おっちーの鉛筆カミカミ

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The Death of LoveWorld

2008年10月02日 01時09分48秒 | 文章塾
※この作品は、8月9日アップの文章塾作品『カルロス』の続編です。
 それから、このあとアップする『The ReBirth of LoveWorld』は、この作品の続きにあたります。
 それでは、ごらんください。(^^)


   *  *  * 


  The Death of LoveWorld


丸い空が見える
ここは木々に囲まれた 森の空地

時々鼻を突く 湿った植物の臭い 土の臭い 虫の臭い 動物達の臭い
気温が高いから それらが鼻の周りにまとわり付くように感じる

風の音 木々のざわめき 遠くから鳥の声が聞こえる
ここが私の生まれた場所
私はずっと ここで生きてゆくはずだった


私はある日 人間の若い男と一緒に森を抜け出した
私に親はいなかった 仲間からは嫌われていた
男の誘いを断る理由はなかった
その頃から私は 恋という感情が妖精である私にもあるならば
それに心を奪われていたのかも知れない

その直後 私に仲間が出来た 全て人間だ
5人皆が冒険者であり 職人だった
彼らは 男の仲間だった
私を仲間だと 皆が言った
初めてそれを面と向かって言われた時 どうにもならない感情が身体からあふれて
顔がカッと熱くなり 目から水がどうどうと零れた
水が 鼻の奥からも流れた
泣くな と言われた
意味がわからなかった
その日 私がいつの間にか眠りにつくまで その水はどうしようもなく流れ続けた
翌朝 私は男の腕の中で太陽の光を見た

そのあと
私は男と仲間を守るために戦い続けた
私の出来る限りの能力を使い 闘った
ある時は盗賊と またある時は竜と
それは常に死と隣り合わせの厳かな儀式のように思えた
けれど それは同時に私にとって 身体 心 が軽くなる この男
そしてこの仲間と同じ方を向いて闘う日々だった
またそれは 私を巣食う森での過去の記憶を次第に忘れさせてくれた

そして私たちはいつしか
人間界で英雄と呼ばれるものになっていた
仲間で夜 酒を酌み交わし 食事を共にする
笑顔が絶えなかった

「仕事」もどんどん大掛かりなものになっていったが
私たちにはそれを乗り越えるチカラと根性があった
あ…私今「根性」なんて言葉使ってる…こんなことになると思わなかった
おっかしいの

けれどその日は 思ったより早くきたんだ

なぜ私は妖精で 彼は人なのだろう
妖精は、死なない。
人は亡くなる。朽ち果てる。


私は今 あんなに嫌だった森にいる
見上げると 丸い空が見える


  *  *  *


 「第28回文章塾という踊り場」お題「「世界の始まり・世界の終り」」への投稿作品です。〆切は、2008年9月6日でした。
 塾生の皆さんから寄せられたコメントと、それに対する僕のレスはこちらから。

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