気になる人がいる。
その人は私のことなんか相手にもしてくれない。
だけどその人のことがどうしても気になる。
頭から離れない。
切ない
切ないよ。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう?
あの人は私に気がない。
それは分かっているけれど
どうしてもあきらめられない。
告ってみようか?
その後のことが怖い。
もうあの人に会えなくなるのが怖い。
気まずくなるのが耐えられない。
今までの経験で知っている。
きっとまたそうなる
くじけそうだよ
もう忘れてしまおうか
あの人のこと
嫌いになってみるとか
出来ないくせに
そんなことを考えてみる。
忘れられない
やっぱり本当のことを話そう
あの人に
嫌われてもいい
会えなくなっても耐えられる
今の苦しいままはもう嫌だ
私の今の気持ちを、
伝えよう。
…そして…、
父の転勤が決まった
転校だ。
会えなくなる前に告白をしようと思った
駄目なら駄目。
どっちにしてももう顔合わせることもないんだし。
「好きです」
言った。
「ありがとう」
あの人は言った。
いきなり抱きしめられた。
「良かった」
あの人は言葉を続けた
「片想いだと思ってた」
夢だった。
いや、夢の中にいるようだった。
「ごめん、いきなり」
あの人は腕を伸ばし、私の体と距離をおいた
「でも、ほんと?」
「うん」
私は答えた。
「ずっと好きだった。
だから良かった」
でも、
「転校するって本当?」
そうなんだ。私、この人と会えなくなるんだ。もうすぐ
「うん」
「出発は?」
「明日」
「明日!?…そんな急な…」
「だから今日、告白した」
「…そうなんだ…」
「…うん」
……
「なんだかごめん」
「なんで」
「本当は告白なんかしない方が良かったのかも知れない…」
私は正直な気持ちを伝えた。
「そしたらなにもなく、あなたにも迷惑かけないで、いい思い出になれた」
「なに言ってんだよ。手紙書く、電話する。遠距離しようよ」
「…無理。だって私たち子供だよ。離れたら気持ちも離れる。近い人にまた恋をする!」
「そんなこと…」
このとき…そんなこと、ない。ときっぱり言い切っていたら、私達どうなってたかな?
「じゃあね。本当にありがとう。あなたとの時間は本当に楽しかった」
「ちょっとっ…」
涙なんか流さない。
そう思っていたけれど、頬の上を熱いものが流れるのを感じていた。
走った。
めいっぱい走った。
誰も追いつけないくらい我武者羅に。
教室までの運動場を、廊下を、我武者羅に走った。
みんな私をすごい目で見ていたと思う
でもそんなこと忘れていた。
「あぁ、恋が終わった」
その事だけが私の胸の中を駆け巡っていた。
自分の教室の席に着いた。
もう涙も枯れたかな?…
…そうでもない。私は机に顔を伏せた。
それからどれくらい経っただろう
「弱虫!」
あの人が私に叫んだ。
「えっ?」
「ちゃんと終わってもいない。始まってもいないだろ!? 始めようよ、勇気出して!」
ちょっとみんな見てるよ。こんなところでやめようよ。
教室の中、席に座っている私に、あの人がつかつかと歩いて来る。
「やめようよ」
「いや止めない。俺のこと嫌いか?」
「恥ずかしいよ」
「ちゃんと答えろ」
「…さっき言ったじゃん」
「だったら逃げるな。俺からも、自分からも」
「なんなの?」
そうだ、この人ってこういう人。私がいちばん解ってたんじゃん。だから好きになったんだ。
「無理だよ…あなたも分かってるでしょう?」
「俺には全然分からないね。今の気持ち無視してその後やっていけるかってんだ」
「もう終わりにしようよ」
「だから、始まってない」
「…そうだけど」
「俺はお前が好きだ。この気持ちは抑えられない」
教室にいた全員が、一斉に私たちを好奇の目で見た。
「ちょっとぉ…恥ずかしい」
「そんなこと構うもんか。俺とお前の一生がかかってるんだ」
そうだったのかな?今思うとそんなこと…とも思う
「お前が明日からこの学校に来なくなっても、この気持ちは変わらん!」
「…絶対?」
「ああ」
「じゃあ、信じる。毎日電話して」
「分かった。いや、そのつもりだ」
「そう」
クラスメートのみんなが一斉にはやし立てる。
一部の馬鹿共なんか、胴上げなんかしようとしやがる。
「私、今日のことは忘れないね」
「あぁ、これからもそういう日がどんどん増えるんだよ」
私、あなたのこと信じる。
だから、自分のことも信じてみるね。
いま、私は幸せだ。
あの日のことはよく覚えている。
今日のこと忘れない、と言ったのは嘘にはならなかったわけだ。
でも、信じる、あの人と自分を信じると言ったことは、嘘になったのだろうか。
私はあの人と一緒にはならなかった。
文通も電話も、半年ほどで途絶えた。
それは悲しいことだろうか
私は今、夫も子供もいる
もちろん旦那はあの人とは違う人だ
…思い出なのだ。
いまの私を形作っている、いい思い出。
もう一度言う。私はいま、しあわせだ。
いま幸せならば、全ての過去を肯定できる。
人間は都合のいい生き物だ
だから生きてゆける
今が全てだ。
過去はその肥やし、
なのだ。
大人の階段を上るたび
傷ついて 喜んで
残ったものは「今」「現在」
今がすべて
過去は過去
いつでも私はリフレッシュできる
想い出に出来る
今を満たそう
今までの私達を殺さないために
いい思い出にするために
私は歩き続ける。
その人は私のことなんか相手にもしてくれない。
だけどその人のことがどうしても気になる。
頭から離れない。
切ない
切ないよ。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう?
