【北京、上海共同】経営危機に陥った中国不動産大手、中国恒大集団を救済すべきか、習近平指導部が対応に苦慮している。支援すれば富裕層を優遇することになり、格差解消を目指して掲げた「共同富裕」戦略に反する。半面、放置すれば経済への打撃や投資家の抗議活動の激化が懸念されるためだ。

 9月22日、江蘇省太倉市にある恒大のマンション建設現場。「恒大の壮大なる作品」という看板が目立つものの、人けはほとんどない。作業員の男性(48)は「多くの現場で工事が止まった」と話す。給料の未払いで辞める作業員も多いと明かした。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルによると中国当局は恒大破綻に備えるよう地方政府に指示。経済、社会への影響を見極め、ぎりぎりまで救済の手を差し伸べない方針を確認した。

 習氏は8月に開かれた共産党の会議で共同富裕を提起し、少数者だけが豊かになることを認めない姿勢を示した。「資本の無秩序な拡張を食い止める」というスローガンが宣伝されるようになり、“もうけすぎ”の民間企業や富裕層への規制が強まった。

 格差縮小には不動産価格の高騰を抑えることが不可欠。習指導部が恒大への介入に二の足を踏むのは、救済すれば「不動産会社を救った」と受け止められ、習国家主席が掲げる政策が傷つきかねないとの判断がある。

 ただ恒大の経営危機以降、金融商品の償還を求める投資家や住宅購入者らの抗議活動が頻発。恒大のマンションを買った50代男性は、物件の価値が大きく下がったとして「私たちはみんなだまされた」と憤っている。

 問題を放置すれば社会の不安定化や金融市場への影響が生じる恐れがあり、共同富裕は早くも真価が問われる事態となっている。