シチュエーション・コメディのお手本
この映画の原作は劇作家のベン・ヘクトとチャールズ・マッカーサーによる舞台劇。ルイス・マイルストン監督の『犯罪都市』(31)、ハワード・ホークス監督の『ヒズ・ガール・フライデー』(40)に続く3度目の映画化です。
後に『スイッチング・チャンネル』(88)としても映画化されたので合計4回。こうして繰り返し映画化されたのは、脚本が良くできているからに他なりません。シチュエーション・コメディのお手本と言っても過言ではないのです。
巻き込まれ型のジャック・レモンと胡散くさいウォルター・マッソーという名コンビが、語りの名人ビリー・ワイルダーの演出に乗って大いに笑わせてくれます。
1920年代のシカゴ、有能な新聞記者のヒルディ(レモン)は、結婚を機に記者を辞め地道な暮らしをすることを決意します。それを知った上司のバーンズ(マッソー)は、ヒルディを辞めさせまいとしてあれこれと策を練ります。
そんな中、死刑囚(オースティン・ペンドルトン)が脱獄し、記者室に逃げ込んできます。これは特ダネと、彼をかくまいロールデスクの中に隠すヒルディ。再び記者魂に火が付いたヒルディが嬉々としてタイプライターに向かう姿や、ロールデスクを開けようとする他紙の記者とのやり取りは爆笑もの。
ビンセント・ガーディニア(保安官)、チャールズ・ダーニング、ハーブ・エデルマン、ルー・フリッゼル(記者)、ポール・ベネディクト(役人)、キャロル・バーネット(街の女)といった個性豊かな脇役たちが記者室に出入りする記者や関係者を演じているのも見どころです。
ラストはあっと驚くどんでん返しに続いて“その後の彼ら”の写真と一口コメントが映ります。笑いの後に哀愁が漂う名シーンですが、実はこれは新人ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』(73)からのいただき。この時、ワイルダーはすでに巨匠でしたが、意外とちゃっかりしていて、ほほ笑ましくなります。