竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

もう誰も来ない石段蟬しぐれ 金山桜子

2020-07-29 | 今日の季語


もう誰も来ない石段蟬しぐれ 金山桜子

待ち人来たらず
石段で待つことしばし
とっくに時間はすぎている
さきほどまで訝し気な視線を投げかけていた
参内の人影も消えた
もう誰も来ない
これから来ても会う気も失せた
せいせいとしたこの心地よい気分は何故だろう
来ないことを期待していた自分に気づいてしまった
蟬時雨がはやしたてている
(小林たけし)


【蝉】 せみ
◇「油蝉」 ◇「みんみん蝉」 ◇「みんみん」 ◇「熊蝉」 ◇「にいにい蝉」 ◇「蝉時雨」 ◇「唖蝉」(おしぜみ) ◇「初蝉」 ◇「朝蝉」 ◇「夕蝉」 ◇「蝉涼し」
セミ科の昆虫の総称。鳴くのは雄ばかりで、鳴かない雌蝉のことを「唖蝉」(おしせみ)という。梅雨が明ける頃からニイ、ニイと鳴き出すニイニイ蝉、盛夏にジージーと鳴く油蝉、ミーンミーンと高い声で鳴くミンミン蝉、やかましくシャーシャーと鳴く熊蝉、晩夏から初秋の夕暮れ時にカナ、カナと美しい声で鳴く蜩(ヒグラシ)など種類も数も多く、いずれも季節感を演出してくれる。一斉にまるで雨が降るように鳴く蝉の声を「蝉時雨」という。《蝉生まる:夏》《蜩:秋》《つくつく法師:秋》

例句 作者

うす墨で描く全景蟬しぐれ 鈴木夏子
ひたむきの哀しきことぞ蟬時雨 浜田博美
トーストの耳まで焦げて蟬しぐれ 大城戸晴美
今生の今日を狂いて蟬時雨 丹羽麓
原爆のドーム支える蟬時雨 越智愛水
古池や刺客集まる蟬しぐれ 澤田正男
古里の煮こぼれている蟬時雨 宮脇木脩
境内に残る土俵や蟬時雨 岡市順子