『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は試写で見たのだが、ちゃんと大画面で見直してみようと思い、妻と共にTOHOシネマズ六本木ヒルズへ。
ここはドルビーアトモス方式で上映している。専門的なことはよく分からないが、要は音がいいということだ。
ロング・アゴ―。ドルビーステレオ・サラウンドで上映された『地獄の黙示録』(79)を見た時に、ヘリコプターの音が背後から聴こえてきて驚いた覚えがある。
今は“凄い音”にもすっかり慣れてしまったので、今回も特別な驚きはなかったが、目を閉じ、耳を澄ませてエンドクレジットのジョン・ウィリアムス作曲の音楽に酔いしれた。もっと音楽を聴きたかった気もする。
ところで、妻は体感型のMX4Dを体験してみたいと言い、前日もTOHOシネマズ ららぽーと船橋で鑑賞している。
ロング・ロング・アゴ―。地震を疑似体験する音響効果センサラウンド方式を採用した『大地震』(74)を見たが、今から思えば子供だましみたいなものだった。
未体験のMX4Dは、恐らくセンサラウンドの比ではないのだろうが、アクションシーンのたびに椅子が動くのでは落ち着かないのではあるまいかと想像する。激しく揺れる画面を見ると手振れ酔いを起こすぐらいだから自分にはきついのではないかと思う。
さて、今回の『~フォースの覚醒』は旧三部作へのオマージュたっぷりで、オールドファンにはたまらないものがあるが、裏を返せば旧三部作の出来のいいパロディに見えなくもない。
今度の3部作の主役は、身のこなしが良く、若さが魅力のデイジー・リドリー演じるレイだが、この映画の“裏主役”がハリソン・フォードのハン・ソロだったように、2作目と3作目はマーク・ハミルのルークとキャリー・フィッシャーのレイアが裏主役となり、それぞれがスター・ウォーズに決着を着けていくのでは…などと想像してしまう。
いずれにせよ、今回の我が家のスター・ウォーズ祭りはこれにて終了。
『南の島に雪が降る』(61)
俳優たちの至芸が見もの
この映画は、昭和19年から終戦までニューギニアの戦地で演劇活動を続けた俳優の加東大介が、自らの戦争体験を綴った小説を映画化したもので本人が主演しています。監督は久松静児です。
加東といえば、『七人の侍』(54)や『用心棒』(61)といった黒澤明監督作品から、喜劇「社長シリーズ」まで、シリアスとコメディの両方で幅広く活躍した名優です。その人がこんな過酷な体験をしていたのかと思うと胸が痛みます。
すでに日本の敗色が濃厚となったこの時期、飢餓とマラリヤの恐怖の中で日々を送る兵士たちの唯一の慰めは、演芸分隊が催す芝居の数々だったのです。
タイトルは、長谷川伸原作の舞台「瞼の母」のクライマックスで「南の島に雪を降らせる」という苦心の跡から取られていますが、紙の雪に感動して涙を流しながら死んでいく兵士を見た加東が「紙じゃねえか。こんなもんただの紙じゃねえか」と悔しそうに涙するシーンが切ないです。
この映画は、戦争の意味や、演劇の素晴らしさ、あるいは人間にとっての生きがいとは、などといろいろと考えさせてくれますが、それとは別に、多彩な俳優たちが見せる芝居が見ものです。
加東本人はもちろん、有島一郎、三木のり平、渥美清、伴淳三郎、森繁久彌、小林桂樹、西村晃、織田政雄、フランキー堺…。
彼らの至芸を見るだけでも一見の価値があります。
『三大怪獣 地球最大の決戦』(64)(1971.12.12.浅草東宝)
荒唐無稽な関沢新一の脚本
この映画は、ゴジラ、モスラ、ラドンという既成の怪獣に加えて、三つ首の宇宙怪獣キングギドラが初登場した作品です。
監督の本多猪四郎の演出、特技監督の円谷英二を中心とした特撮が素晴らしいのはもちろんですが、忘れてはならないのが脚本の関沢新一の存在です。
ゴジラの身長が50メートルという設定に対しキングギドラは何と100メートル。これではゴジラ一匹ではとてもかないません。そこでキングギドラを倒すためにモスラの説得でゴジラとラドンが共闘するという力業を発揮します。
また、ドラマ部分でも『ローマの休日』(54)を下敷きに、某国の王女に金星人が乗り移るというすさまじい技を繰り出します。王女を『007は二度死ぬ』(67)でボンドガールになった若林映子が演じています。
荒唐無稽という言葉は、まさに関沢脚本にぴったりの言葉ですが、これが理屈抜きに楽しいんです。平成のゴジラやガメラはどうも理屈っぽくていけません。
60年代の東宝は、加山雄三主演の「若大将」シリーズのように、都会的でしゃれた映画を得意にしていました。この映画にもそうした風情が漂っています。
ただの怪獣映画とバカにすることなく、思いっ切り60年代の雰囲気に浸って楽しんでください。