※この作品は、同日アップの文章塾作品『The Death of LoveWorld』の続編です。
それでは、ごらんください。( ̄▽ ̄@
* * *
The ReBirth of LoveWorld
「ばぁば?」
リリィの孫が初めて喋った。
「ねえ今!」
娘のクィスが、リリィの肩を叩いて喜んでいる。
「この子は…」
リリィが語り始めた。
カルロスが死んでからしばらく経った。リリィはカルロスとの間にできた娘――クィスと2人で生きていた。
仲間とも、闘いとも、縁を切った。
カルロスとの別離があった直後は、リリィは死ぬことさえ考えた。その度に仲間に救われ、娘の言葉に助けられた。
「お母さん、そんなんじゃお父さんと神の国で再会なんてできない」
クィスはその時、溢れそうな涙を必死に堪えて母に説いた。
生きなきゃ。
光が見えなくたって、生きている存在は、定め通り、生き続けなくてはならない。
「私は何に向かっていけばいいのだろう」
リリィには判らなかった。
しかしリリィはそれが、娘には見えているように感じられた。
『生命は自然の一部であり、その理に沿って在り続けることに、真実がある』
クィスの中に根ざしていた考えはその事であり、それが、娘の心に光があり、母の心が闇の中にあり続けなければならない理由の1つだった。
クィスが、結婚をした。
クィスと同じ、ハーフエルフ――妖精エルフと人間の混血――の青年だ。
彼が混血であったことからくる、一筋縄ではいかない苦労の連続は、彼の顔に色濃く刻まれていた。
なんとなくカルロスを思わせる…
リリィの第一印象だった。
それでも娘を取られたようで、リリィは婿には無愛想であった。
そして、クィスが息子を産んだ。
生まれた孫を見たとき、ハッとした。リリィは魂で判った。この子はカルロスだ。私の孫は、私の亡き夫と同じ魂を持っている!
この子は、あの男性の、強き心を持っています。
けれども、愛に飢えていたあの魂。
「ばぁば?」
それが彼の初めて口にした言葉。
「この子はカルロスです。私はこの子を、精一杯の愛情で包んでやろうと思う」
それは、リリィのカルロスに対する愛の、新たな復活であった。
リリィは今、光の指す方向を見つけた。
* * *
「第28回文章塾という踊り場」お題「「世界の始まり・世界の終り」」への投稿作品です。〆切は、2008年9月6日でした。
塾生の皆さんから寄せられたコメントと、それに対する僕のレスはこちらから。
それでは、ごらんください。( ̄▽ ̄@
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The ReBirth of LoveWorld
「ばぁば?」
リリィの孫が初めて喋った。
「ねえ今!」
娘のクィスが、リリィの肩を叩いて喜んでいる。
「この子は…」
リリィが語り始めた。
カルロスが死んでからしばらく経った。リリィはカルロスとの間にできた娘――クィスと2人で生きていた。
仲間とも、闘いとも、縁を切った。
カルロスとの別離があった直後は、リリィは死ぬことさえ考えた。その度に仲間に救われ、娘の言葉に助けられた。
「お母さん、そんなんじゃお父さんと神の国で再会なんてできない」
クィスはその時、溢れそうな涙を必死に堪えて母に説いた。
生きなきゃ。
光が見えなくたって、生きている存在は、定め通り、生き続けなくてはならない。
「私は何に向かっていけばいいのだろう」
リリィには判らなかった。
しかしリリィはそれが、娘には見えているように感じられた。
『生命は自然の一部であり、その理に沿って在り続けることに、真実がある』
クィスの中に根ざしていた考えはその事であり、それが、娘の心に光があり、母の心が闇の中にあり続けなければならない理由の1つだった。
クィスが、結婚をした。
クィスと同じ、ハーフエルフ――妖精エルフと人間の混血――の青年だ。
彼が混血であったことからくる、一筋縄ではいかない苦労の連続は、彼の顔に色濃く刻まれていた。
なんとなくカルロスを思わせる…
リリィの第一印象だった。
それでも娘を取られたようで、リリィは婿には無愛想であった。
そして、クィスが息子を産んだ。
生まれた孫を見たとき、ハッとした。リリィは魂で判った。この子はカルロスだ。私の孫は、私の亡き夫と同じ魂を持っている!
この子は、あの男性の、強き心を持っています。
けれども、愛に飢えていたあの魂。
「ばぁば?」
それが彼の初めて口にした言葉。
「この子はカルロスです。私はこの子を、精一杯の愛情で包んでやろうと思う」
それは、リリィのカルロスに対する愛の、新たな復活であった。
リリィは今、光の指す方向を見つけた。
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「第28回文章塾という踊り場」お題「「世界の始まり・世界の終り」」への投稿作品です。〆切は、2008年9月6日でした。
塾生の皆さんから寄せられたコメントと、それに対する僕のレスはこちらから。
「生きる」の意味……継ぎ接ぎだらけですが、それでも生きるんですね。
生きるための「幹」が欲しいところです。
このリリィにも。