田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『あなただけ今晩は』(63)

2015-12-02 09:28:49 | All About おすすめ映画

ひねりの利いた脚本がお見事



 この映画は、『アパートの鍵貸します』(60)に続いて、ジャック・レモンとシャーリー・マクレーン、そしてビリー・ワイルダー監督という名トリオがアッと驚く展開で楽しませてくれる艶笑コメディです。

 ワイルダーとI.A.L.ダイアモンドによるひねりの利いた脚本が見事で、脚本家兼映画監督の三谷幸喜も「大好きな映画の一本」に挙げています。

 舞台はパリ。気のいい娼婦のイルマは、実直な巡査バートにほだされて彼をヒモに採用します。ところが巡査を辞めたバートは、イルマが客と交渉を続けることに耐え切れず、借金をして変装し、富豪の英国紳士X卿に成りすまして、客として彼女の独占を図ります。

 アメリカ映画には“黄金の心を持った娼婦”がよく登場しますが、この映画のシャーリーはまさにその典型。ちなみにこの映画の原題は「優しいイルマ」です。

 バートがX卿(つまり自分自身)に嫉妬するところなどはまさに落語の世界ですが、そう思わせるシャーリーのかわいらしさが、この荒唐無稽な話に説得力を持たせているのです。『アパート~』と対で見てみることをお勧めします。

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『さようなら』

2015-12-02 09:00:00 | 新作映画を見てみた

睡魔との闘いなり



 劇作家・平田オリザの戯曲を映画化。原発の爆発で放射能に汚染された近未来の日本を舞台に、アンドロイドのレオナと暮らす外国人の難民ターニヤの“最期の日々”を描く。

 人間とアンドロイドを共演させた一種のSFであり、実験映画でもある本作は、小松左京原作が『日本沈没』で描いた“日本人も難民になり得る”というテーマも扱っている。

 ただ、良く言えば静謐だが、悪く言えば思わせぶりで冗漫で“動き”も少ない。これならば演劇のままでも良いのではないか、わざわざ映画として描く意味はあったのかという気もする。睡魔との闘いなり。

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