死ぬのがこわくて仕方がないのは生きる意欲が人一倍ある証拠
だと言われてる、それでも人間いつかは死ぬ、誰かに看取られ
て亡くなる人、誰もいないところで亡くなる人さまざまかと思
う、私は両親の臨終に立ち会うことができなかった、だから立
ち会った人の気持ちが知りたくて探してところ、ある一冊の本
と巡り合うことができた。
それは結婚して45年のご夫婦、闘病中の奥様が臨終前、ご主
人が奥様の耳元で思い出を語りだした時、酸素マスクの中から
ご主人の目を見つめ、ウンウンとうなずき手を握り返してくれ
た、モニターの波長が弱まり50を切ったとき、眼尻から涙が
ほとばしり、頬を伝って流れ、そして息を引取った、ご主人も
娘さんも号泣した、伴侶を見送っての事例のなかの一例である。
死にゆく人が臨終にあたっての涙は、淋しさ、この世にまだ未
練があるから、それともこの世に別れをつげる感謝の涙か、こ
の奥様の場合、感謝かもしれない、でもそれ以上にまだ死にた
くないという気持ちが強かったのではないかと思えてならない。