欧州の財政危機や米国の債務上限引き上げを巡る混乱を背景に、金などと並び「安全資産」とされるスイスフランにはこれまで買いが殺到。産業界などから中銀に対応を求める声が強まっていた。
上限金利引き下げは2009年3月以来、2年5ヵ月ぶり。3日に定例の金融政策決定会合は予定されておらず、緊急決定した。金融市場への資金量を増やす量的緩和も実施。
主要国中銀では、欧米財政危機に伴う通貨問題に対応して利下げに動いた初の例となる。
政策金利の誘導目標の下限をO%とする事実上のゼロ金利政策は導入済みで、今回は上限下げで同政策を強化。
さらにスイスフラン高阻止の効果を高めるため、これまで300億スイスフラン(約3兆円)程度だった準備預金額を約2・7倍の800億スイスフランまで増やす。この目標に達するまではオペによる資金吸収を実施せず、量的緩和を拡充する。
スイス国立銀は3日発表の声明で「スイスフランは非常に過大評価され、スイスの経済成長と物価安定を脅かしている」と指摘。「現在の金融情勢を容認できず、スイスフラン高に対抗する措置をとる」と説明した。
同銀は昨年、大規模なスイスフラン売り・ユーロ買いの為替介入を実施したが、スイスフラン高に歯止めがかからず、外貨資産で260億スイスフランの損失を出した。
3日の声明では「外為市場を引き続き注視し、必要があれば追加措置を講じる」との方針を示したが、損失覚悟で介入を再開できるかは不透明だ。
(ジュネーブ=藤田剛)