ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭

料理にワインを
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 樋口誠

一期一会みたいな・・・・・

2015年03月17日 02時08分33秒 | ワインの事
ワインとの「忘れられない出会い」っていうのがあって、それが実はワインから人を遠ざける理由になったりするものです。


「ある時に○○というワインを飲んだが、以降飲むワインはソレを超えられない」「あそこで飲んだあのワインが人生史上最高のワインで他のワインが美味しく感じない」

更には「あのワインをずっと探しているのだが見つからない」「同じワインを見つけたがコンディションが良くないのか、美味しくない」などとなります。

そういう人は少なくありません。


しかし、人の出会いと一緒でワインとの出会いも「一期一会」です。


全く同じワインを「同じ環境」「同じ温度」「同じグラス」「同じ熟成度合」「同じ人と」「同じ季節」「同じ料理と」飲むことはありません。

ましてや自分自身が過去と違っているんです。

体調も年齢も含めて違うんですね。


私は「アレと同じワインを探せますか?」と言われると「同じ味わいを期待するならやめた方が良い」と答えます。

それは新しい出会いを拒否しているのと同じ部分もありますし、別れた彼女を追い続けるのにも似ています。


ソムリエ的には、というか私的には「新しい出会いのワインをより美味しい環境で愛でて欲しい」と思うのです。

あるいは「そのワインと何年も前に出会ったのなら、同じワインを見つけても同じ味わいと思わず、初めてのワインと思うべし」とサジェストします。

吉田拓郎さんの「イメージの詩」で語っています。

  古い船には新しい水夫が乗りこんでいくだろう。
  古い船を今動かせるのは古い水夫じゃないだろう。
  何故なら古い船も新しい船のように新しい海へ出る。
  古い水夫は知っているのさ、新しい海の怖さを・・・・



私はなるべく「そのワインと同じようにサーブ出来れば」と努力はしますが、そうは問屋が卸してくれないのですね。


以前ワシントン州のワイナリー巡りをした時にシアトルでイチローさんのプレーを見ましたが、その時に彼は三塁打を打ってくれました。

素晴らしい感動です。

打って走って滑り込んで・・・・

しかし彼の真骨頂は単打にありますし、元来長打率は高くありません。

これからも三塁打を打つことは「あるかも知れない」

しかし、今望むのは単打を重ねて塁に出て欲しい。
いや、試合に出て欲しい。

というのが私の望みです。


「忘れられないワインとの出会い」は大切な思い出です。

それはそれで大事にしながら、新しいワインを「より美味しく」楽しんで頂きたいな、と思います。


                  樋口誠