竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

祇園会や千の乙女に千の櫛 有馬朗人

2020-07-15 | 今日の季語


祇園会や千の乙女に千の櫛 有馬朗人

一読平易明解な一句
祇園祭を観ている作者の偽りのない感動
祇園祭の豪壮さや歴史、華麗な坂鉾巡行に
たくさんの女性の姿を楽しんでいる作者がいる
(小林たけし)


【祇園会】 ぎおんえ(ギヲンヱ)
◇「祇園祭」 ◇「山鉾」(やまぼこ) ◇「二階囃」(にかいばやし) ◇「祇園囃子」 ◇「鉾立」(ほこだて) ◇「神輿洗」(みこしあらい) ◇「祇園山笠」 ◇「鉾粽」(ほこちまき) ◇「宵山」(よいやま) ◇「宵宮詣」 ◇「屏風祭」
7月17日から24日にかけて京都八坂神社で行われる祭礼。祇園御霊会(ごりょうえ)が正式名称。「葵祭」と共に京都の二大祭礼といわれる絢爛豪華なものである。また、博多は祇園山笠、小倉は祇園太鼓で、大牟田祇園会は龍頭の目玉争奪で各々有名であるが、元々祇園・天王信仰は疫病を祓う神の信仰として広がったものであり、農村では素朴な形式での祇園会が行われる。

例句 作者

宵山や行燈暗き川座敷 梶山千鶴子
東山ぐらり傾け鉾廻す 岩水ひとみ
月鉾に夜空は雨を降らしけり 鈴木真砂女
祇園会の一力の釜懸りけり 河本 和
祇園会の温気の辻となりにけり 中村与謝男
祇園会の真只中のポストかな 黛まどか



巴里祭ある日少女に女の香 中山妙子

2020-07-14 | 今日の季語


巴里祭ある日少女に女の香 中山妙子

毎年の巴里祭
今年もあの少女がにこやかに踊っている
ふと去年までとは異なる雰囲気を感じる
少女はまごれもなく大人の女性になっている
(小林たけし)


【パリ祭】 ぱりさい
◇「パリー祭」 ◇「巴里祭」(ぱりさい)
7月14日のフランス革命記念日(カトールズ・ジュイエ)の日本での呼称。この祭日後、多くのパリ市民は避暑に出かける。

例句 作者

パリ祭とメモしてくれた誕生日 柴田一風
ルネ・クレールは遠し青春の「巴里祭」 久保木信也
励ましてわがししむらよ巴里祭 加茂達彌
巴里祭のパリ歩きたし羽蟻の夜 森山夏城
巴里祭本が増殖してゐたり 後藤昌治
手の影の皿に大きく巴里祭 桂信子
日常をワインに沈め巴里祭 大石壽美
汝が胸の谷間の汗や巴里祭 楠本憲吉
犬洗ふ役は変らず巴里祭 鈴木きみえ

いづくにも虹のかけらを拾ひ得ず 山口誓子

2020-07-13 | 今日の季語


いづくにも虹のかけらを拾ひ得ず 山口誓子

作者の求める虹の欠片はなんだろう
幼年期の夢
青年期の野望
来し方に真剣に取り組めば取り組む程
求めるものは昇華して遠くなりがち
それでもその欠片を拾った実感が欲しい
拾ったことはないが求めることは止め理子と花井
(小林たけし)


【虹】 にじ
◇「朝虹」 ◇「夕虹」 ◇「二重虹」(ふたえにじ)
夏、夕立の後などに特に多く見られることから夏の季語とする。大気中に浮遊している水滴によって太陽光が分散されて生じるもので常に太陽の反対側に見られる。まれにその外側に色の配列が逆の副虹が見えることがある。俗に朝虹は雨、夕虹は晴れと言われる。

例句 作者

虹消えてまた虹立つも阿蘇らしや 猿渡青雨
佐渡までは届かぬ出雲崎の虹 宇都木水晶花
夕虹へ妻坑帽を捧げ干す 工藤求基
虹立つや母の手いつも濡れてゐて 石川笙児
行けどゆけど大虹のしたぬけきれず 宇咲冬男
頭に載せて水運ぶなり虹の中 久米三汀
一湾の虹のかけらとなつてゐし 菅原鬨也
虹見上げ携帯電話耳にあて 今井風狂子
分度器で虹を測って呆けてゆく 八木三日女
消ゆる時虹青色をのこしけり 軽部烏頭子
お遍路が一列に行く虹の中 風天
がりがりと虹に触れては減るあたし 竹岡一郎
ほっぺたが破裂するから虹の産卵 おおしろ建
をさなごのひとさしゆびにかかる虹 日野草城
ドロップの何色探る虹の音 髙橋あや子
バス来るや虹の立ちたる湖畔村 高浜虚子
リハビリや父の記憶へ虹架ける 河野薫
不眠症のきっかけは虹ホームレス 宮崎斗士
中天の虹を涅槃と思はずや 長谷部雉子
二番虹見上げる吾子の真顔かな 穂満史郎

