竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

三寡婆のなれそめばなし春炬燵 たけし

2022-02-13 | 今日の季語で一句


三寡婆のなれそめばなし春炬燵 たけし

今日の季語は「春炉」だが「春炬燵」にしての1句
「寡婆」は造語だが何故かふと浮かんだ言葉
みな夫に先立たれたが元気に老境を楽しんでいる
大声で笑いこける彼女らの姿を想像して欲しい
(たけし)


春(三春)・生活・行事
【春炬燵】 はるごたつ
春になっても片付けてしまわずに、まだ使う炬燵。東京の2月の平均温度は摂氏4度ぐらいなので、相当に寒さを感じる。3月末ごろまでは炬燵が欲しい。

例句 作者

小説の女に惚れて春炬燵 原 赤松子
書を置いて開かずにあり春火燵 高浜虚子
春炬燵風北寄りに変りけり 永方裕子
借りて読む七番日記春炬燵 黒田杏子
家々の春の炬燵や三国町 成瀬正とし
火を足して人無き春の炬燵かな 京極杞陽
忘れもののやうに母ゐる春炬燵 猪口節子
ひといろに湖昏れてゆく春炬燵 斎藤梅子
飲食も目薬さすも春炬燵 久力澄子
春炬燵みんな出かけてしまひけり 黛 執

蝶一頭うかがうように川の色 たけし

2022-02-12 | 今日の季語で一句


蝶一頭うかがうように川の色 たけし

うららかな春光
どこからか初蝶が川の流れに沿って飛んでいる
まるで川の色、香、音をうかがっているようだ
春は本物かと確かめているのだろうか
(たけし)


春(三春)・動物
【蝶】 ちょう(テフ)
◇「蝶々」 ◇「白蝶」 ◇「黄蝶」 ◇「しじみ蝶」 ◇「大紫」 ◇「小紫」 ◇「胡蝶」(こちょう) ◇「紋白蝶」 ◇「紋黄蝶」 ◇「山蝶」
いかにも春をおもわせる昆虫である。幼虫は毛虫・青虫の類で、草木を食べて成長し、蛹を経て成虫となる。一般に繭は作らない。種類が多く、日本だけで約250種を数える。昆虫界で最も美しい。蛾と違って昼間飛びあるき、止まるときは多く羽をたたむ。ぜんまいのような口をのばして花の蜜を吸う。胡蝶。かわらびこ。

例句 作者

あをあをと空を残して蝶分れ 大野林火
山国の蝶を荒しと思はずや 高浜虚子
てふてふのひろげてゆきし水の音 奥名春江
失せものにこだはり過ぎぬ蝶の昼 星野立子
てふてふや遊びをせむとて吾が生れぬ 大石悦子
蝶がくる阿修羅合掌の他の掌に 橋本多佳子
一日物言はず蝶の影さす 尾崎放哉
うつゝなきつまみ心の胡蝶かな 蕪村
黒き蝶ゴッホの耳を殺ぎに来る 角川春樹
方丈の大庇より春の蝶 高野素十


建国日捨てた活字が大写し たけし

2022-02-11 | 今日の季語で一句


建国日捨てた活字が大写し たけし

神国日本は死語のはずだが
戦後77年にもなると
戦前を懐旧する人が偲ばれたりする
あるはずのない神風まで信じる国民性
捨てたままで良いものもあるはずだ
(たけし)


春(初春)・生活・行事
【建国記念日】 けんこくきねんび
◇「建国の日」 ◇「建国祭」 ◇「紀元節」(きげんせつ)
2月11日。国民の祝日の一つ。戦前は「紀元節」といい、四方拝・天長節・明治節とならんで四大節として祝われた。戦後廃止されたが、1966年、「建国記念の日」という名で復活した。

例句 作者

着ぶくれて建国の日を肯ぜず 轡田 進
身ほとりに本うづ高く建国日 榊 澄子
大和なる雪の山々紀元節 富安風生
うつくしき墨絵の便り紀元節 杉戸由紀子
草の根に日のゆきわたる建國日 三田きえ子
轟々と建国の日の滝こだま 吉田銀葉


初午や祠は餓鬼の秘密基地 たけし

2022-02-10 | 今日の季語で一句


初午や祠は餓鬼の秘密基地 たけし

稲荷神社の奥には洞があることが多い
その洞には姿は見えぬが餓鬼魍魎が蠢いている
よくみれば自分に良く似た顔もいる
欲の皮をさらけだして寛いでいる私ではないか
(たけし)


