ソフト・ハードを融合
「大震災やハッカー攻撃など様々な困難があったが、もう終わった話だ」 独ベルリンで開かれた欧州最大の家電見本市 「IFA」。ストリンガー会長兼社長は8月31日の記者会見を“復活宣言”で切り出した。
約6000平方メートルと広大なブースの中心に置かれたのはこの日発表したタブレット。パソコン「VAIO」やスマートフォン「エクスペリア」、携帯型ゲーム機「プレイステーション・ヴィータ」などあらゆる新製品を並べ、映画や音楽などソニーが得意とするコンテンツの利用に便利な機能をアピールした。
「アップルに映画はないしサムスンにミュージシャンはいない。ソニーはすべてを持っている」(ストリンガー氏)。消費者が保有するソニー製品は世界で約8億台。映画や音楽、ゲームなどのソフトは年20億本が売れる。その「接点」を収益に変えることがソニー最大の課題と言っていい。
ストリンガー氏が業績不振に陥ったソニーの立て直しを託されて、会長兼CEOに就いたのは2005年6月。エレクトロニクス部門を中心とするハードの固定費削減に大なたを振るってきた。
海外のテレビ工場などを次々に売却し、製造拠点数は05年の65から直近では42まで削減。コストの安い海外企業への生産委託に切り替えた。短期的な損失発生はいとわず、6年間で5000億円近い構造改革費用をつぎ込んだ。
構造改革進む
部品や材料の調達先は1200社以下へと半減させ、1社あたりの購買規模を増やした。大型の 「ヒット商品」はなくても連結営業利益は11年3月期に1998億円まで回復。12年3月期は「大震災の影響がなければ3OO億~4000億円」 (ストリンガー氏)を見込めたという。
縦割り意識が強い部門間の壁を取り払うことにも腐心した。社内の改革に苦闘する間、市場は猛烈なスピードで変化した。スマートフォン 「iPhone」に続き 「iPad」もヒットさせた米アップルが勢いを加速。交流サイト「フェイスブック」が7億人もの会員を集めた。
「ソニータブレット」の発売で「モバイル機器の世界で欠けていたピースが埋まった」(ストリンガー氏)。だがアップルが多くの顧客を囲い込み、韓国サムスン電子からも1年近く遅れた製品を、どれだけの消費者が受け入れてくれるのか未知数だ。
スマートフォンとそれに続くタブレットの普及は、パソコンや携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラといった個々の機能を包含し、従来の市場を取り込む形で成長を続けている。
多彩なデジタル製品をそろえるソニーの強みが、製品開発の効率といった面からみて弱みに転じる可能性もある。
11年3月期に金融は1188億円、映画は387億円、音楽は389億円の営業利益を稼いだ。一方、売上高で全体の7割を占めるエレクトロニクス部門は385億円どまり。主力のテレビ事業は7期連続の赤字だ。
来年2月で70歳を迎えるストリンガー氏は世代交代を強く意識している。
同氏が今年春、「後継者の筆頭」と公言した平井一夫副社長は、「『ソニーらしい製品が出てこない』というフレーズを覆し、『ソニーは変わった』と言ってもらえるような製品やサービスを提供していく」と強調する。
それができなければソニー再興は遠のく。
「大震災やハッカー攻撃など様々な困難があったが、もう終わった話だ」 独ベルリンで開かれた欧州最大の家電見本市 「IFA」。ストリンガー会長兼社長は8月31日の記者会見を“復活宣言”で切り出した。
約6000平方メートルと広大なブースの中心に置かれたのはこの日発表したタブレット。パソコン「VAIO」やスマートフォン「エクスペリア」、携帯型ゲーム機「プレイステーション・ヴィータ」などあらゆる新製品を並べ、映画や音楽などソニーが得意とするコンテンツの利用に便利な機能をアピールした。
「アップルに映画はないしサムスンにミュージシャンはいない。ソニーはすべてを持っている」(ストリンガー氏)。消費者が保有するソニー製品は世界で約8億台。映画や音楽、ゲームなどのソフトは年20億本が売れる。その「接点」を収益に変えることがソニー最大の課題と言っていい。
ストリンガー氏が業績不振に陥ったソニーの立て直しを託されて、会長兼CEOに就いたのは2005年6月。エレクトロニクス部門を中心とするハードの固定費削減に大なたを振るってきた。
海外のテレビ工場などを次々に売却し、製造拠点数は05年の65から直近では42まで削減。コストの安い海外企業への生産委託に切り替えた。短期的な損失発生はいとわず、6年間で5000億円近い構造改革費用をつぎ込んだ。
構造改革進む
部品や材料の調達先は1200社以下へと半減させ、1社あたりの購買規模を増やした。大型の 「ヒット商品」はなくても連結営業利益は11年3月期に1998億円まで回復。12年3月期は「大震災の影響がなければ3OO億~4000億円」 (ストリンガー氏)を見込めたという。
縦割り意識が強い部門間の壁を取り払うことにも腐心した。社内の改革に苦闘する間、市場は猛烈なスピードで変化した。スマートフォン 「iPhone」に続き 「iPad」もヒットさせた米アップルが勢いを加速。交流サイト「フェイスブック」が7億人もの会員を集めた。
「ソニータブレット」の発売で「モバイル機器の世界で欠けていたピースが埋まった」(ストリンガー氏)。だがアップルが多くの顧客を囲い込み、韓国サムスン電子からも1年近く遅れた製品を、どれだけの消費者が受け入れてくれるのか未知数だ。
スマートフォンとそれに続くタブレットの普及は、パソコンや携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラといった個々の機能を包含し、従来の市場を取り込む形で成長を続けている。
多彩なデジタル製品をそろえるソニーの強みが、製品開発の効率といった面からみて弱みに転じる可能性もある。
11年3月期に金融は1188億円、映画は387億円、音楽は389億円の営業利益を稼いだ。一方、売上高で全体の7割を占めるエレクトロニクス部門は385億円どまり。主力のテレビ事業は7期連続の赤字だ。
来年2月で70歳を迎えるストリンガー氏は世代交代を強く意識している。
同氏が今年春、「後継者の筆頭」と公言した平井一夫副社長は、「『ソニーらしい製品が出てこない』というフレーズを覆し、『ソニーは変わった』と言ってもらえるような製品やサービスを提供していく」と強調する。
それができなければソニー再興は遠のく。