六足に六つの責務あめんぼう たけし

2020-07-12 | 入選句


六足に六つの責務あめんぼう たけし

朝日新聞 栃木俳壇 
石倉夏生先生の選をいただきました

あめんぼうを見つけると
いまでもじっと見入ってしまう自分に
微苦笑を禁じ得ない

忘れかけて久しい童心に灯hが点る

六足が水面を踏ん張っている様子は
六人の屈強な漕ぎ手がいるようだ

殺める手合掌する手懐手 たけし

2020-07-11 | 入選句


殺める手合掌する手懐手 たけし


芭蕉の「奥の細道」にゆかりの

栃木県太田原市の黒羽町の

第31回黒羽芭蕉の里「全国俳句大会」の作品集が届いた



2020年6月28日に開催の予定だったものだ



地元ということもあって参加している

今年はコロナの影響で一堂に会しての俳句大会は中止になった



事前投句の自由題だけの大会で

応募者数719名、総投句数2648句の大会になった



今回掲句が黒田杏子先生の選を頂いた



殺める手合掌する手懐手 たけし

一木を移すにぎはひ雲の峰 岡崎るり子

2020-07-10 | 今日の季語


一木を移すにぎはひ雲の峰 岡崎るり子

大きく育った樹木を移植する
桜か梅か
庭木でもありそうだが名のある園庭のように思われる
たくさんの職人m関係者が寄っている
お祭りのようで差へある
おりからの夏の日差しだが高揚感に気分はすこぶる良い
宙には真っ白な雲がそびえている
(小林たけし)


【雲の峰】 くものみね
◇「積乱雲」 ◇「入道雲」 ◇「峰雲」 ◇「雷雲」
積乱雲、いわゆる入道雲で、地表が熱せられ激しい上昇気流によって峰のように高く立つ雲をいう。積乱雲は四季を通じて見られるが、夏に圧倒的に多く、また大きく発達するので、雲の峰といえば夏の積乱雲を指す。

例句 作者

ひとへ反る有刺鉄線雲の峰 花谷清
また育つ古き写真の雲の峰 恩田侑布子
一代を伐らぬ杉山雲の峰 阪脇文雄
入道雲甕いっぱいの骨であり 津波古江津
兵征けりしろき峰雲ゆるぎなく 藤木清子
初孫の生まれるニュース雲の峰 又吉涼女
別れ際いつも渾身雲の峰 森田緑郎
厚餡割ればシクと音して雲の峰 中村草田男
友達よいのちというは雲の峰 長久保通繪

老松の下に天道虫と在り 川端茅舎

2020-07-08 | 今日の季語


老松の下に天道虫と在り 川端茅舎

老松の下 がこの句の眼目だろう
作者の老境を老松になぞらえて
来し方を辿っている
そこに天道虫が松に登ろうかとの思案の様子
優しい作者の視線が映る
(小林たけし)

【天道虫】 てんとうむし(・・タウ・・)
◇「瓢虫」(てんとうむし) ◇「てんとむし」
テントウムシ科の昆虫の総称。種類が多いがどれも光沢のある半円形の背に、黒、赤、黄色などの様々な斑点を持つ愛らしい甲虫。七星天道を始めその多くは益虫だが、中にはナスなどの葉を食べる二十八星天道(にじゅうやほしてんとう)などの害虫もいる。

例句 作者

北へ吹く風あり天道虫の飛ぶ 今井杏太郎
てんと虫一兵われの死なざりし 安住 敦
天道虫だましの中の天道虫 高野素十
天道虫けふは寝墓に来てねむる 大島民郎
 

喪服着て七夕竹の裏通る 寺井谷子

2020-07-07 | 今日の季語


喪服着て七夕竹の裏通る 寺井谷子

喪服は七夕にはなんとも不釣り合いな取り合わせだが
作者は見事にそれを「裏通り」で救っている
裏通りの七夕竹という見事な転換に脱帽だ
(小)たけし



【七夕】 たなばた
◇「七夕祭」 ◇「星祭」 ◇「牽牛星」(けんぎゅうせい) ◇「彦星」 ◇「織女星」(しょくじょせい) ◇「機織姫」(はたおりひめ) ◇「織姫」 ◇「星合」(ほしあい) ◇「星迎」(ほしむかえ) ◇「星今宵」 ◇「七夕竹」 ◇「七夕流し」 ◇「鵲の橋」(かささぎのはし) ◇「乞巧奠」(きこうでん) ◇「願の糸」(ねがいのいと) ◇「梶の葉」(かじのは)