春(初春)・宗教
【初午】 はつうま
◇「午祭」(うままつり) ◇「一の午」 ◇「二の午」 ◇「三の午」 ◇「初午詣」(はつうまもうで) ◇「福参」(ふくまいり) ◇「初午芝居」(はつうましばい) ◇「初午狂言」(はつうまきょうげん)
2月初午の日(地方では陰暦2月)。京都の伏見稲荷大社の神が降りた日がこの日であったといい、全国で稲荷神社や稲荷の祠を祭る。稲荷信仰はもともと田の神の信仰で、全国に行きわたっており、屋敷神や同族神も稲荷であることが多い。

例句 作者

初午やどの道ゆくもぬかるみて 檜 紀代
はつ午や煮しめてうまき焼豆腐 久保田万太郎
初午や吹き抜け露地の稲荷講 村山古郷
初午や幟に顔を叩かれて 高崎武義
初午の遥かに寒き雲ばかり 百合山羽公
初午の祠ともりぬ雨の中 芥川龍之介
初午や木曽路の宿の昼下り 五所平之助
初午の土産の絵馬の二三枚 後藤夜半
初午の佐助稲荷に婢と詣る 阿部みどり女
紅さして夕月はあり一の午 深見けん二


諍いの重石二日目の蓬餅 たけし

2022-02-09 | 今日の季語で一句



諍いの重石二日目の蓬餅 たけし

犬も食わない諍いに
たあいのない意地ををはりあって
昨日の蓬餅が冷たくそのまんま
捨てる勇気も無いが食う気にはなれない
この重石は容易に動かない
(たけし)



春(仲春)・生活・行事
【草餅】 くさもち
◇「草の餅」 ◇「蓬餅」
蓬の蒸した葉を入れて搗いた餅。これで餡を包んだのが蓬餅。昔は蓬の代りに母子草を用いた。

例句 作者

草餅や足もとに著く渡し舟 富安風生
草餅の色濃きを食み雨ごもり 岡本 眸
草餅を焼く天平の色に焼く 有馬朗人
草餅や川に栄えて過ぎし町 川門清明
草餅や川ひとすぢを景として 鈴木真砂女
助六のうはさあれこれ草の餅 久保田万太郎
草餅やもとより急ぐ旅ならず 角川春樹

狛犬の欠けた鼻先春浅し たけし

2022-02-08 | 今日の季語で一句


狛犬の欠けた鼻先春浅し たけし

自宅からほどよい距離に鎮守宮がある
朝のウオーキングでよく立ち寄る社だ
小さな石の狛犬が迎えてくれるのだが
片方の像の鼻先が欠けてそのままである
折からの北風にふとこの句が浮かんだ
(たけし)


春(初春)・時候
【春浅し】 はるあさし
◇「浅き春」 ◇「浅春」(せんしゅん)
早春とほぼ同じであるが、春になって間がなく、まだ春らしい気配が十分に感じられないさま。

例句 作者

木より木に通へる風の春浅き 臼田亜浪
白き皿に絵の具を溶けば春浅し 夏目漱石
春浅き峠とのみの停留所 八木林之助
春浅し一緒にのぞくマンホール 根津芙紗
春浅き水音めぐる都府楼址 能村登四郎
春浅き海へおとすや風呂の水 飴山 實
春浅き甕を覗きて天見ゆる 金子 晉
春浅し空また月をそだてそめ 久保田万太郎
春浅く火酒したたらす紅葉かな 杉田久女
春浅き水を渡るや鷺一つ 河東碧梧桐

春の雨ささず終ひのをんな傘 たけし

2022-02-07 | 今日の季語で一句


春の雨ささず終ひのをんな傘 たけし

2020年3月の作
季語と句意がちかすぎるとの評もあったが
私的には春雨にはこのくらいでいいかな」と思っている
なんとなくくすりと笑ってもらえば十分
(たけし)


春(三春)・天文
【春の雨】 はるのあめ
◇「春雨」
3、4月頃、若芽の出る頃に静かに降る細かい雨。長雨になることが多い。

例句 作者

春の雨博多の寿司のくづれをり 角川源義
貯炭場の細き真黒き春雨なり 西東三鬼
春の雨瓦の布目ぬらし去る 細見綾子
春雨の檜にまじる翌檜 飯田龍太
春雨を嘉すべく世に出でにけむ 中里麦外
春雨や喰はれ残りの鴨が鳴く 一茶
春雨の遅参の傘をどこへ置く 嶋田麻紀
春雨のかくまで暗くなるものか 高浜虚子
もつれつゝとけつゝ春の雨の糸 鈴木花蓑

