遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉 124 顔

2017-02-05 13:31:26 | 日記

          顔(2017.1.20日作)

 

 

   わたしは見た 海を相手に日がな一日 海で暮らす一人の漁師

   わたしは見た 大地を相手に日の暮れまで 田畑の仕事に勤(いそ)しむ一人の農夫

   わたしは見た 奥深い山地で森林の樹々を相手に 終日 仕事に励む一人の林業者

   長い年月 自然を相手に 自然と共に生きて来た人たち そんな人たちの持つ顔には

   年輪が刻んだ皺と共に 自らの肉体で獲得して来た深い叡智が自ずと 滋味となって

   溢れ出ている

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   そんな人たちは決して声高に 自らが成し遂げて来た事の成果を 吹聴したりはしない

   それが自分に取っての総てであり 生きる事の総てであるかのように 辛抱強く 

   自然と向き合い  自然と闘い 自然の恵みを喜び 淡々と日常を生きている

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   そんな人たちは知っている 自然は決して 自らの手に収まるものではなく 

   自然を支配する事の不可能な事を

   広大なこの宇宙の中での自己の存在が いかに卑小であり 自らを誇示する事が

   如何に愚かで 思い上がった行為であるかを

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   権力とも自己顕示欲とも無縁の人たち

   自然と親しみ 自然を畏れ 慎み深く 常に謙虚な人たち

   臭気ふんぷん 権力欲 自己顕示欲で膨れ上がった顔の

   自分だけが唯一絶対 であるかのように振る舞い

   恥じる事のない者たち

   そんな者たちが持つ顔の滑稽さ 醜さなどは

   微塵もその人たちの顔にはない

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   愚かな者たち 自己主体主義者 権力欲 自己顕示欲とに膨れ上がった

   傍若無人の 毒にまみれた者たち そんな者たちが持つ顔に比べて

   堅実 地道に 自然と共に 自己の道を歩んで来た人たちの持つ顔の

   なんと美しい事か 例え 陽に焼け 深く刻まれた皺の一つ一つに

   潮の匂い 土の匂い 樹木の枝でえぐられた傷の跡が残っていようとも

   その顔には 自ずと滲み出る 美しさがある 気品がある

   人の心を引き付ける力がある

   

   

   

   

   

   

   

 



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