田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『私は殺される』

2019-01-15 10:54:57 | 1950年代小型パンフレット

『私は殺される』(49)(1986.7.6)



 心臓病でベッドから離れられないレオナ(バーバラ・スタンウィック)。夫のヘンリー(バート・ランカスター)が出勤すると、家には彼女一人となり、外部との接触は一台の電話だけになる。ある日、レオナは交換手のミスによる電話の混線で、図らずも女性殺害の打ち合わせを耳にするが、やがてそれは自分を狙ったものだと知る。

 レオナが電話で聞く話がカットバックされていく形でストーリーが進行していく。原題は「Sorry,Wrong Number=悪いな、番号違いだ」で、この一言がラストで大きな意味を持つ。製作ハル・B・ウォレス、監督はアナトール・リトバク。

 【今の一言】先日、『THE GUILTY ギルティ』を見た際に、基はラジオドラマ、外に出られない主人公、電話を使ったサスペンス劇という点で、この映画のことを思い出した。また、実話を基に、自殺防止協会への電話を題材にしたドニー・ポラック監督の『いのちの紐』(65)という映画もあった。
 
バーバラ・スタンウィックのプロフィール↓


バート・ランカスターのプロフィール↓

パンフレット(50・アメリカ映画宣伝社(American Picture News))の主な内容
解説/物語/アメリカの批評抜粋/この映画の面白さ

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『メリー・ポピンズ』

2019-01-15 06:14:15 | 映画いろいろ
『メリー・ポピンズ』(64)(1981.5.6.新宿ロマン)



 子供のころに見逃し、高校の頃にも見逃して、今頃やっとお目にかかった。それ故、もはや自分は、この映画の子供たちの純粋さからは遠く離れ、父親のジョージ・バンクス(デビッド・トムリンソン)の頑固さや寂しさも何となく分かってしまうという、甚だ中途半端な立場の観客だった。

 『サウンド・オブ・ミュージック』(65)と並ぶ、ジュリー・アンドリュースの素晴らしくも美しい歌声と存在感、ディック・バン・ダイクの見事な大道芸(特にファーストシーンはすごい)、トムリンソンほかの達者な脇役たち、2人の子役のかわいらしさ、「お砂糖ひとさじで」「2ペンスを鳩に」「楽しい休日」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」「チム・チム・チェリー」「凧をあげよう」などシャーマン兄弟の名曲の数々、圧巻のダンスシーン、アニメと実写の融合…。これはまさしくディズニー映画の最高作であろう。

 監督のロバート・スティーブンソンは、この映画のほかにも『うっかり博士の大発明/フラバァ』(61)『シャム猫FBI/ニャンタッチャブル』(65)『黒ひげ大旋風』(68)『ラブ・バック』(69)『ベッドかざりとほうき』(71)など、ディズニーの実写映画の傑作を生んだ人。もっと評価されてもいいと思う。

 ところで、この映画は夢物語である。そんなことは分かっているが、現実の味気ない生活の中で生きている今の自分が、一時でもそこから離れて、温かいものに触れたいという欲求を見事にかなえてくれた。そして忘れていた“何か”を思い出させてもくれた。それはスピルバーグが『未知との遭遇』(77)で伝えた“何か”とも似ている気がする。その漠然とした何かとは、大人になるにつれて見失ってしまう希望、純粋さ、連帯感、温かい心といったものだ。それらは、最近読んだサン=テグジュペリの『星の王子さま』のテーマにも通じるものだ。

 【今の一言】約40年前に書いた、何とも青臭い一文だが、当時の心境はこんな感じだったのだから仕方ない。それよりも、いつの間にか、自分がこの映画のジョージ・バンクスの年齢を越えてしまったことに気づいて愕然とした。
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