顔(2017.1.20日作)
わたしは見た 海を相手に日がな一日 海で暮らす一人の漁師
わたしは見た 大地を相手に日の暮れまで 田畑の仕事に勤(いそ)しむ一人の農夫
わたしは見た 奥深い山地で森林の樹々を相手に 終日 仕事に励む一人の林業者
長い年月 自然を相手に 自然と共に生きて来た人たち そんな人たちの持つ顔には
年輪が刻んだ皺と共に 自らの肉体で獲得して来た深い叡智が自ずと 滋味となって
溢れ出ている
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そんな人たちは決して声高に 自らが成し遂げて来た事の成果を 吹聴したりはしない
それが自分に取っての総てであり 生きる事の総てであるかのように 辛抱強く
自然と向き合い 自然と闘い 自然の恵みを喜び 淡々と日常を生きている
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そんな人たちは知っている 自然は決して 自らの手に収まるものではなく
自然を支配する事の不可能な事を
広大なこの宇宙の中での自己の存在が いかに卑小であり 自らを誇示する事が
如何に愚かで 思い上がった行為であるかを
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権力とも自己顕示欲とも無縁の人たち
自然と親しみ 自然を畏れ 慎み深く 常に謙虚な人たち
臭気ふんぷん 権力欲 自己顕示欲で膨れ上がった顔の
自分だけが唯一絶対 であるかのように振る舞い
恥じる事のない者たち
そんな者たちが持つ顔の滑稽さ 醜さなどは
微塵もその人たちの顔にはない
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愚かな者たち 自己主体主義者 権力欲 自己顕示欲とに膨れ上がった
傍若無人の 毒にまみれた者たち そんな者たちが持つ顔に比べて
堅実 地道に 自然と共に 自己の道を歩んで来た人たちの持つ顔の
なんと美しい事か 例え 陽に焼け 深く刻まれた皺の一つ一つに
潮の匂い 土の匂い 樹木の枝でえぐられた傷の跡が残っていようとも
その顔には 自ずと滲み出る 美しさがある 気品がある
人の心を引き付ける力がある
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