内科外来に通院している80歳男性は、泌尿器科にも前立腺肥大症(過活動性膀胱も)で通院していた。
肉眼的血尿があり、泌尿器科で腹部単純CTを行った。腎泌尿器には特に異常はなかったが、思いがけず肝臓内に腫瘤を認めた。症状はなかった。
泌尿器科から外科外来に紹介された。現在外科は非常勤の外来しかないが、紹介したのは以前当院に在籍していた外科医だった。
腫瘍マーカーの提出と腹部造影CTが行われた。腫瘍マーカーはAFPは正常域で、PIVKA-2が2050と高値だった。(CEAは正常域だが、CA19-9が320と高値。B型・C型肝炎は陰性。)
造影CTの放射線科読影レポートは「肝左葉S4に腫瘤を認める。高吸収域と低吸収域を認め、不均一な造影効果を有し、肝細胞癌に一致する」だった。
がんセンターに紹介され、手術予定となった。この前外来を受診した時に、今週入院して手術予定です、と報告があった。
この患者さんは降圧薬で血圧は安定していた。問題はいっしょに通院していた妻で、名前をいうと看護師さんたちは全員知っている方だった。
こじれた身体表現性障害で、心因性多飲症もあった。何度も体調不良を訴えて入院していた。その妻の診察に30分近くを要し、その後夫の方は血圧だけ確認して処方継続となってしまっていた。
妻は肥満と胸髄症術後などで介護が必要であり、認知症の進行もあった。家族会議の結果、精神科病院通院から入院となった。やっと介護(身体的・精神的)から解放されて一息ついたところで癌が見つかった、ということになる。