例句 作者

園児書く七夕飾文字踊る 安冨耕二
夕ごころはなやぎ迎ふ二星かな 西島麦南
天ざかる鄙に住みけり星祭 相馬遷子
子と飾る七夕妻に姉妹なし 栗田やすし
山垣のかなた雲垣星まつり 福永耕二
彦星やいつまで道徳的なのか 松井国央
星合いの情死光年の薄明り 松澤龍一
星合の宙へシースルー・エレベーター 三苫知夫
星祭り夢の逢瀬に鈴鳴らす 坂本タツ子
星祭り曲水に来て句を結ぶ
中村順子

おとがひの上にくちびる夏帽子 石倉夏生

2020-07-06 | 今日の季語


おとがひの上にくちびる夏帽子 石倉夏生

おとがいは
1 下あご。あご。
2 減らず口。また、減らず口をたたくこと。また、そのさま。
「えらい―なわろぢゃ」〈滑・膝栗毛・七〉
とある

掲句は頤、くちびる、夏帽子と視線を転じる動きを詠んだもの
この視線の動きが巧みに詠まれ
夏帽子の主人公を読者に想像させる
そしてその主人公と作者のドラマまでもを・・・・
(小林たけし)

【夏帽子】 なつぼうし
◇「夏帽」 ◇「麦稈帽子」(むぎわらぼうし) ◇「パナマ帽」
夏用の帽子の総称。「麦藁帽」を代表として、日差しを防ぐ目的から鍔の広い物が多い。

例句 作者

かくれんぼ少し覗ける夏帽子 幸田清子
かぶるたびにとられる麦藁帽原爆の記憶 福富健男
しなやかに夏帽子ゆく杉の谿 櫻井博道
それぞれの空持ち寄りて夏帽子 藤田敦子
ただ波を見ているだけの夏帽子 保坂末子
やさしさのすり減つてゆく夏帽子 野木桃花
わが夏帽どこまで転べども故郷 寺山修司
わさび畑見学に来し夏帽子 井口公子
カシニョールの夏帽子来る浜通り 室生幸太郎
ヒロシマに消えに行くため夏帽子 室生幸太郎
ヒロシマの影がかぶさる夏帽子 室生幸太郎

ところてんいま一族の腹の中 小菅白藤

2020-07-05 | 今日の季語


ところてんいま一族の腹の中 小菅白藤

一族というのだから家族だけではなく
親戚などもご一緒の景だろうとの思いが浮かぶ
遠忌の集いなのかな
いつも離れている一族が一堂に会して
心太に向かっている
ほのぼのとした空気と心太が
微妙なハーモニーを醸し出している佳句である
(小林たけし)


【心太】 ところてん
◇「心天」(ところてん) ◇「こころぶと」 ◇「こころてん」
天草(てんぐさ)を日に曝し、水に浸して更に干した後、煮溶かして麻袋で漉し、型に入れ冷し固めたもの。四角い棒状に切り出し、心太突きで麺状にしたものに醤油・酢・蜜などをかけて食す。奈良時代から「こころぶと」として記載が見られるが、江戸時代以降には氷屋などで供されて、庶民に広く嗜好されている夏の食べ物。寒天からも作る。

例句 心太

おもざしの風にあふれてところてん 松澤昭
くみおきて水に木の香や心太 髙田正子
くらやみの喉をとほりぬところてん 神生彩史
ところてん煙のごとく沈みをり 日野草城
ところ天一気に押して父となる 吐田文夫
ひるすぎの町音にゐて心太 桂信子
みんな死ぬ暗黒映画ところてん 鈴木砂紅
ネガティブな六区界隈心太 倉持淑子
九分通り肩書はづす心太 田口佐江

夕立なか野鯉のやうな下校生 大竹照子

2020-07-04 | 今日の季語


夕立なか野鯉のやうな下校生 大竹照子

中七「野鯉のような」が秀逸
夕立ちと下校性の取り合わせは安易ともとられそうだが
この「野鯉」の比喩に魅了される
句材の凡を比喩が高めるお手本のような一句である
(小林たけし)



【夕立】 ゆうだち(ユフ・・)
◇「夕立」(ゆだち) ◇「夜立」(よだち) ◇「白雨」(はくう) ◇「夕立晴」 ◇「夕立風」 ◇「夕立雲」
午後や夕方、急に曇って来て短時間に激しく降るにわか雨。夏に多い。発達した積乱雲によって起こり、雷を伴うことが多い。通常1時間位でからりと晴れる。「夕立つ」と動詞にも用いる。 「白雨」ともいう。

