前沖縄県知事であった仲井真弘多氏の、青山版に続くインタビューです。青山氏版と合わせて読むと、仲井真氏が主張していることは明解です。
ひとことで言えば、翁長氏に知事としてのまともな仕事をしろということ、です。
知事は就任から1年になろうとしていますが、なんの成果も上げていません。
経済も教育も、インフラ整備もすべてがストップし、振興策を共に協議すべき国とは全面対立の関係に立ち至ったまま、ひたすら共産党、社民党と共に政治闘争に明け暮れています。
特に仲井真氏は、南北鉄道計画がまったく動かない状況を危惧しています。
また、北部の名護に建設する計画が持ち上がっているUSJ沖縄についても、県はむしろ反対なような口ぶりすらしているありさまです。
これは、菅氏が2013年8月に訪沖した際に提案されたものですが、これを翁長氏は「お前らはオレを懐柔する気だろう」とばかりに関心を寄せませんでした。
一事が万事です。事の是非はとりあえず置くとして、カジノを中心とした統合リゾート計画もありましたが、はかばかしい進捗がありません。
この構想は、県が独自に作ったものではなく、政府が構想段階からバックアップしています。
官邸の沖縄担当である菅氏は、2013年8月の盆休みに、お忍びで沖縄を家族「観光」しています。
その時に、名護のホテルで秘かに会ったのが仲井真氏と県商工会議所連合会会長の国場幸一氏、琉球放送の小禄邦夫氏でした。
菅氏は仲井真、国場、小禄の3氏に、振興予算3460億円とセットで、この統合リゾート計画の原案を提示しています。
また、県が独自の財政支出が可能なように、振興予算のうち1671億円は一括交付金としています。
そしてこれをUSJやカジノの誘致、あるいはMICEに当てて、さらに別枠の公共事業費1417億円で南北鉄道建設に当てたらたらどうなのか、というのが菅氏の提案であったと思われます。
これは空約束に終わらず、その後官邸との協議のために上京した仲井真氏に対して首相のお墨付きが与えられて、正式なものになっていきます。
いや、いくはずでした。ここから状況は一気に暗転します。
ここまでは、菅、仲井真氏の見事なまでに息の合った沖縄経済起爆計画でした。
当然ですが、この前提には、仲井真氏がかねてからの持論であった移設容認に戻ることがあります。
この大収穫を懐にして沖縄に帰った仲井真氏を待ち受けていたのが、地元2紙が音頭を取った、「金で沖縄を売った男」という大キャンペーンを張られました。
これに呼応し、共産党、社民党などが中心となって、百条委員会を設置し、病身の知事に対して連日に渡る「喚問」が始まりました。まさにリンチです。
この時、いままで一枚岩で保守系知事を支持してきた経済界に激震が走ります。
それは、かねてから仲井真憎しを公言していた、「かりゆしグループ」の平良朝敬氏と、国場組憎しで凝り固まった金秀の呉屋守将の両氏でした。
この両人は、このまま進行すれば、この巨大利権は、国場組を中心とする親自民党勢力に独占されると危惧しました。
これを仲井真ごとぶっ潰し、翁長氏を知事にすることで、自らで独占するというのが、彼らの目論んだ下克上の絵図でした。
その野心を隠すために作った包装紙が、「辺野古の美しい海を守れ」で、その御輿にかついだのが他ならぬ仲井真氏の右腕だった翁長雄志氏だったわけです。
かねてからクーデター計画を練っていた翁長氏は、知事選の前哨戦であった名護市長選では、子飼いたち那覇市議を自民党候補の切り崩しに派遣し、共産党、社民党との結びつきを固めていました。
おそらくこの時期には既に、平良・呉屋・翁長の欲ボケトロイカに、共産党、社民党の左翼勢力が「共闘」するという呉越同舟の相乗り関係が生れていたはずです。
そして勝利した翁長氏が、まずしたことは、論功報償としての利権の配分でした。
