VW 車台・部品を共通化 現代自 FTA追い風に攻勢
【フランクフルト=下田英一郎、古谷茂久、ソウル=尾島島雄】
欧州自動車市場で、小型乗用車を巡る世界大手の販売競争が激しくなりそうだ。攻防ラインは販売価格1万ユーロ(約106万円)。
韓国・現代自動車傘下の起亜自動車が来年初頭に9990ユーロの小型車「リオ」を発売。独フォルクスワーゲン(VW)は先手を打ち、今年末にリオよりさらに安い小型車「アップ」を投入する。日本車メーカーは円高克服などが課題だ。
VWは開催中の「フランクフルト国際自動車ショー」で、アップ(9850ユーロ)を発表した。背景には、欧州で急速にシェアを拡大する韓国車メーカーの脅威がある。
2011年1~8月の現代自と起亜の欧州25カ国での販売シェアは4・9%で、前年同期比O・4ポイント上昇。独ダイムラーと並ぶ8位だ。
一方、トヨタ自動車など日本車メーカー6社合計のシェアはO・5ポイント低下し、11・3%。欧州最大手のVWは23%と韓国勢を引き離しているが、低価格を武器に日本車のシェアを奪いながら追い上げる韓国勢は不気味な存在だ。
起亜自動車は新型リオを韓国から輸出し、欧州で年8万台以上を販売する計画。リオより小型の 「ピカント」は8990ユーロとより安い。従来のVWの最安値モデルは「ポロ」の1万2450ユーロ。現代自の主力小型車「i10」(1万209ユーロ)より2干ユーロ以上高い。
韓国車メーカーには7月に欧州連合(EU)との間で発効した自由貿易協定(FTA)も追い風。現代自が欧州で来月発売する中型ワゴン「i40」は10%の関税が段階的に廃止されるFTAを活用。
値ごろな小型車「i30」はチェコエ場で生産するなど柔軟な戦略を取れる。梁承錫(ヤン・スンソク)社長は「i40の投入を足掛かりに12年は50万台(10年比4割増)を目指す」と意気込む。
VWも傘下のシュコダ(チェコ)やセアト(スペイン)などとアップの車台や部品を共通化しコスト競争力を高める。アップの低コスト化は19・9%を出資するスズキに協力してもらう予定だったがスズキが提携解消を申し入れ困難な情勢だ。
日本勢、円高克服課題に
円高や自由貿易協定(FTA)での出遅れなど、逆境下での挑戦となるのが日本車メーカーだ。マツダはハイブリッド車並みに燃費を改善したディーゼルエンジンなどを積む小型多目的スポーツ車(SUV)「CX-5」を国際自動車ショーで発表。
来年初頭にも欧州で発売する。ホンダも新型「シビック」、トヨタは新型「ヤリス(日本名ヴィッツ)」など主力モデルを相次ぎ投入し欧州市場をテコ入れする。
マツダの山内孝社長はCX-5の欧州販売を年5万台と見込むが、採算上は「現在の円高水準で厳しい戦いが続く」。同社は世界販売に占める輸出比率が7割超で円高のマイナス影響を受けやすい。
2011年3月期までの3年間で為替などによる減益要因は3千億円を超えたという。
日産自動車は提携する独ダイムラーから小型高級車の車台を供与してもらい、高級車「インフィニティ」のテコ入れを急ぐ。
高級車も今後の競争は小型車が焦点で、独アウディや独BMWも強化する方針。日産はダイムラーから技術供与を受け、競争に出遅れないようにする。
生産拠点などは未定だが、カルロス・ゴーン社長は「今の円高では日本の外で作らざるを得ない」と話す。
日本自動車工業会の志賀俊之会長は9月中旬、欧州連合(EU)高官や欧州議員と会談し、日本との経済連携協定(EPA)の早期締結を訴えた。
だが伊フィアットのセルジオ・マルキオーネ最高経営責任者など一部欧州車メーカーに反対の声もある。日本車メーカーは 「欧州勢や韓国勢と同じ競争の土俵に上がるまで課題が山積み」(マツダの山内社長)だ。
