なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

膝関節炎~偽痛風でいいのでは

2020年06月15日 | Weblog

 4月下旬に90歳女性が、県内有数の総合病院救急科から当院外科に転院していた。その1か月前に救急搬入されたとあるが、なぜ当地域の病院ではなく、遠方に行ったのかわからない。当院を含めて受け入れできなかったのかもしれない。

 発熱・敗血症性ショックと診断されて、血液培養で口腔内常在菌が検出されていた。口腔内衛生状態不良とも記載されていた。口腔外科で6本の抜歯を行ったが、それでも口腔内衛生状態は不良とある。

 経過中にABPC/SBTによる薬疹の発症があり、CTRX+CLDMに変更したとある。また右膝関節の偽痛風の発症もあり、関節穿刺とアセトアミノフェン、湿布で軽快治癒したとある。

 腎機能障害(eGFR 30)があるのでNSAIDを避けたのだった。アセトアミノフェンで関節炎は治まらないので、関節穿刺と湿布がく効いたのだろう。関節炎を繰り返すことがあるので、この記載を参考としていただければ幸いですとある。

 

 自宅退院を目指す、リハビリ目的の転院だった。当院転院時の検査では炎症反応は陰性だった。1か月くらいのリハビリで自宅にもどれればという予定だったはずだ。

 ところが、転院1週間くらいで発熱と膝関節痛が発症した。炎症反応も上昇した(CRP 20前後~30弱)。アセトアミノフェンが開始されたが、関節痛がひどくトラマールも使用していた。

 きちんと血液培養2セットと尿培養が提出されて、抗菌薬も開始された。培養で有意な菌は検出されず、抗菌薬を使用しても、発熱と、炎症反応の上昇は変わりなかった。

 5月初めに整形外科の診療応援できている先生(膝関節の専門医)に相談していた。両側膝関節の化膿性関節炎として手術(戦場とドレナージ)が行われた。

 しかし、その後も発熱・炎症反応の上昇は変わらず、抗菌薬はとっかえひっかえになっていった。メロペネム、ゾシン、レボフロキサシン、ミノマイシン、そしてバンコマイシンが使用されていた。

 膝関節液の培養も陰性だったが、整形外科医からは陽性率が低いのでそうでしょう、と言われたそうだ(確かに陽性率は低いが)。バンコマイシンを使用していたことから、AST会議の話題になった。上げてきたのは薬剤師さんで、仕事柄バンコマイシンの血中濃度の話をしたが、聞いていないようですが、とも言っていた。膝が痛くて泣いています、ということだった。

 患者さんはしだいに弱っていって、食事摂取ができず、高カロリー輸液が行われていた。経過をまずカルテベースで確認して、患者さんを診に行った。案外ちゃんと話はできる。左膝関節の症状は軽快していたが、右膝関節の熱感・腫脹は続いている。

 

 これまでの経過から、これは偽痛風でいいのはと思われた。これほど長期に症状が出続けるかという疑問はあったが。

 主治医の外科医に、偽痛痛の治療を追加しませんか、と話してみた。腎機能障害があるのでNSAIDsは使用しがたく、治療はプレドニンになるので感染症だと裏目に出ますが、とも伝えた。

 ここまで来ている(悪化)ので、もう何でもやると言われた。偽痛風のプレドニン投与量の基準はないが、15mg/日から開始してもらった。

 プレドニン投与開始から2~3日で解熱して、炎症反応も改善してきた(CRP 4)。昼だけ出していた食事(嚥下調整食3)をそれまで数口程度だったが、ほとんど摂食できるようになった。

 クロストリディウム感染症の発症や(メトロニダゾールを内服可能)、カテーテル関連血流感染と思われる発熱があり(カテーテルは抜去)、まだ不安定な要素はあるが、何とかなりそうだ。

 膝関節は変形性膝関節症の所見があり、右膝関節内に石灰化がある。

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