『砲艦サンパブロ』(66)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/80/5290911d882906f366f145ea3b62857a.jpg)
アクションを封印したマックィーン
この映画は「もしハドソン川に中国の軍艦が浮かんでいたら…」というスーパーが出てから始まります。映画の舞台となるのは1920年代の植民地支配下の中国ですが、実はベトナム戦争への厭戦感を象徴する反戦映画なのだということを冒頭で示しているのです。
当時、列強国は揚子江沿岸の権益と人命財産を守るという名目で艦艇を出動させていました。そんな中、アメリカの砲艦サンパブロ号に1等機関兵のホルマン(スティーブ・マックィーン)が赴任します。ロバート・ワイズ監督は、ホルマンの目を通して、列強国が中国で行った植民地政策の汚点を告発していきます。
この映画でマックィーンは、得意のアクションを封印し、他人との調和がうまく取れず、機械(船のエンジン)にしか愛情が注げない孤高の男を見事に演じて、生涯唯一のアカデミー賞主演賞の候補になりました。その姿はどこか現実の彼の生きざまとオーバーラップするものがあります。
ちなみに彼の助手となる中国人に扮したマコこと岩松信もアカデミー賞の助演賞候補になっています。彼はこの後、名脇役としてハリウッドで活躍しました。
他にもホルマンと恋に落ちる宣教師役のキャンディス・バーゲン、リチャード・クレンナ、リチャード・アッテンボロー、サイモン・オークランドらが出演しています。彼らの名演を見ながら、激動の近代史に思いをはせてみてください。