心配したが、その後は尿量が確保できた。胸部X線で胸水はまだあるが減少して、浮腫もとれて皺が見られるようになった。

 心エコーで診てもらうと、左室全体がhypokinesisで、EF(Ejection fraction)は正確には出せないが25%程度となっていた。以前の状態がわからないが、三枝のどれかが閉塞したのではなく、全体的に心筋障害が起きたのだろうか。

 今のところ、古典的な治療(年齢に合っている?)でもなんとかなりそうだが、専門病院だとどういう最新の治療になるのだろうか。

 

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