田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『女相続人』

2019-01-11 11:15:37 | 1950年代小型パンフレット
『女相続人』(49)(1992.3.24.)

 19世紀半ば、医者(ラルフ・リチャードソン)の一人娘キャサリン(オリビア・デ・ハビランド)は、従姉妹の婚約パーティーで知り合った青年モリス(モンゴメリー・クリフト)と恋に落ちる。彼が財産目当てだと気付いた父は結婚に反対するが…。容姿にコンプレックスを持ち、結婚運がない女性が、男に裏切られ、残酷な女性へと変化していく様子を、ウィリアム・ワイラー監督が冷徹なタッチで描く。原作はヘンリー・ジェームズ。



 見終わった後、何と残酷で救いのない映画だと思いながらも、その一方で、いかにもワイラーらしい、映画の文法を踏まえた流れの良さに酔わされ、満足感も得る、という不思議な感慨にとらわれた。

 実際、時代の変化があるとはいえ、この映画には、今のアメリカ映画が失ってしまった“文学的な重厚さ”が満ちあふれていた。また、デ・ハビランド、リチャードソン、クリフトによる、それぞれの個性をぶつけ合った演技合戦も見事だった。

 恐らくワイラーは、舞台劇を映画にすることを好んだのだろうし、その奥にアメリカのヨーロッパコンプレックスを描き込んでいる。それは、例えば、この映画のリチャードソンや、『嵐ヶ丘』(39)『黄昏』(51)のローレンス・オリビエといった英国人俳優の扱い方にもうかがえるし、ワイラーにとっては“異色作”である『ローマの休日』(53)にしても、ヨーロッパへの憧れ以外の何ものでもないようにも思える。

 ワイラーはドイツ系の移民であるし、ビリー・ワイルダーはオーストリアからの移民である。彼らが作るシニカルで厳しい映画と、アイルランド系のジョン・フォードやイタリア系のフランク・キャプラが作る映画の色合いが違うのは当然だが、ハリウッドというフィルターを通して、それぞれの故郷への思いを描く、という点では共通する。そうした、さまざまな視点や幅広さが、ハリウッド映画のバラエティさにつながったのだろう。

オリビア・デ・ハビランド




モンゴメリー・クリフト


ラルフ・リチャードソン

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『裸の拍車』

2019-01-11 06:21:08 | 1950年代小型パンフレット
『裸の拍車』(53)(1992.1.18.)



 ケンプ(ジェームズ・スチュワート)は、金鉱探しの老人(ミラード・ミッチェル)と元騎兵隊員(ラルフ・ミーカー)と共に、賞金目当てに、お訪ね者のベン(ロバート・ライアン)を追っていた。やがて彼らは、女(ジャネット・リー)と一緒にいたベンを捕らえるが…。

 この映画の主要登場人物はわずか5人。ところが、その5人が皆腹に一物持っている。彼らの道中記だから当然一筋縄ではいかない、というユニークなロードムービーになっている。

 アンソニー・マンは『ウィンチェスター銃'73』(50)と『怒りの河』(52)で、それまでのスチュワート=善人というイメージを覆したが、この映画もその系譜に連なるだろう。また、渋いイメージが強いライアンが、この映画では、珍しくこずるいキャラクターを演じていたのも面白く見た。

ジェームズ・スチュワートのプロフィール↓


ロバート・ライアンのプロフィール↓


ジャネット・リーのプロフィール↓


アンソニー・マンのプロフィール↓

コメント (1)
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