父が亡くなり母の一人暮らしが始まった、父の葬儀のとき喪主
の挨拶で父の認知症に触れないでくれと懇願された、それだけ
母は認知症に対する嫌悪感があった。
ひとり暮らしの母に毎朝8時半に安否確認をかねた電話をする
のが私の日課になった、実家の訪問は月2回、病院の付き添い、
家事の手伝い含め7年間続けた、そして3年前の6月の朝、い
つもどうり電話をしたが、母の様子がおかしい、話が噛み合わ
ない、翌日新幹線で実家にいったら「近所の人が泊まっていっ
た、弟が友達を連れて来た、これから選挙にいかなきゃ」など
明らかにおかしい、その日のうちにケアマネジャーに連絡、
一時期預かってくれるショートステイを紹介してもらい入居す
ることになった。
しかし入居する翌朝になって突然「行かないよ、何でいかなき
ゃならないの」と押し問答が始まった、さすがに私も冷静でい
られなく親を思えば言葉も態度もきつくなる、やっとの思いで
入居させたが案の定帰宅願望が強く階段から落下しそうになっ
たり食事を拒否したり施設から何度も苦情の電話が私のところ
にきた。
その後終の棲家になる有料老人ホームに入居したが、認知症も
かなりすすみ、おむつをして車椅子の状態、表情も動きも乏し
くなり私と弟以外はわからなくなってた、母が94歳のときだ
った、さらに追い打ちをかけるように大腸がんで入院と母にと
って試練が続いた、そして亡くなるまでの2年間はこの施設で
お世話になったが最後まで「ここは自分の居場所ではない」と
いう思いで過ごしたのかもしれない。