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平成の大横綱・白鳳は、師と仰ぐ大鵬の優勝記録32回は更新した。
だが、双葉山の持つ連勝記録69連勝をいまだに破ることは出来ない。
大相撲でもプロ野球でもそうだが、優勝することより一敗もせず、連勝記録を更新することは,難しいといわれる。
辺野古移設に関し、県との複数の訴訟を抱える国は、いずれの訴訟も完勝するとの意気込みで訴訟に対応している。
国の「強気」に和解を尊ぶ裁判長が楔を打った。
判決に「引き分け」は考えられないので、裁判長に原告・被告どちらの顔も潰したくないという考えが過ると、和解案勧告という形になる。
裁判長が、原告・被告を傍聴人のいない別室で「審尋」(しんじん)という形で説得することは、前に述べた。
裁判長の和解勧告には「暫定的解決案」と「根本的解決案」の2種類ある。
県側は「暫定的和解案」に対して「前向き」との報道があったが、国側はいずれの案も拒否の意向だと報じられた。
ところが、裁判長は「根本的和解案」の方を積極的に勧めていたという。
「根本的和解案」とは、県側に取っては全く受け入れる余地のない提案。
だが、国にとってはまんざら受け入れられない案でもない。
複数の裁判で全勝を目論む強気の姿勢の国に対して、裁判長はどのように「根本的和解案」の受諾を説得するか。(いや、この場合「脅迫」と言っても過言ではない)
おそらく裁判長は「代執行訴訟は国が勝ったとしても、県によって付随して提訴される複数の訴訟にすべて勝訴するという保証はないよ!」などの脅迫気味の説得で、「根本的和解案」の受諾を国に迫ったと考えられる。
つまり、冒頭で述べたとおり、辺野古移設関連の訴訟の本筋の「代執行訴訟」では勝訴しても、県が工事変更の場合の許可申請や、「環境問題」等、「知事の広範な裁量」が認められ、枝葉の訴訟で連勝するとは限らない、・・・などと脅迫した。
和解勧告の「審尋」で、勝訴が間違いないと思われる当事者を、裁判長が半ば脅迫的に和解に持ち込んだ例を、筆者は数多く知っている。
裁判長が県が受け入れ難い「根本的和解案」を優先すると勧告した心は?
国の勝訴である!
名護市辺野古の新基地建設をめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が国と県に示した二つの和解案のうち、「根本的解決案」として、普天間飛行場周辺住民に対し、返還まで1日最大300円を国が賠償することを提示していたことが17日までに分かった。「根本案」は新基地建設を前提とするため、県が受け入れず成立しない見通し。
» 辺野古ゲート前で市民100人以上抗議集会 工事車両の進入はなし
同支部が1月8日の第2回口頭弁論後の進行協議で、すでに和解案を提示する方針を伝えていたことも明らかになった。
賠償内容は、W値(うるささ指数)75の地域は1日150円、W値80の地域は300円と提示。昨年6月、普天間飛行場周辺住民約2千人が米軍機の騒音で精神的苦痛を受けたとして国に損害賠償を求めた「普天間騒音訴訟」の一審判決で、那覇地裁沖縄支部が認めた賠償額と同じ基準となっている。
和解勧告は、代執行訴訟で国が勝訴しても今後、埋め立て承認の撤回や、工事の設計変更が避けられず、延々と法廷闘争が続く可能性を指摘。その場合、国が訴訟で勝ち続ける保証はなく、知事の広範な裁量が認められ、国が敗訴するリスクが高いとの見方も示している。
「根本案」は、県が埋め立て承認取り消しを撤回し、国は新基地建設の供用開始から30年以内に返還か軍民共用にするため米国と交渉することを求めている。
一方の「暫定案」は、国が代執行訴訟を取り下げ、国は工事を直ちに停止し、違法確認訴訟など別の手続きの判決まで、円満解決に向けて協議するもの。県は前向きに検討する方針を明らかにしているが、国側は否定的で、成立しない可能性が高い。
和解勧告は、福岡高裁那覇支部が「暫定案」に限って公開を許可したが、その他の内容は国、県に公開しないよう指示し、公表されていない。県は公開を求めている。
☆
沖縄タイムスは何故か触れていないが、毎日新聞や読売新聞によると、裁判長は二つの和解案のうち、県側が受け入れにくい「根本的和解案」を優先的に進めていた模様。(【おまけ】参照)
>「根本案」は新基地建設を前提とするため、県が受け入れず成立しない見通し。
では、国側が裁判長が勧める「根本的和解案」を国が受け入れる可能性を検討してみよう。
「根本案」
沖縄県が辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しを撤回する一方、政府は代替施設の運用開始から30年以内の返還か軍民共用化で米国と交渉する。辺野古移設が前提=沖縄県が否定的
「沖縄県が埋め立て承認を取り消すことを撤回する」は、国の勝訴を意味するから国が受諾しても何の問題もない。
「政府は代替施設の運用開始から30年以内の返還か軍民共用化で米国と交渉する」に関しても、米国という相手があること故、「30年以内の返還」を確約は出来ないが、「交渉する」ことは可能である。
結論から言えば、裁判長は県には受け入れ不可能だが、国には受け入れ可能な「根本的和解案」を優先的に勧告したことになる。
言葉を換えれば、裁判長は翁長知事から「敗訴が確定したら判決に従がう」(「あらゆる手段で辺野古阻止」は封印する)との言質を取った上で、受け入れ不可能な「根本的和解案」を提示し、県側が拒否するのを待って、県に対す敗訴判決を下すつもりだろう。
おっと、忘れる所だったが、国側は「軍民共用」についても受け入れ可能だ。
裁判長も米国と交渉をすることを提案して入るが、30年後に確実に軍民共用にしろと確約を求めてはいない。
裁判長の心境を推測すると、こうだろうか。
「折角強気の国側を強引に説得して和解案を受諾させ、県の敗訴で知事の面目を潰さないように配慮したのに・・・」