葬列にかの恋仇春の雷 たけし

2022-02-06 | 今日の季語で一句


葬列にかの恋仇春の雷 たけし

高校時代のマドンナの訃報が届いた
5年前には同窓会の世話役をかいがいしく行っていた
親しく歓談したが、これが最後になった
葬儀には何人かの同窓生も参列していた
おりから遠く小さな春雷
彼女のあいさつにように感じた
彼女の当時の明るい姿がが偲ばれる
(たけし)


春(三春)・天文
【春雷】 しゅんらい
◇「春の雷」 ◇「初雷」(はつらい) ◇「初雷」(はつかみなり) ◇「虫出し」 ◇「虫出しの雷」
雷は夏に多いが、春に鳴る雷を言う。寒冷前線に伴う界雷の一種。夏の雷とちがい激しくない。

例句 作者

ゲルニカの牛の涙や春の雷 平野無石
春雷や暗き厨の桜鯛 水原秋櫻子
虫出しや世を足早やとなるばかり 岡本 眸
下町は雨になりけり春の雷 正岡子規
春の雷湯殿に帯を解きをれば 鈴木真砂女
虫出しの雷文豪の手紙かな 千田百里
虫出しやささくれだちし水の面 岸田稚魚
春雷のあとの奈落に寝がへりす 橋本多佳子
春の雷鯉は苔被て老いにけり 芝 不器男
あえかなる薔薇撰りをれば春の雷 石田波郷

中禅寺湖早春の風聴きに行く たけし

2022-02-05 | 今日の季語で一句


中禅寺湖早春の風聴きに行く たけし

10年ほど前の日光吟行
宿泊の中禅寺金谷ホテルからだらだらと坂を下ると
そこは直下に中禅寺湖
朝の空気を胸いっぱいに収めた
おりからの気持ちの良い風
今日の季語でその時を想起した
(たけし)

春(初春)・時候
【早春】 そうしゅん(サウ・・)
◇「春早し」
春の初めの頃。立春後、2月いっぱいが早春に当たる。まだ寒さは厳しく、冬の気配が漂っているが、何となく春めいた感じがある。

例句 作者

橋早春何を提げても未婚の手 長谷川双魚
早春の山笹にある日の粗らさ 細見綾子
あめんぼに早春の水とゞまらず 佐野青陽人
早春の野は一木と風と雲 豊田都峰
早春の風をさがして風見鶏 岡澤康司
早春のひびきとなりて貴船川 遠藤若狭男
早春の湾パスカルの青き眸よ 多田裕計
早春の庭をめぐりて門を出でず 高浜虚子
早春の入日林中の笹を染む 水原秋櫻子

立春大吉自前の護符を新たむる たけし

2022-02-04 | 今日の季語で一句


立春大吉自前の護符を新たむる たけし

毎年 立春のこの日 護符を作る
半紙でお札をつくり
そこに立春大吉にちなんだ言葉を墨書する

現役の頃は商売繁盛や金運、災難除けなどを作ったが
現在は報恩感謝と災難除けだけになっている

以前は朝湯に入り新しい下着に身を包んで
厳粛な気持ちで臨んだが今はそこまで拘らない

自前の護符を新ためる習慣はこれからも続けていくつもりだ



春(初春)・時候
【立春】 りっしゅん
◇「春立つ」 ◇「春来る」 ◇「立春大吉」(りっしゅんだいきち)
二十四節気の一。陰暦1月の節で陽暦の2月4日頃。その前日が節分。暦の上ではこの日より春となる。

例句 作者

立春のその後の寒さ言ひ合へる 石塚友二
立春をきのふに夜の雨降れり 児玉喜代
立春やポンプ井戸より水飛び出 大野朱香
森抜けてくる立春の鳥の声 中新井みつ子
立春大吉神田の町に手風琴 加古宗也
立春や月の兎は耳立てゝ 星野 椿
オリオンの真下春立つ雪の宿 前田普羅
立春の雲置く山や父癒えよ 鈴木五鈴
さざ波は立春の譜をひろげたり 渡辺水巴
川下へ光る川面や春立ちぬ 高浜年尾

