田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『メリー・ポピンズ リターンズ』

2019-01-13 16:16:58 | 新作映画を見てみた
 『メリー・ポピンズ』(64)の続編で、前作から25年後の設定。監督は『シカゴ』(02)のロブ・マーシャル。



 大人になったジェーンとマイケルのバンクス姉弟(エミリー・モーティマー、ベン・ウィショー)のもとに、魔女のメリー・ポピンズ(エミリー・ブラント)が再び現れ、前作に引き続き、親子3代にわたるバンクス家のピンチを救う。

 妻を失い、3人の子供たちの世話に悩み、おまけに借金の抵当として家まで奪われる羽目になったマイケル。そんな中、彼は純粋な子供心(遊び心)を失うが、ポピンズや子供たちのおかげで立ち直るという話は、『プーと大人になった僕』(18)のクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)にも通じるものがある。こうした流れは今の流行なのかな。

 さて、凧=カイト、スノードーム、隣の海軍大将(デビッド・ワーナー)、群舞シーン、実写とアニメーションとの融合、そしてディック・バン・ダイクの登場など、前作へのオマージュが随所に見られるし、前作のジュリー・アンドリュースの“母性”とは違い、ちょっと上から目線でクールなポピンズ像を構築したブラントも頑張ってはいる。

 しかし、前作に比して人物描写に哀愁が感じられないのが最大の弱点。前作の父親ジョージ(デビッド・トムリンソン)同様に、今回は息子のマイケルがいろいろと悩むのだが、心理の明暗がきちんと描かれていないから、人物像に深みが感じられない。また、前作の大道芸人のバート(バン・ダイク)やポピンズにしても、どこかに悲しみや寂しさをたたえていたからこそ、楽しい場面とのメリハリが際立ったのだ。

 何より肝心の歌(音楽)が記憶に残らない。前作の「お砂糖ひとさじで」「2ペンスを鳩に」「楽しい休日」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」「チム・チム・チェリー」「凧をあげよう」といった、一度聴いたら忘れられないような名曲群と比べると、今回の歌が見劣りするのは否めない。過去の名曲を使わずにオリジナル曲で通したのは今回のスタッフの意地だったのかもしれないが、そんなに無理をする必要はなかったのではないかと思う。

 ところで、『メリー・ポピンズ』とこの映画の間に、『メリー・ポピンズ』製作の舞台裏を描いた『ウォルト・ディズニーの約束』(14)があったことを思い出した。

【ほぼ週刊映画コラム】ディズニー創立90周年記念『アナと雪の女王』と『ウォルト・ディズニーの約束』
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/532791/2
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『栄光の旅路』

2019-01-13 07:33:41 | 1950年代小型パンフレット

『栄光の旅路』(57)(1989.9.14.)



 マイナーリーグの選手だった父(カール・マルデン)の夢をかなえ、メジャーリーグ、ボストン・レッドソックスの一員になったジム・ピアソル(アンソニー・パーキンス)。だが、父の過度の期待が重圧となり、やがて極度の神経衰弱に陥る。実在のメジャーリーグ選手の手記を映画化。製作アラン・J・バクラ、ロバート・マリガン監督コンビのデビュー作で、原題は「三振の恐怖」。

 野球映画は今年の『メジャーリーグ』(89)に至るまで、概ね明るく楽しいものが多い。その意味でも、この映画は異彩を放つ。これではまるでアメリカ版の『巨人の星』であり、マザコンとファザコンの違いこそあれ、野球版の『サイコ』ではないかとも思える。多分、この映画のパーキンスのエキセントリックなイメージが、後の『サイコ』(60)につながったのだろう。

 ところで、この映画を見ると、親が自分の夢を子に託すというのは、ひどく残酷で、重いもののように見える。だが、この映画の救いは、ジムを励ます妻(ノ―マ・ムーア)の存在であり、ラスト近くの父と子の和解の末のキャッチボールの美しさにある。ここでは父親役のマルデンが名演を見せる。

 さて、この映画の主人公ジム・ピアソルは、その後、父親から自立し、超一流とまではいかないが、メジャーリーグで17年間プレーしたのだが、まだ彼が現役でプレーしている最中に、自身のマイナス面を描いたこの映画が公開されていたことに驚いた。

アンソニー・パーキンスのプロフィール↓


カール・マルデンのプロフィール↓


アラン・J・バクラ、ロバート・マリガンのプロフィール↓

パンフレット(57・新世界芸能社)の主な内容
解説/「栄光の旅路」に寄せられたタイム紙の批評/アンソニー・パーキンスの経歴、カール・マルデン/アンソニイ・パーキンスの魅力(小森和子)/ハリウッドのシンデレラ ノーマア・ムーアの横顔/ハリウッドで最も若い製作監督チーム アラン・パクラ ロバート・マリガン(E・K生)/物語/パーキンスの「栄光の旅路」を見て(淀川長治)/「栄光の旅路」が製作されるまで

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