田中雄二の「映画の王様」

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『五月の七日間』

2015-12-04 09:30:46 | All About おすすめ映画

『五月の七日間』(63)

60年代のハリウッド映画人の気概を示した映画

 1960年代は米ソ冷戦の真っただ中ということもあり、『博士の異常な愛情…』(64)『未知への飛行』(64)『駆逐艦ベッドフォード作戦』(65)といった核戦争の恐怖を描いた傑作が何本も生まれました。この映画もその一本です。

 舞台は近未来。米大統領(フレドリック・マーチ)が進めるソ連との軍縮条約に反対するタカ派の将軍(バート・ランカスター)が軍事クーデターを計画。それを知った大佐(カーク・ダグラス)は何とか阻止しようとするのですが…というポリティカル・フィクション(政治ドラマ)の傑作です。

 フィクションとはいえ、この映画の設定は62年に起きたキューバ危機の恐怖をよみがえらせ、公開年に奇しくもケネディ大統領が暗殺されたことで先見の明があったことも示しました。

 それもそのはず。この映画の脚本は、テレビシリーズ「ミステリーゾーン=トワイライトゾーン」のクリエーターであり、後に『猿の惑星』(68)の脚本も手掛けたロッド・サーリングが書いたもの。近未来ドラマの形を借りて、現在にも通じる問題提起をするのは彼の得意技なのです。

 また、この映画の製作者には、監督のジョン・フランケンハイマーや出演者のカーク・ダグラスが名を連ねています。ダグラスとランカスターは、それぞれ早くから独立プロを起こし、フランケンハイマーやスタンリー・キューブリックといった気鋭の新進監督を起用して映画界に新風を吹き込みました。

 というわけで、この映画のストーリーや製作状況は、60年代当時のハリウッド映画人たちの気概を示すものでもあるのです。

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