あの人は私に気がない。
それは分かっているけれど
どうしてもあきらめられない。
告ってみようか?
その後のことが怖い。
もうあの人に会えなくなるのが怖い。
気まずくなるのが耐えられない。
今までの経験で知っている。
きっとまたそうなる
くじけそうだよ
もう忘れてしまおうか
あの人のこと
嫌いになってみるとか
出来ないくせに
そんなことを考えてみる。
忘れられない
やっぱり本当のことを話そう
あの人に
嫌われてもいい
会えなくなっても耐えられる
今の苦しいままはもう嫌だ
私の今の気持ちを、
伝えよう。
…そして…、
父の転勤が決まった
転校だ。
会えなくなる前に告白をしようと思った
駄目なら駄目。
どっちにしてももう顔合わせることもないんだし。
「好きです」
言った。
「ありがとう」
あの人は言った。
いきなり抱きしめられた。
「良かった」
あの人は言葉を続けた
「片想いだと思ってた」
夢だった。
いや、夢の中にいるようだった。
「ごめん、いきなり」
あの人は腕を伸ばし、私の体と距離をおいた
「でも、ほんと?」
「うん」
私は答えた。
「ずっと好きだった。
だから良かった」
でも、
「転校するって本当?」
そうなんだ。私、この人と会えなくなるんだ。もうすぐ
「うん」
「出発は?」
「明日」
「明日!?…そんな急な…」
「だから今日、告白した」
「…そうなんだ…」
「…うん」
……
「なんだかごめん」
「なんで」
「本当は告白なんかしない方が良かったのかも知れない…」
私は正直な気持ちを伝えた。
「そしたらなにもなく、あなたにも迷惑かけないで、いい思い出になれた」
「なに言ってんだよ。手紙書く、電話する。遠距離しようよ」
「…無理。だって私たち子供だよ。離れたら気持ちも離れる。近い人にまた恋をする!」
「そんなこと…」
このとき…そんなこと、ない。ときっぱり言い切っていたら、私達どうなってたかな?
「じゃあね。本当にありがとう。あなたとの時間は本当に楽しかった」
「ちょっとっ…」
涙なんか流さない。
そう思っていたけれど、頬の上を熱いものが流れるのを感じていた。
走った。
めいっぱい走った。
誰も追いつけないくらい我武者羅に。
教室までの運動場を、廊下を、我武者羅に走った。
みんな私をすごい目で見ていたと思う
でもそんなこと忘れていた。
「あぁ、恋が終わった」
その事だけが私の胸の中を駆け巡っていた。
自分の教室の席に着いた。
もう涙も枯れたかな?…
…そうでもない。私は机に顔を伏せた。
それからどれくらい経っただろう
「弱虫!」
あの人が私に叫んだ。
「えっ?」
「ちゃんと終わってもいない。始まってもいないだろ!? 始めようよ、勇気出して!」
ちょっとみんな見てるよ。こんなところでやめようよ。
教室の中、席に座っている私に、あの人がつかつかと歩いて来る。
「やめようよ」
「いや止めない。俺のこと嫌いか?」
「恥ずかしいよ」
「ちゃんと答えろ」
「…さっき言ったじゃん」
「だったら逃げるな。俺からも、自分からも」
「なんなの?」
そうだ、この人ってこういう人。私がいちばん解ってたんじゃん。だから好きになったんだ。
「無理だよ…あなたも分かってるでしょう?」
「俺には全然分からないね。今の気持ち無視してその後やっていけるかってんだ」
「もう終わりにしようよ」
「だから、始まってない」
「…そうだけど」
「俺はお前が好きだ。この気持ちは抑えられない」
教室にいた全員が、一斉に私たちを好奇の目で見た。
「ちょっとぉ…恥ずかしい」
「そんなこと構うもんか。俺とお前の一生がかかってるんだ」
そうだったのかな?今思うとそんなこと…とも思う
「お前が明日からこの学校に来なくなっても、この気持ちは変わらん!」
「…絶対?」
「ああ」
「じゃあ、信じる。毎日電話して」
「分かった。いや、そのつもりだ」
「そう」
クラスメートのみんなが一斉にはやし立てる。
一部の馬鹿共なんか、胴上げなんかしようとしやがる。
「私、今日のことは忘れないね」
「あぁ、これからもそういう日がどんどん増えるんだよ」
私、あなたのこと信じる。
だから、自分のことも信じてみるね。
いま、私は幸せだ。
あの日のことはよく覚えている。
今日のこと忘れない、と言ったのは嘘にはならなかったわけだ。
でも、信じる、あの人と自分を信じると言ったことは、嘘になったのだろうか。
私はあの人と一緒にはならなかった。
文通も電話も、半年ほどで途絶えた。
それは悲しいことだろうか
私は今、夫も子供もいる
もちろん旦那はあの人とは違う人だ
…思い出なのだ。
いまの私を形作っている、いい思い出。
もう一度言う。私はいま、しあわせだ。
いま幸せならば、全ての過去を肯定できる。
人間は都合のいい生き物だ
だから生きてゆける
今が全てだ。
過去はその肥やし、
なのだ。
大人の階段を上るたび
傷ついて 喜んで
残ったものは「今」「現在」
今がすべて
過去は過去
いつでも私はリフレッシュできる
想い出に出来る
今を満たそう
今までの私達を殺さないために
いい思い出にするために
私は歩き続ける。