【フランクフルト=下田英一郎、古谷茂久、ソウル=尾島島雄】
欧州自動車市場で、小型乗用車を巡る世界大手の販売競争が激しくなりそうだ。攻防ラインは販売価格1万ユーロ(約106万円)。
韓国・現代自動車傘下の起亜自動車が来年初頭に9990ユーロの小型車「リオ」を発売。独フォルクスワーゲン(VW)は先手を打ち、今年末にリオよりさらに安い小型車「アップ」を投入する。日本車メーカーは円高克服などが課題だ。
VWは開催中の「フランクフルト国際自動車ショー」で、アップ(9850ユーロ)を発表した。背景には、欧州で急速にシェアを拡大する韓国車メーカーの脅威がある。
2011年1~8月の現代自と起亜の欧州25カ国での販売シェアは4・9%で、前年同期比O・4ポイント上昇。独ダイムラーと並ぶ8位だ。
一方、トヨタ自動車など日本車メーカー6社合計のシェアはO・5ポイント低下し、11・3%。欧州最大手のVWは23%と韓国勢を引き離しているが、低価格を武器に日本車のシェアを奪いながら追い上げる韓国勢は不気味な存在だ。
起亜自動車は新型リオを韓国から輸出し、欧州で年8万台以上を販売する計画。リオより小型の 「ピカント」は8990ユーロとより安い。従来のVWの最安値モデルは「ポロ」の1万2450ユーロ。現代自の主力小型車「i10」(1万209ユーロ)より2干ユーロ以上高い。
韓国車メーカーには7月に欧州連合(EU)との間で発効した自由貿易協定(FTA)も追い風。現代自が欧州で来月発売する中型ワゴン「i40」は10%の関税が段階的に廃止されるFTAを活用。
値ごろな小型車「i30」はチェコエ場で生産するなど柔軟な戦略を取れる。梁承錫(ヤン・スンソク)社長は「i40の投入を足掛かりに12年は50万台(10年比4割増)を目指す」と意気込む。
VWも傘下のシュコダ(チェコ)やセアト(スペイン)などとアップの車台や部品を共通化しコスト競争力を高める。アップの低コスト化は19・9%を出資するスズキに協力してもらう予定だったがスズキが提携解消を申し入れ困難な情勢だ。
日本勢、円高克服課題に
円高や自由貿易協定(FTA)での出遅れなど、逆境下での挑戦となるのが日本車メーカーだ。マツダはハイブリッド車並みに燃費を改善したディーゼルエンジンなどを積む小型多目的スポーツ車(SUV)「CX-5」を国際自動車ショーで発表。
来年初頭にも欧州で発売する。ホンダも新型「シビック」、トヨタは新型「ヤリス(日本名ヴィッツ)」など主力モデルを相次ぎ投入し欧州市場をテコ入れする。
マツダの山内孝社長はCX-5の欧州販売を年5万台と見込むが、採算上は「現在の円高水準で厳しい戦いが続く」。同社は世界販売に占める輸出比率が7割超で円高のマイナス影響を受けやすい。
2011年3月期までの3年間で為替などによる減益要因は3千億円を超えたという。
日産自動車は提携する独ダイムラーから小型高級車の車台を供与してもらい、高級車「インフィニティ」のテコ入れを急ぐ。
高級車も今後の競争は小型車が焦点で、独アウディや独BMWも強化する方針。日産はダイムラーから技術供与を受け、競争に出遅れないようにする。
生産拠点などは未定だが、カルロス・ゴーン社長は「今の円高では日本の外で作らざるを得ない」と話す。
日本自動車工業会の志賀俊之会長は9月中旬、欧州連合(EU)高官や欧州議員と会談し、日本との経済連携協定(EPA)の早期締結を訴えた。
だが伊フィアットのセルジオ・マルキオーネ最高経営責任者など一部欧州車メーカーに反対の声もある。日本車メーカーは 「欧州勢や韓国勢と同じ競争の土俵に上がるまで課題が山積み」(マツダの山内社長)だ。