3月5日(火)の午前中は救急当番・発熱外来担当をしていた。3月2日から発熱が続き、咽頭痛・咳と倦怠感があるという29歳女性が母親の車で受診した。
前日の3月4日に市内の病院(隣りの市)を受診して、コロナとインフルエンザの検査は陰性だった。家族5人に発熱のある人はいない。子供が小さいので、それらにかかっているか確かめたかったそうだ。
倦怠感と胸部苦悶感があり、同日の夜間に地域の基幹病院を受診した。検査で異常ないといわれたというが、詳しい内容はわからない。
発熱外来なので、自動的にコロナとインフルエンザの迅速検査が行われたが、両者陰性だった。症状は上気道症状だが、倦怠感と胸部苦悶感が気になった。酸素飽和度は98%(室内気)で問題はない。
そこまでは車に乗っていたので、病院内に入ってもらって検査することにした。すると発熱外来担当の看護師から、血圧が68mmHgという報告があった。車椅子に座っていたが、すぐに横臥させると血圧は90mmHg台になった。一瞬ウイルス性心筋炎が頭に浮かんだ。心電図は洞性頻脈以外はまったく正常だった。
症状は発熱・咽頭痛・咳で上気道症状だったが、発熱した時から下痢(水様便)が続いているという。嘔気はなく、腹部は下腹部にやや重苦感がある。
そうなると下痢による脱水症での血圧が低下と思われた。食事摂取低下も続いている。それなら点滴すれば何とかなると思ったが、それではなかった。
血液検査で白血球37600・CRP25.0と著明に炎症反応が上昇している(どちらも検査室から異常値として報告)。検査室の血液検査担当の技師さんに白血球分画を診てもらったが、芽球はなく、顆粒球が97%だった。
結膜を見て貧血と思われたが、Hb9.0g/dl(MCV74.7)で鉄欠乏性らしい。血小板は22.5万と正常域だった。血液疾患ではないようだ。肝機能障害(AST 40・ALT 141・ALP 141・γ-GTP 106・総ビリルビン3.4)と腎機能障害(血清クレアチニン5.49mg/dL)がある。
頸部~腹部CTで頸部に小リンパ節腫脹があるが、耳鼻咽喉科領域に異常は認めない(耳鼻咽喉科医にCTを診てもらった)。
胸部は両側肺の下葉背側にわずかに浸潤影を疑うような所見はあるが、それだけが原因とは思えない(単に水分分布による陰影の可能性もある)。
尿は導尿してもわずかしか採取できず、沈査までの検査ができず尿路感染症とは断定できない。腹部は両側腎臓に異常はなく、それ以外にも肝胆道系や腸管に異常はなかった。
乳酸リンゲル500mlの2本目が入っていても、血圧が70mmHg台になった。だるそうにしているが会話はできる。
細菌感染症による敗血症性ショックだが、感染巣がわからない。なにしろ年齢が若すぎるし、とても当院で責任をもって治療できる自信はない。
地域の基幹病院に連絡した。救急搬送は地域医療連携室に連絡して、担当科に回してもらうことになっている。救急科の先生にお願いします、と伝えた。すると、すぐ送ってくださいといわれました、という。
すぐに救急隊を呼んで、ありがたく搬送させてもらうことにした。点滴全開で、救急の看護師さんに救急車内で次の点滴に切り替えてもらうことにした。
29歳女性と敗血症性ショックとしか、Dr.に伝わっていないはずで、年齢の点で問題なく受けてもらえたのかもしれない。検査結果をみると驚かれるのではないかと思ったが、重症を見慣れている先生だとそれほどでもないか。
血管(静脈)が見えにくい方で、手背の静脈への点滴も上手な看護師さんが3回目の穿刺で入れた。採血は無理で動脈からの採血となった。血液培養2セットは動脈からの採血になってしまう。採取しないで搬送した。
先方ではCVカテーテルを挿入して、そこから採血するのかもしれない。細菌検査室があり、院内で菌名・感受性がわかる病院なので、当院(細菌検査は外注)で施行するより結果が早い。
(後日記)
3月11日途中経過の報告がきた。血圧低下は下痢の持続と水分摂取不足によるhypovemic shockで、敗血症性ショックではないとされた。敗血症ではあるそうだ。感染源は不明ともされていた。