「県がそれを拒否するからには、誰に遠慮もなく粛々と、県敗訴の判決下せる。 やれやれ」
■それでも高裁判決が「国敗訴」だったら、どうなるか。
裁判長も神ならぬ人の子である。
多見谷裁判長が仮に何かの思惑があって「国敗訴」の判決を出さないとは100%言い切ることは出来ない。
だが、その場合でも国が最高裁に上告すれば、「国勝訴」は間違いなく確定する。
その理由は、こうだ。
先ず、外交と防衛は国家の専管事項であり、地方自治体の首長には関与する権限はない、という厳然たる事実だ。
安倍首相や菅官房長官が繰り返し主張する通り、「一地域の首長の判断で安全保障事案である米軍基地の移設が影響されてはいけない」。
日本国憲法第73条には「内閣の職務」として次のように明記されている。
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
辺野古移設は上記内閣の職務の二、三に該当し外交関連の日米安保に基づく日米合意の結果である。
憲法判断によれば、県の辺野古移設反対は、明らかに知事の権限を逸脱した憲法違反である。
わが国の司法制度には違憲審査裁判所はないので、最高裁判所がこの役目を果たしている。
最高裁判所の役目をWIKIから引用するとこうなる。
日本の裁判所における司法行政は、法律上は、簡易裁判所以外の裁判所の裁判官会議に基づき行われるものとされているが、下級裁判所は最高裁判所の下に置かれている。
また最高裁判所は、日本国内の裁判事件の、上告及び訴訟法が定めている抗告について、最終的な判断を下す権限を持つ。そのうえで、違憲審査制における法令審査権を持ち、法令審査に関する終審裁判所となる(憲法81条)。このため、最高裁判所は「憲法の番人」と称されることもある。
最高裁判所の最も重要な機能は、上告事件について法令の解釈を統一すること、および、憲法違反の疑いのある法令などについて最終的な憲法判断を下す(違憲審査制)こと(憲法81条参照)にある
【おまけ】
毎日新聞2016年2月17日 東京朝刊
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設を巡る国と県の代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部が示した和解勧告の概要が16日分かった。名護市辺野古の代替施設の使用開始から30年以内に返還か軍民共用化で国が米国と交渉する「根本案」について、両者がまず検討するよう求めた。国が将来の訴訟で敗訴する可能性を指摘するなど、法廷闘争を先導した政府に厳しい内容で、政府は根本案の修正を求める検討に入った。【高本耕太、佐藤敬一】
現状のまま移設作業が続けば、設計図と実際の海底地形の違いで「設計変更」を行うたびに、政府が知事の承認を得る必要が出るとみられる。関係者によると、和解勧告では国と県の法廷闘争が繰り返されれば、国が敗訴する可能性もあることを指摘。国と県に「仕切り直し」を求めた。
和解勧告では、辺野古移設が前提の根本案と、移設作業を中断する暫定案が示された。県内移設に反対する沖縄県は根本案に否定的で、翁長雄志(おながたけし)知事は15日に同支部で行われた協議で、暫定案を前向きに検討する考えを表明した。
一方、政府は代執行訴訟の取り下げも含む暫定案に否定的だ。辺野古埋め立ての法的根拠が失われ、移設の遅れが必至となるためだ。1月29日に両案が示された当初、政府内では和解を否定し、早期判決を求める考えが大勢を占めた。
ただ、那覇支部は暫定案で国により強制力が少ない違法性確認訴訟の提起を促すなど、従来の政府の対応への疑問もにじんでいる。政府も両案とも拒否する「ゼロ回答」では「裁判所の心証を害する」(官邸関係者)との懸念があり、根本案で障害となる「時限使用」などの修正を裁判所に求める方向に転じた。
あくまで勝訴判決を求める国の姿勢は変わっていない。翁長知事周辺からは、「自分たちは真剣に取り組んでいるという世論向けのポーズに過ぎない」との反発も出ている。
◆和解案骨子
「根本案」
沖縄県が辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しを撤回する一方、政府は代替施設の運用開始から30年以内の返還か軍民共用化で米国と交渉する。辺野古移設が前提=沖縄県が否定的
「暫定案」
政府が代執行訴訟を取り下げて移設作業を中断。県側の違法性を確認する訴訟を改めて提起した上で、政府と県が再協議する=政府が否定的
☆
辺野古代執行 和解検討「根本案先に」
読売新聞 2016年02月16日
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設を巡る代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部が国と県に示した和解勧告の全容が16日、わかった。現行の名護市辺野古への移設計画を前提とした「根本的な解決案」を先に検討するよう指示。国に対し、飛行場返還まで周辺住民に騒音に応じて1日当たり最大300円の損害賠償をすることを求めている。
和解勧告では、移設を巡る両者の対立を「双方とも反省すべきだ」と指摘。裁判での決着は「仮に国が勝ったとしても、(代替施設建設の)設計変更に伴う承認が必要となることが予想され、延々と法廷闘争が続く可能性がある」と推察し、「(国が)勝ち続ける保証はない。むしろ知事の広範な裁量が認められ、敗訴するリスクは高い」とした。
県に対しても「沖縄だけで米国と交渉して、普天間返還を実現できるとは思えない」との見解を示した。
その上で、先に「根本案」を検討し、まとまらない場合は国が訴訟を取り下げ、工事を中断して協議するとした「暫定的な解決案」を検討するよう要請した。
2016年02月16日 Copyright © The Yomiuri Shimbun