ひねりの利いた脚本がお見事
この映画は、『アパートの鍵貸します』(60)に続いて、ジャック・レモンとシャーリー・マクレーン、そしてビリー・ワイルダー監督という名トリオがアッと驚く展開で楽しませてくれる艶笑コメディです。
ワイルダーとI.A.L.ダイアモンドによるひねりの利いた脚本が見事で、脚本家兼映画監督の三谷幸喜も「大好きな映画の一本」に挙げています。
舞台はパリ。気のいい娼婦のイルマは、実直な巡査バートにほだされて彼をヒモに採用します。ところが巡査を辞めたバートは、イルマが客と交渉を続けることに耐え切れず、借金をして変装し、富豪の英国紳士X卿に成りすまして、客として彼女の独占を図ります。
アメリカ映画には“黄金の心を持った娼婦”がよく登場しますが、この映画のシャーリーはまさにその典型。ちなみにこの映画の原題は「優しいイルマ」です。
バートがX卿(つまり自分自身)に嫉妬するところなどはまさに落語の世界ですが、そう思わせるシャーリーのかわいらしさが、この荒唐無稽な話に説得力を持たせているのです。『アパート~』と対で見てみることをお勧めします。