翁長氏は地元2紙が完全に沈黙していることをいいことに、ためらう様子もなく、金とポストを精力的に配りまくりました。
まず翁長氏は、毎年50億円もの観光予算を扱う沖縄コンベンションビュロー(OCVB)会長職を、翁長氏の選挙対策本部を支えた、かりゆしグループの平良朝敬氏に渡します。
次いで、翁長氏は、2万人収容予定の沖縄のMICEを、強引に金秀・呉屋氏のホームタウンである東浜(あがりはま)マリンタウンに建設することを発表します。
このMICEの選定は、県内関係者に大きな衝撃を与えました。東浜の立地がMICEにまったく向いていない不適格地なことは明々白々で、誰の目にも明らかな利益誘導だったからです。
このようなマネを翁長氏ができたのは、本来これをチェックすべき報道機関が、完全にだんまりを決め込み、その上これが保守系知事だったなら、大騒ぎを演じるはずの革新陣営もまた、見て見ぬふりをしたからです。
いかに彼らの倫理観が、ご都合主義か分かろうというものです。
さて、もうひとつの翁長氏の御輿の担ぎ手が共産党、社民党、そして官公労でした。
彼らに対しても手厚いご褒美が与えられます。それが、県政の柱に辺野古移設阻止を据えるというありえない政策でした。
(写真 日本共産党の知事選チラシ。沖縄物産公社社長になった島袋氏、MICEを得た呉屋氏の顔が見える。欲の皮がつっぱった呉屋、平良氏を推すのが共産党というのが、「オール沖縄」の姿であることがわかってしまう哀しい一枚http://maesato5688.ti-da.net/e6931959.html)
このようにして、仲井真氏が敷いた経済振興路線は完全に葬られ、たったひとつ残ったものは、移設反対闘争という寒々とした政治闘争だけだったのです。
そしてもうひとつこの1年で暴露されたことは、翁長氏が度し難い経済オンチだったことです。
仲井真氏はこのインタビューで、「選挙のことだけ一生懸命考える政治家」と断じています。
翁長氏は、「経済」とは単なる振興予算利権の配分にすぎず、自分の一党に金と権力をばらまき、政策は真面目に考えたことがないという自民党の中でも古いタイプの政治家だったのです。
翁長氏は自民党にいてこそ、なんとなく大物感があっても、到底ピン政治家ではなかったようです。
そんな彼に、多くの政策を伴う仲井真氏の策定した「沖縄21世紀ビジョン」など継承できるはずがありません。
その上、翁長氏の与党である共産党、社民党の基盤は官公労です。彼らは景気がよかろうと悪かろうと、鉄板に喰える階層で、政治活動だけが「仕事」です。
しかし、この政治闘争も、今や完全に行き詰まり、どこまでも続く法廷10年闘争へとなだれ込もうとしています。
そして、その間にも工事は確実に進んでいき、政府との距離は縮まるどころか、回復不可能な様相を呈しています。
左翼陣営にとっては、これこそ待ち望んだ状況でしょう。しかし、一般の人々にとって、これが翁長氏に託した夢だったとは思えません。
一体いつまで沖縄県民は、この欲ボケ・トロイカたちと左翼のお祭騒ぎを見ていなければならないのでしょうか。
沖縄は憂鬱な楽園になりつつあります。
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■2015年10月.23日 産経新聞
インタビュー詳報 翁長知事の対応に喝「こんなことやっては駄目だ」「選挙に役立つこと考える政治家」
沖縄県の仲井真弘多前知事は産経新聞のインタビューに応じ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沖の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事の対応を批判した。インタビューのやりとりは次の通り。
--知事時代に行った埋め立て承認の審査は厳正に行っており、瑕疵(欠陥)はないと
