若き日の4人の躍動感とスピード感に酔う
ザ・ビートルズ(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター)の映画デビュー作です。昔は歌がヒットしたら映画にも出るというのが定番コースでした。そうした時代を象徴する映画ではありますが、当時としては一風変わった映画でもありました。
特にストーリーはなく、どこへ行ってもファンに追いかけられる彼らの目まぐるしい一日半を、当時新人だったリチャード・レスター監督が白黒映像でドキュメンタリー風に撮り、スピーディーかつコミカルに描いているからです。
タイトル曲の「ア・ハード・デイズ・ナイト」は、リンゴがふともらした「きつい一日だったぜ」という言葉から生まれました。リンゴは後に俳優としても活躍しましたが、この映画に出演したことで俳優をやってみたいと思ったそうです。「こいつ=ジス・ボーイ」がリンゴのテーマとしてインストルメンタルで流れるのも聴きどころです。
オープニングとエンディングで、走る彼らのバックに流れる「ハード・デイズ・ナイト」、列車の中で歌う「恋する二人」、ジョンがリンゴを慰めるために歌い始める「恋におちたら」、ポールの名バラード「アンド・アイ・ラブ・ハー」のスタジオ録音風景など、曲の見せ方は後のミュージックビデオの元祖とされています。曲の良さはもとより、とにかく走りまくる若き日の4人の躍動感とスピード感にも酔ってください。