法廷ミステリー西部劇
この映画は、ジョン・フォード監督十八番の騎兵隊ものの西部劇ですが、軍法会議を中心に回想形式で事件の真相に迫るという一種の法廷ミステリーになっています。
西部劇でミステリー? と思われる方もいるかもしれませんが、例えば、日本の時代劇に「大岡越前」や「遠山の金さん」といった“奉行もの”があることを考えれば、西部劇に“法廷もの”があっても決しておかしくはないわけです。そもそも西部劇は、ただ銃を撃ち合うだけのものではありませんし…。
1880年、合衆国第9騎兵隊のカントレル中尉(ジェフリー・ハンター)は、白人少女殺害の罪で軍法会議にかけられた部下の黒人兵ラトレッジ軍曹(ウッディ・ストロード)の無実を信じ、彼の弁護を志願します。
この時代に白人が黒人の弁護をするという設定自体極めて珍しいものです。そこがこの映画の最もユニークなところ。原題も「ラトレッジ軍曹」で黒人の名前がタイトルになるのも希なことでした。その点では、公民権運動など60年代に起きた人種的な変革を先取りした映画ともいえます。
ハンターとストロードが演じた真摯なキャラクターが心に残ります。製作当時は「ジョン・フォードがアルフレッド・ヒッチコックを意識した」 などといわれたそうですが、昔の監督は職人気質なので、その気になればどんな題材の映画でも撮れたということでしょう。
法廷劇とはいえ、フォード映画のトレードマークであるモニュメントバレーの風景もふんだんに登場しますから、そちらもご堪能ください。
パンフレット(60・日本映画出版社)の主な内容
解説/騎兵隊/巨匠ジョン・フォードの横顔/ジェフリー・ハンター、コンスタンス・タワーズ、ウッディ・ストロード