「審査が厳しいため防衛省の担当者はカッカしていたぐらいだ。特に環境面は何度も(書類を)突き返した。県はすべてオープンにしてやるから、審査に通るものを持ってこないと承認は無理だと防衛省に伝えていた」
「審査基準に適合していれば承認、適合していなければ不承認。基準に適合しないものを承認する気はなかったし、そういうことをするのはあり得ない。知事の裁量もないに等しい。とにかく公正にやり、職員はきちんと審査し、防衛省の担当者も一生懸命だった」
--審査にあたった職員は承認取り消しで自分たちの結論を否定され、誇りと尊厳を傷つけられたのでは
「そう思う。こんなことをやっては駄目だ。知事が代わっても基本的な仕事は継続させるべきだ。政治的な(意図で)指示をされると職員の士気も下がるのではないか」
「(翁長県政は)共産党や社民党など革新政党も与党で、(保守政治家の翁長氏と)考え方が違う人が一緒になってどういう仕事をさせられるのか職員には戸惑いもあるだろう」
「日米安保だけでも県政与党の間で考え方が異なる中、基地はいらないという極端な方針を打ち出している。だが、本来、その方針が現実的かどうかを判断するには相当議論をしないといけないはずだ」
--改めて辺野古移設に関する認識は
「辺野古移設は手間も時間もかかっており、知事時代には可能であれば県外移設の方がよいと模索してきた。ただ、普天間飛行場の危険除去はなるべく早くやるべきで、事故が起きると大変なことになる」
「今のところ辺野古移設しか解決の道はない。県民の命と暮らしを守るのが知事の仕事の一丁目一番地だが、翁長氏はなぜそれをやろうとしないのか。行政とは現実的に課題を処理していくことだ」
--翁長氏は辺野古移設による米海兵隊の抑止力維持を重視しておらず、中国の脅威にも触れない
「今の(日本周辺の)情勢を考えると、沖縄を含めて日本国内に米軍を置く応分の負担は必要だ。特に南西諸島をめぐり中国は何を考えているか了見が分からないところがあり、それへの対応は日本だけでは十分ではなく、米軍の存在は欠かせない。米軍がきちんと機能することも重要だ。基地問題を考える上でも、そこは再確認しておかなければならない」
「実は、そういうことは石垣市民が一番よく分かっている。(尖閣諸島をめぐり)火の粉が降りかかりかけているから現実的な考え方をする市民が多い」
--基地の整理・縮小は一気には進まない
「基地は多すぎるが、ステップを踏まないと物事は進まない。基地の整理・縮小もそうだし、事故や騒音の問題もそう。その中で先月、日米地位協定の実質改定となる環境補足協定に署名したことは画期的なことで、日本政府はよくやってくれた。政府との信頼関係があれば、より良いものに改善していくこともできるだろう」
--翁長氏は辺野古移設阻止を唱えるだけだ
「那覇市長も務めていたが、政策を遂行したり物事を解決したりするためにプランを作り、ステップを踏んで進めていくということを一度もやったことがないのかもしれない」
「(市議や県議など)議員歴が長い方は選挙が第一で、政策は二の次という傾向がある。翁長氏も選挙に役立つことを一生懸命考える政治家だ。とても考えられない相手とも一緒に組む。良くいえば弾力的だが…」
--翁長氏は辺野古移設阻止で手いっぱいの状態。仲井真氏が発案から策定まで手がけた振興計画「沖縄21世紀ビジョン」を翁長氏は継承したが、展望は
「21世紀ビジョンにとって大事な時期で、ここで停滞すれば行く末に大きく響く。沖縄は県民所得にせよ産業振興にせよ成長曲線に入りかけたところで下がることを繰り返してきた」
「産業振興に向け、道路など交通システムのインフラ整備が遅れており、港や鉄軌道の整備も必要だ。普天間飛行場の返還後の跡地も産業振興に充てる。辺野古移設の問題だけで政府と対立していては経済にとってマイナスで、沖縄の発展のためには時間を浪費することは許されない」