身の内にしぶとく百鬼年の豆 たけし

2022-02-03 | 今日の季語で一句


身の内にしぶとく百鬼年の豆 たけし

身の内に鬼がいる
こうした句はよく見かけて新しみがない
鬼を百鬼にして良しとしたが
節分も鬼やらいもしっくりこないところ
年の豆の子季語を知って収まった
しぶとさが年の豆で通底したのではないか
(小林たけし)


冬(晩冬)・時候
【節分】 せつぶん
年の豆/鬼打豆/豆打/鬼の豆/年男/年女/福豆/年取豆
豆はやす/鬼は外/福は内 

節分とは本来、季節の移り変わる時、すなわち立春・立夏・立秋・立冬の前日を称するが、今では特に立春の前日を言う。この日の夕暮れ、柊の枝に鰯の頭を刺したものを戸口に立て、鬼打豆と称して炒った大豆をまく習慣がある。災いや魔を除いて、新しい春を迎えようとする行事であり、どこかに春の来る明るく浮かれた気分が混在するようである。

例句 作者

節分や博物館の日本刀 福島壺春
転読の僧の気合や節分会 斎藤朗笛
節分の豆少し添へ患者食 石田波郷
節分やつもるにはやき町の雪 久保田万太郎
すぐ晴れてきて節分の迷ひ雪 藤田あけ烏
節分の海の町には海の鬼 矢島渚男
節分や鬼もくすしも草の戸に 高浜虚子
竹林にたまゆらの日箭節分会 小原希世
節分の夜も更け鬼気も収れり 相生垣瓜人
節分や肩すぼめゆく行脚僧 幸田露伴


湯婆に安堵の蛇腹子守唄 たけし

2022-02-02 | 今日の季語で一句


 湯婆に安堵の蛇腹子守唄 たけし

湯婆は湯たんぽだと知らなかったが
当て字の意味合いは納得できる
湯婆で1句と思ったがもう死語に近い存在なので
こんなノスタルジックな句になった
幼児期の残像だ
(小林たけし)

【湯婆】 たんぽ
◇「湯婆」(ゆたんぽ)
中に湯を入れて、布製の袋で包み布団の中で身体を温める暖房器具。ブリキ製、陶製の半円筒形が主。

例句 作者

目ざむるや湯婆わづかに暖き 正岡子規
湯婆こぼす垣の暮雪となりにけり 飯田蛇笏
もう娶るなし湯たんぽのあばら骨 藤田あけ烏
湯婆や忘じてとほき医師の業 水原秋櫻子
みたくなき夢ばかりみる湯婆かな 久保田万太郎
湯たんぽをたしかめて足眠りけり 千葉 仁
爪先より夢に入りゆく湯婆かな 永方裕子
湯婆と書けば書いたで笑われる 宇多喜代子
投錨と思ふ湯婆でありにけり 松山足羽


寒鯉に鉸めたごとき緋色かな たけし

2022-02-01 | 今日の季語で一句


寒鯉に鉸めたごとき緋色かな たけし

初案は
寒鯉の鉸きりたっる緋色かな

どうも寒水の厳粛な静寂寒が表現できないでいたが
鉸める という鉄板を叩いて繋ぎ言葉を発見して用いてみたら
この句になった
本人は理由なく気に入っている
やはり俳句は語彙の豊富を持ち合わせないとだめのようだ
(小林たけし)


冬(晩冬)・動物
【寒鯉】 かんごい(・・ゴヒ)
◇「寒鯉釣」 ◇「凍鯉」(いてごい) ◇「冬の鯉」
コイは各地の湖沼・河川に棲息し、水温が下がると動きも鈍り、深みに集まって越冬する。寒の頃にとれたコイは寒鯉と呼ばれ、身が引き締まり、脂ものって最高とされる。「あらい」や「鯉こく」として賞味される。

例句 作者

寒鯉の居ると云ふなる水蒼し 前田普羅
寒鯉の一擲したる力かな 高浜虚子
寒鯉のふたつのひげを思ひ寝る 三橋敏雄
金泥の全身ねむる冬の鯉 正木ゆう子
水底に昼夜を分ち冬の鯉 桂 信子
寒の鯉金輪際をうごかざる 川端茅舎
寒鯉の買はるる空のうすみどり 柴田白葉女
寒鯉のひとつのいろにまはりけり 古舘曹人
寒鯉のうるむ目頭切り落とす 豊田信子
寒鯉の鬱々としてたむろせり 五十嵐播水