大人になったジェーンとマイケルのバンクス姉弟(エミリー・モーティマー、ベン・ウィショー)のもとに、魔女のメリー・ポピンズ(エミリー・ブラント)が再び現れ、前作に引き続き、親子3代にわたるバンクス家のピンチを救う。
妻を失い、3人の子供たちの世話に悩み、おまけに借金の抵当として家まで奪われる羽目になったマイケル。そんな中、彼は純粋な子供心(遊び心)を失うが、ポピンズや子供たちのおかげで立ち直るという話は、『プーと大人になった僕』(18)のクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)にも通じるものがある。こうした流れは今の流行なのかな。
さて、凧=カイト、スノードーム、隣の海軍大将(デビッド・ワーナー)、群舞シーン、実写とアニメーションとの融合、そしてディック・バン・ダイクの登場など、前作へのオマージュが随所に見られるし、前作のジュリー・アンドリュースの“母性”とは違い、ちょっと上から目線でクールなポピンズ像を構築したブラントも頑張ってはいる。
しかし、前作に比して人物描写に哀愁が感じられないのが最大の弱点。前作の父親ジョージ(デビッド・トムリンソン)同様に、今回は息子のマイケルがいろいろと悩むのだが、心理の明暗がきちんと描かれていないから、人物像に深みが感じられない。また、前作の大道芸人のバート(バン・ダイク)やポピンズにしても、どこかに悲しみや寂しさをたたえていたからこそ、楽しい場面とのメリハリが際立ったのだ。
何より肝心の歌(音楽)が記憶に残らない。前作の「お砂糖ひとさじで」「2ペンスを鳩に」「楽しい休日」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」「チム・チム・チェリー」「凧をあげよう」といった、一度聴いたら忘れられないような名曲群と比べると、今回の歌が見劣りするのは否めない。過去の名曲を使わずにオリジナル曲で通したのは今回のスタッフの意地だったのかもしれないが、そんなに無理をする必要はなかったのではないかと思う。
ところで、『メリー・ポピンズ』とこの映画の間に、『メリー・ポピンズ』製作の舞台裏を描いた『ウォルト・ディズニーの約束』(14)があったことを思い出した。
【ほぼ週刊映画コラム】ディズニー創立90周年記念『アナと雪の女王』と『ウォルト・ディズニーの約束』
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/532791/2