おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

手を繋いでみましょうか~もう一度~

2006年07月28日 03時19分20秒 | 文章塾
 つい昨日、第9回へちま亭文章塾の奨励賞・共感賞・かんとう賞が発表されました。
 ついでに作者名も同時に発表です。
 残念ながら今回、僕はどの賞にもひっかかりませんでした。(ToT)

 各章の発表は↓のアドレスから。

 http://bunshoujuku.asablo.jp/blog/

 というわけでついに解禁!
 第9回へちま亭文章塾、お題「「殺し文句」から思いつく文章表現」・「2005年7月1日のへちま亭 1330「受容」・7月3日のへちま亭 1332「続・受容」・7月4日のへちま亭 1333「続々・受容」を読んで思いつく文章表現」

 ちなみに、
 「受容」
 http://hechima.asablo.jp/blog/2005/07/01/27340
 「続・受容」
 http://hechima.asablo.jp/blog/2005/07/03/27991
 「続々・受容」
 http://hechima.asablo.jp/blog/2005/07/04/28344
を、参照のこと。

 もう一度最初から書きます。お題「殺し文句」・「受容」両方。題名は『手を繋いでみましょうか~もう一度~』です!

 なお、今回ブログ掲載にあたり、文章塾投稿時のものから大分手を加えました。
 参考にさせていただいたコメントを書いてくださった皆様に感謝!です。ではどうぞ。



   『手を繋いでみましょうか~もう一度~』


 男の妻と子は容疑者によって全員殺害された。

 事件の犯人はすぐに逮捕された。しかし男の愛する家族は帰ってこない。
 男の生活は荒んでいった。
 掃除もしない。ゴミも出さない。仕事にはただ行くだけ。
 こんなことではいけないと、思いもしない。
 ただ、今の状況が受け容れられなかった。

 そんな状態のまま6年の歳月が流れた。
 男から全てを奪った者には、死刑の判決が下された。

 その頃男は、慰みをパソコンの中の世界に求めていた。
「何もかもが空疎です。今すぐにでも死にたい」
 チャットに何の脈絡もなくこんなコメントを書いた。

 すると電話がかかってきた。
「どうなさいましたか?」
 電話の向こうの優しい声に、いつしか男は全てを打ち明けていた。
 この相手・浅野と、男は会うことになった。

 当日、浅野は女性を連れて待ち合わせ場所にやってきた。
 挨拶も早々に、浅野は女性を紹介した。
「こちら、小石川律子さん」
 聞くと、この女性も家族全員を事故で亡くしたという。
「あの電話の後、小石川さんと知り合いましてね。あなたの話をしたら是非会いたいと」
 男は律子の顔を見た。決して美人ではないが、何となく亡くなった妻に似ている気がした。
 それから2人は、互いを襲った悲しい出来事を中心に話した。涙ぐみながら、話を聞きあった。
 その日は別れ、男は律子とまた会うこととなった。

 そして何度かデートを重ね、

 今日は何時間この人と話をしたろう、男がふと思った時、律子が口を開いた。
「再婚する気はありませんか」
「えっ?」
 突然の言葉に男は狼狽する。
「私、あなたのことが好きです。大丈夫、この二人が今より不幸になるなんてことはありませんから」
 なるほど、と男は思った。
 そしてその一言で、男は律子と一緒になることを決めた。
「指輪を買わないと」
「そんなもの要らないわ、ほら…」

 男は思った。
「地に足が着き、我に帰る余裕を持った時、初めて人は自分の置かれている状況を受容することができるのだ」