駿台ヒューストン校です。
かつての夏目漱石のように、カズオ=イシグロは人間の本質に迫る作品を発表し続けています。ただ、アプローチの仕方はずいぶんちがいます。近年の彼は「人間に近いが人間そのものではない」ものを主人公にすることによって「人間とは何か」を問いかけているのです。
カズオ=イシグロの評価を不動のものにした「わたしを離さないで」では臓器提供のためにつくられたクローン人間、そして最新作「クララとお日さま」ではAF、つまり子どもの友人になるために作られたAI搭載ロボットが主人公です。かれら「人間の周縁」にいるものたちは人間以上に感情豊かで節度や忠誠心があるように描かれています。それでも最終的には人間として扱われないので、読後に割り切れない思いが残ります。
人間らしい感情を持つことが人間である条件だと言われてきましたが、人工知能が感情を学習するのは時間の問題です。クローンにも感情はあります。それでは人間とそうでないものを分けるのは何なのでしょうか。いつか周縁にいるものにも「人権」が認められる時代がやってくるのでしょうか。
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