例句 作者

夕立にならんで公務員である 五島高資
夕立に蔵の醤油が匂います 濱田有
夕立のなか走つても走つても 杉浦圭祐
夕立のはじめの一滴火の匂い 沖みゆき
夕立の一直線に地へ帰る 三井つう
夕立の早足慶良間(けらま)海峡へ 横山白虹
夕立は狷介な奴眼を残す 四ッ谷龍
夕立は貧しき町を洗ひ去る 松瀬青々
夕立へ十本の指みな流し 松下カロ

夏空や画用紙の端反り返る 瀬戸優理子

2020-07-03 | 今日の季語


夏空や画用紙の端反り返る 瀬戸優理子


画用紙の端が反り返る
つきぬけるような青い夏空
反り返っているのは作者自身
高揚している青春の夏の日が浮かんでくる

第33回現代俳句新人賞「微熱」 の作品
作者は北海道在住の若き女流俳人
(小林たけし)


【夏の空】 なつのそら
◇「夏空」 ◇「夏の天」 ◇「夏天」(かてん)
一口に夏の空と云っても初夏・盛夏・晩夏とそれぞれに趣を異にするが、何れも明るさ、蒼さ、力強さが感じられるのが夏空である。中でも入道雲の沸き立つ夏空の量感は逞しさを感じる。また、夕立の後の群青の空は爽やかである。

例句 作者

夏空を高枝鋏傷つける 村田まさる
大夏天充実感即孤独感 中村正幸
子の頭不安にならぶ夏の空 津沢マサ子
子を放るトランポリンへ夏空へ 山川雅舟
息絶えし夏空を載せ俎板は 津沢マサ子
望郷よ手相迷路に夏の天 高橋欣也
真夏空両手に欠けてゐるは城 伊東類
金椀(かなまり)に水夏空を飲み干さむ 松王かをり

あの世へも顔出しにゆく大昼寝 瀧春一

2020-07-02 | 今日の季語


あの世へも顔出しにゆく大昼寝 瀧春一

年をとると所在ないときなどついと窓んでしまう
白昼の静かな座敷に一人でいればなおさらだ
そんな白昼夢に現れるのは懐かしき人ばかり
作者はそれを「あの世への顔だし」とまとめた
納得の佳句である
(小林たけし)


【昼寝】 ひるね
◇「午睡」(ごすい) ◇「三尺寝」(さんじゃくね) ◇「昼寝覚め」


例句 作者

はるかまで旅してゐたり昼寝覚 森澄雄
ひだり腕すこし長くて昼寝せり 能村登四郎
ふるさとはさみしきところ昼寝覚 青柳志解樹
ビーバーの歯を乾かして昼寝覚め 小木曽あや子
一切を抛擲し去り大昼寝 高浜虚子
七曜は忘れし午後の大昼寢 坂野登志子
三尺寝大工の髭が伸びている 関戸美智子
両眼の開いて終わりし晝寝かな 藤田湘子
二人して何もつくらず昼寝覚 鈴木六林男

半夏生饒舌の悔い残りけり 松本晶子

2020-07-01 | 今日の季語


半夏生饒舌の悔い残りけり 松本晶子

饒舌のあとの虚しさ
そして後悔
おりからの半夏生の雨には毒もあるとか
悔恨はふかまるばかりの夜道のようだ
(小林たけし)


【半夏生】 はんげしょう(・・シヤウ)
◇「半夏」 ◇「半夏雨」(はんげあめ)
七十二節気の1つで、夏至から11日目、陽暦の7月2日頃に当る。この頃に半夏(和名:からすびしゃく)という毒草が生えるとされる。この日の雨を半夏雨といい、大雨になると言われている。一般に田植が終る時期として、各地で主に農事に関する様々な風習が見られる。
例句 作者
半夏生雀にまじる鶸ひとつ 青野きみ
カレーに火通してをりぬ半夏生 仁平 勝
火を焚きて火の色見えず半夏生 佐々木 咲
起きぬけの顔の白しや半夏生 舘岡沙緻
長旅の家路近づく半夏生 吉田孤羊
おとろへていよよ狷介半夏生 富田直治
大棚に生薬ならぶ半夏かな 天野初枝
ぼんやりと亀の浮きたる半夏かな 村井美意子


例句 作者

どしやぶりの鳥かごを持つ半夏生 宮本佳世乃
ビル街に水の流れや半夏生 山本京子
何にでも蓋する暮し半夏生 玉木祐
半夏生ゴッホ展出てよりの難聴 米倉初音
半夏生五体の一つ不満足 小野淳子(海程・林苑)
半夏生狐が眉をひきはじむ 畠淑子
半夏生鰭長き魚切らるるよ 栗林千津
失禁の夢に泣く半夏生 山内俳子洞